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プレイボーイの罪

プレイボーイの罪


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・スペンサー(Catherine Spencer)
 三十数年前にイギリスからカナダのバンクーバーに移り住む。英語の教師からロマンス作家に転身。カナダ人の男性と結婚し子供にも恵まれ、現在は孫もいる。あいた時間があれば、ピアノを弾いたり、アンティークショップをのぞいたり、庭の手入れをしたりしている。

解説

 いとしい姉夫婦が海難事故で亡くなった――その訃報をキャリーに電話で知らせてきたのは、義兄の弟で、かつての、そして唯一の恋人パオロだった。姉夫婦を失った衝撃で呆然としながらも、遠い夏の記憶がよみがえる。九年前、姉の結婚式でパオロと出会い、その晩純潔を捧げた。だが、女性を本気で愛したことのないプレイボーイの彼は、感極まって愛を告白する彼女をせせら笑い、去っていったのだ。まさかパオロとの再会がこんな形で訪れるなんて……。キャリーは取るものもとりあえず、ローマに向かった。もう一度、彼に利用されるはめになるとも知らずに。

抄録

 キャリーは九年前、パオロに愛の手ほどきを受けてから、男性に対する情熱がすっかり薄れてしまったように感じていた。彼より思いやりがあって称賛に値する男性たちもいたのに、いつも自分を抑え、どうしても心をゆだねられなかったのだ。パオロの子供たちをおなかに宿した晩以来、慎みも抑制も投げ捨てたことは一度もなかった。
 けれどもパオロに唇を奪われた瞬間、頭から自己防衛という文字は消えてしまった。たった一度のキスで、彼女の世界は覆され、彼の腕に再び抱かれる喜びを長引かせる以外、どうでもよくなってしまったのだ。長い不毛な眠りから体じゅうの細胞が目覚め、甘い情熱が血管に浸透していく。彼に呼び覚まされた荒れ狂う飢餓感が満たされるなら、ためらうことなく再び、魂をそっくり売り渡すだろう。
 キャリーはやわらかな唇を開いた。どうすれば彼のエネルギーを飲み干せるだろう? 舌が友情の垣根を越え、恋人たちだけの禁断の領域に入ってきた。舌で彼の舌を捕らえて、いっそう深く引き入れる。
 パオロの頬を包むと、感情の赴くまま豊かな黒髪を荒々しくつかんだ。体を揺らし、胸の頂でかたい胸板を軽くこするようにして、双方を刺激する。
 パオロの手が切迫したようにキャリーの喉から脇腹《わきばら》に滑りおり、わが物顔にヒップをつかんだ。永遠に思えるような時間の流れの中で初めて、彼女は再び脚の間に焼けるような熱を感じていた。
 しかし彼は若いときにはなかった自制心を再び発揮して、二人を崖《がけ》っぷちから救い出した。「許してくれ、キャロライン」しゃがれた声で謝ると、乱暴とも言える勢いで彼女を助手席へ押しやった。「こんなことをすべきじゃなかった」
 がっかりしたキャリーは呆然《ぼうぜん》と片手で口をぬぐい、やっとの思いでわざと怒った口調で答えた。「どうしてこんなことを?」
「自分を抑えられなかったんだ……」
 パオロはためらっている。知人の中でいちばんの自信家だと知らなければ、先を口にするのが不安なのかと思っただろう。
 しばらくして彼はようやく言葉を継いだ。「自分がきみに惹《ひ》かれているのは承知している。きみの抑えた悲しみが、僕の意思とは裏腹に心に触れるんだ。苦しみにのみこまれそうになって必死に耐えているきみを見て、慰めてあげることができたらと思った。だが僕はとうの昔にその資格を失っている。これだけ悔やみきれないことをした以上、きみに僕を信じてくれとは言えない」
 欲求不満で重くのしかかるような沈黙が漂った。やがて彼が激しい口調で話しだした。
「くそ《ディーオ》、僕に力があるなら、悪印象を残した暗い過去を消し去って、きみと初対面として付き合えるのに!」
「二人とも若くておろかだったのよ、パオロ」ふいに襲ってきた罪悪感に、キャリーは動揺した。被害者は私でしょう。すべてをあきらめたのは私じゃない。長い間そう言い聞かせてきたのに、この数日自分の内面を見つめるとともに、パオロをじっくり観察するうちに、突如、確信が揺らいでいた。
「でも、僕のほうが非は大きい」つかの間、片手を彼女の髪から顔へとやさしく滑らせる。「自分がどんなふうにきみを利用したか思い出すと胸が悪くなるよ。もし僕に娘がいて、同じ仕打ちをされたら、相手の男を殺してしまうだろう」
 あなたには娘がいるのよ、パオロ。息子も! 彼に打ち明けるのよ! 結果がどうなろうといいじゃない。真実こそ人の心の枷《かせ》をはずすと信じるのよ。
 むらむらとこみあげてきた告白したいという衝動は、先刻の罪悪感同様、驚くほど強かった。キャリーは最大の愚行に屈しまいと、とっさに舌をかんだ。一瞬の判断の狂いですべてを失いかねない。口ではどう言おうと、ひた隠しにしてきた秘密を知れば、パオロの後悔が怒りに転じるのは目に見えている。
「答えてくれないんだね」声に疲れ果てたような後悔がにじんでいる。
「何を言わせたいの? あなたを許すとでも?」
「違う。僕にはそんなことを頼む資格はない」
 このままではパオロの率直さに負けてしまう! キャリーは自分の偽善的な行為が恥ずかしくなり彼の目を見ていられず、月明かりできらめく海へ再度視線を転じた。「それは違うわ。先週、お互いに学んだはずよ。人生はあまりにもはかなくて、恨みを抱きつづけるのはもったいないと。だからもう許し合いましょう、パオロ。それぞれが犯した過ちを」
「きみの過ちはなんだい?」彼の声音にはわずかなユーモアが含まれていた。「美しすぎて、僕の欲望をそそってしまうことかな?」
 自嘲《じちょう》のこもった言葉に、キャリーは謙虚な気持ちになった。「本来なら親しくなろうとすべきだったときに、姪《めい》と甥《おい》から一線を引いていたことよ。あなたに非難されたとおりだったわ」
「でも、今は二人のためにここにいるじゃないか」
 それでも内心は、手遅れではないかとびくびくしていた。双子は自分に関心を持ってはいない。
 彼女は目をしばたたいて、今にもこぼれそうな涙を払った。「私は二人にとって無意味な存在だわ。あなただってそんなようなことを言ったじゃない」
「あの子たちはきみを愛するのを恐れているんだ」
 キャリーは新たな苦痛の波にのみこまれた。「恐れる? どうして?」
「幼いながらも、生活の基盤が足元から覆されるのがどんなものか学んでしまったからだ。二人の目に、この状況は愛する両親に見捨てられたように映っている。親切でやさしいおばさんも同じかもしれない。好き好んでまたつらい目にあいたくないんだよ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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