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暗闇はささやく

暗闇はささやく


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

その瞼をふたたび閉じれば、見えなかったものが見えてくる。ジョハンセン新シリーズ、20年間盲目だったニューヒロイン誕生。

音楽療法士のケンドラは、生まれてから20年ものあいだ失明状態にあった。彼女にとって世界は暗闇――そのため嗅覚と触覚が人間離れするほどに研ぎ澄まされ、手術が成功して目が見えるようになってからは、その洞察力を生かして数々の事件捜査にも協力してきた。ただ性格上、被害者に心を寄り添わせてしまうがゆえに精神的に疲弊し、今は完全に手を引いていたが、そんなケンドラの前にある殺人事件の捜査協力を求め、FBIから派遣されたアダムが現れる。アダムは冷徹な手腕で他人を意のままに動かす、“人形使い”として有名で……。

抄録

「それは警告かな」リンチは穏やかに尋ねた。
「そうよ」
「わかった。だが、ステッドラーに利用されたのだとしても、きみは彼を完全に切り捨てたわけではない。でなければぼくを家にあげたりしないだろう」
「そうかもしれない。ジェフに差し向けられてきたわけではないと言っていたわね」
「ああ。だが会ったことはある」リンチはおもむろに続けた。「誠実な人間だという印象を受けた」
「ええ、ジェフはいい人よ。そうでないなんて言ってない。彼は世の中を正そうとしていた。だからFBIに入ったの」ケンドラは苦々しい気持ちで付け加えた。「そして、わたしにその手助けをさせようとした。悪の一団と戦うバットマンとスーパーウーマンみたいに。わたしが捜査の役に立つかもしれないと考えたのよ。実際に役立ったと思う。でも、もうこれ以上はやれない」
「考え直してみるべきだ。きみにはたくさんの命が救える」
「強制しないで」ケンドラは強い口調で言った。「ジェフもそうやって説得しようとしてきた。知ったことかと言ってやったわ。彼が正しいと思っていることをわたしがやらなくてはいけないなんて法はない」
「それはそうだ」
「あなたがきょう訪ねてきたスタジオで、わたしは毎日たくさんの命を救っている。あなたやジェフがやっていることほど派手ではないかもしれないけれど、わたしにとってはずっと大切なことなの」ケンドラは頭を振った。「あなたと話すべきじゃなかった。どんな事件であれ、いっさい興味はないわ」
「五人だ、ドクター・マイケルズ」リンチは静かに言った。「この四十五日間で五人が殺された」
「ハイランド・パークの男性を皮切りに?」
 リンチは身をこわばらせた。「事件の経過は把握しているんだな」
「詳しくは知らないわ。二週間ほど前にジェフが協力を求めてきて、いくらか説明してくれたの。あなたが話そうとしているのはその事件なのかと考えていたのよ。それなら筋が通る」
 リンチはケンドラをじっと見た。「ステッドラーがこの件できみに会いに来たのか?」
「協力は断ったけれどね。追い返してやったわ。言ったでしょう、こういうことにはもう興味がないって」
 リンチは罵りの言葉をつぶやき、ふいに声を鋭くした。「ステッドラーはなんと言っていた?」
「たいしたことは聞いてないわ、詳しい話はさせなかったから。さっきあなたが言ったようなことだけ。あのときには被害者はまだ四人だったけれど」
「月曜の夜に、ダウンタウンにあるゴールドジムの駐車場で秘書が殺されたんだ。ほかの殺しと関連があるとにらんでいる。ほかには何か言っていなかったか」
「直接訊けばいいじゃない」
「訊ければそうしているさ。ステッドラーは行方不明になっている」
 全身に衝撃が駆け抜けた。ケンドラはじっとリンチを見つめ返した。「いつから?」
「もう七十二時間以上になる。この事件に関係があるのではないかと思う」
 ケンドラは平静を取り戻そうと努めた。「なぜそう思うの?」
「少しこみいっているんだ。じっくり話そうじゃないか」リンチは巧みに水を向けた。「きみはかつて彼と付き合っていた。まだ何がしかの思いが残っているはずだ。この事件を解決するために協力してくれないか」
「犯罪に巻きこまれた証拠は何もないの? ただ消えてしまっただけ?」
「証拠はない」
「それなら、ジェフは何かの捜査で隠密行動をしているのかもしれない。危険が迫っているとはかぎらないわ」
「確かにそうだ。だが、それは考えにくい。支局の誰も何ひとつ聞かされていないんだ。最悪のシナリオを想定して捜索にかかっても害はないだろう? 彼が無事に姿を現したら、うれしい驚きになるだけだ」
 ケンドラは苛立ってリンチを見据えた。この人はジェフと同じだ。何食わぬ顔でボタンを押して、わたしを思いどおりに動かそうとしている。ただ、ジェフがそうしたのは彼自身がギャラハッドになりたかったからで、悪党を串刺しにする槍としてわたしを利用しようとした。この人にはそうした騎士道精神は感じられない。
 もうじゅうぶんだ。
「お断りするわ」ケンドラは言った。「わたしにはあなたが本当のことを言っているかどうかさえわからない。あなたは……」言葉を探す。「わたしが思うような、普通のFBIとはちがっている。それに、FBIにはジェフの足どりを追える有能な人材がいくらでもいるでしょう。なぜわたしを引っ張りこむの?」
「彼らが望んでいるわけではない」
 ケンドラは眉根を寄せた。「彼らの意向ではないというの?」
「そうだ。彼らはきみの……態度にいくらか問題を感じている。きみを必要としているのはぼくだ。手を貸してくれないか」
 リンチの切迫した様子が何か別のものに変わった。これは……自棄? いえ、そんなはずはない。リンチはよほどのことがなければ自暴自棄になったりしないだろう。彼は何か別のボタンを押そうとしているのかもしれない。
「よく考えてみないと」
「時間がないんだ」
「急かさないで。考えてみると言ってるのよ。いますぐに答えがほしいなら、悪いけれどその答えは――」
「わかった、いいだろう。よく考えて、電話してくれ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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