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命のブーケ【ハーレクイン・セレクト版】

命のブーケ【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・スペンサー(Catherine Spencer)
 三十数年前にイギリスからカナダのバンクーバーに移り住む。英語の教師からロマンス作家に転身。カナダ人の男性と結婚し子供にも恵まれ、現在は孫もいる。あいた時間があれば、ピアノを弾いたり、アンティークショップをのぞいたり、庭の手入れをしたりしている。

解説

ソフィーが実業家ドミニク・ウィンターと出会ったのは、ウェクスラー家の屋敷で造園の仕事を始めた日だった。ドミニクはソフィーに目を留めると、よそよそしく頷いた。そのとき、なぜかソフィーの胸はどきんと鳴った。彼はウェクスラー家のひとり娘バーバラの婚約者なのに。そのバーバラに同行して海へ行ったある日、事件は起きた。バーバラがヨットで沖合に出たまま行方不明になったのだ。駆けつけたドミニクに君の責任だといわんばかりに責められ、慰めたい一心のソフィーは、激情の赴くまま彼に抱かれてしまった。結果、ドミニクの子を身ごもってしまうとも知らずに。

■HQロマンスで長きにわたって活躍したキャサリン・スペンサーの作品をリバイバル刊行します。相手の衝動を受け止めただけとはいえ、いわば雇い主である令嬢の婚約者の子を身ごもってしまうとは……。スキャンダルから始まる愛を描いた名作です。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ドアは必ずロックし、貴重品はフロントの金庫に預けるよう、至るところに張られた注意書きで、ホテルは客に警告している。ソフィーはカメラ以外何も貴重品は持っていないし、ドアも間違いなくロックしていた。しかし誰かが部屋にしのびこんだようだ。バルコニーに面した鎧戸の羽根板のすきまから、部屋を動きまわっている人影が見える。
 それが賢明なことかどうかよく考えもせずにソフィーは寝椅子から立ちあがり、半開きのドアにすばやく近寄った。だが、ショッキングな光景を目にして、浴びせようとしていた怒りはしぼみ、声も出なかった。
 そこにいたのは上半身裸のドミニクだった。すべすべした筋肉質の胴体がカーキ色の麻のショートパンツにおさまっている。それだけではない。目には見えないけれど、彼の周囲には第二の皮膚のように物悲しさが漂っていた。
 彼は、バーバラの持ち物がそのまま残っている低い化粧だんすの前でうつむいていた。広い背中には孤独がにじんでいる。てのひらには、今となっては輝きがあせたダイヤの指輪があった。彼がバーバラに贈ったものだ。
 同情心にソフィーは胸が締めつけられ、前夜から引きずっていた怒りや苦痛をおさめておく余地がなくなった。「ドミニク」小声で言い、顔を両手で覆った。それが彼の心の痛みをぬぐい去れるおまじないででもあるかのように。
 ドミニクはまばたきを繰り返している。なかなか目の焦点が合わないようだ。「きみは日中出かけていると聞いたんだ」いつもは深みのあるバリトンの声がかすれている。「ちょうど……こいつを片づけるのに好都合だと思って」
 指輪を手に握りしめ、もう一方の手で、引き出しに乱雑に入れられていたシルクの下着類を示した。バーバラが残していったままだ。彼女のスーツケースが蓋を開けた状態でソフィーのベッドの上に置かれ、共有していたクロゼットを占めていたものですでに半分埋まっている。
 バルコニーのドアのそばに立ったまま、ソフィーはわかっているとばかりにうなずいた。「わたしが片づけてもよかったんだけど、それはわたしの役目じゃないような気がして」
「きみの責任ではないさ」ドミニクは引き出しに残っているものの上に指輪を投げた。そして全部をひっくるめて両手ですくいあげ、スーツケースに詰めこんだ。
 そのあいだから何かが床にすべり落ちた。バーバラがベッドサイドのテーブルに置いていた、型押しされた革の写真立てだった。まんなかを蝶番でつないだタイプの写真立てには、ドミニクとバーバラの写真が一枚ずつ入っている。
 ソフィーはかがんでそれを拾い、ドミニクに渡した。彼はバーバラのベッドの端に腰を下ろし、亡くなった婚約者の顔をじっと見つめた。
 彼の顔からはなんの感情もうかがえない。のろのろと時間が経過し、とっくに張りつめていた空気が苦しくなるほどぴりぴりしている。こんなことなら、良心の呵責なんか無視して、わたしがバーバラの持ち物をまとめてしまうんだった。
 ソフィーは思いきって二人のあいだの距離を縮め、ドミニクと並んでベッドに腰かけた。彼の両手からそっと写真立てをとりあげる。ドミニクは濃いまつげで目の表情を隠したまま、しぶしぶソフィーを見た。
 彼は悲嘆に暮れているところをわたしに見せたくないのだ。悲しみに屈するのは恥ずかしいことだと思っているのかもしれない。ソフィーの双子の兄、ポールがまったく同じだった。
 彼女は片手をのばし、ドミニクの顔を自分の肩に引き寄せた。それからもう一方の手で彼の手を口元に運び、唇を押しあてる。
 ドミニクはつかのま逆らった。それは彼の腕が急にこわばったことや、鋭く息を吸いこんだ音で、ソフィーにもわかった。だがボール紙でできたおもちゃの家が突風にあっけなく倒れるように、ドミニクは彼女のほうに崩れかかった。彼の重みはソフィーの不意を突き、はずみでベッドに倒れ、ドミニクも上からかぶさるように倒れこんだ。顔を彼女の襟元にうずめ、両手を彼女の髪にからませ、両脚を彼女の脚にからませた格好で。
 彼は石鹸の香りがした。それによく晴れた日の青空と日光を浴びた海のにおいも。どれもレモンの花の香りがしみこんでいる。彼の肌はいちだんと日焼けし、彼女に触れる場所を熱く焦がした。その熱は不思議な秘薬のように彼女の毛穴に浸透し、血管に入りこんだ。
 少なくともソフィーにはそう思えた。もちろん思考力が残っている範囲で。なぜなら、最初は同情からしたことが、ドラマティックに方向転換してしまったから。いつ、どうしてそうなったかは、彼女にもわからない。二人は教会で並んでいるように行儀よく座っていたのに、次の瞬間、色鮮やかな柄のベッドカバーの上で、飢えた恋人同士のように身をからませていた。
 ソフィーの知っている冷ややかでよそよそしかったドミニク・ウィンターが、なんの警告もなく、突如とばりが下りるサン・ジュリアン島の夜さながら、あっというまに恋人に変身していた。
 当然、しようと思えば彼には言い訳ができる。本来の自分ではなかったのだと。苦悩に引き裂かれ、孤独で、途方に暮れていたと……。彼が無分別に振る舞った言い訳なら、いくらでも並べられる。でも、わたしのほうは? なぜわたしは放したくないとばかりに、彼の首に両腕を巻きつけているの? どうして彼のキスに応え、ちっぽけなビキニしかつけていない裸同然の体に触れさせたの?

*この続きは製品版でお楽しみください。

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