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求婚の作法

求婚の作法


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫ヒストリカル
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ステファニー・ローレンス(Stephanie Laurens)
 セイロン(現スリランカ)生まれ。五歳のとき、一家でオーストラリアのメルボルンに移り住む。大学では生化学を専攻して博士号を取得、その後、夫とともにロンドンに渡り、四年を過ごしたのち、帰国。研究活動に従事しつつ、十代のころから愛読していた歴史ロマンス小説を書き始める。現在ではアメリカでも人気が沸騰し、ベストセラーリストの常連となっている。

解説

 時は十九世紀初頭、華やかな社交シーズンが幕を開ける季節。とある舞踏会に出席したソフィーの目に、強烈な魅力を放つジャックの姿が飛び込んできた。二人は運命に導かれるように、その瞬間から惹かれ合う。ハンサムな黒い瞳の紳士と、輝くような美貌のレディ――似合いのカップルに影を落としたのは、ご婦人方の噂話だった。一族を支えるため、彼には金持ちの花嫁が必要だというのだ。財産などないソフィーは、深く悩んだ末、悲しい決意を固めた。求婚される前に身を引くしかない。この心が引き裂かれても……。

抄録

 ジャックが口元にゆっくりと笑みをうかべた。その瞳はソフィーを見つめている。「こうしてみればいい」ジャックはソフィーに顔を近づけると、自分の唇をソフィーの唇に重ねた。
 ジャックの唇はあたたかく、なめらかで、ソフィーの唇をしっかりととらえた。ジャックの指が彼女の指を探り、そして絡める。ソフィーもその指をしっかりと彼の指に絡ませた。それはまるで命綱をつかむかのようだった。
 ソフィーは早く体を引かなければならないとわかっていたが、そのまま身を任せてしまった。すっかり彼にとらわれていた。それもジャックの欲望にではなく、自分自身の欲望に……。そう気づくと、ソフィーの体はふるえ出した。ジャックがソフィーの手を放し、やさしく彼女の顔に触れた。そして静かにソフィーの顔を包み込みながら、唇はしきりにソフィーの唇を求めた。
 熱い波がソフィーの体の中に広がる。ソフィーは自分が喜びの谷間へと落ちていくのを感じた。両手でジャックの襟をつかむ。そして、自分の唇を与え、彼の唇を求めながら、甘い口づけに酔いしれた。
 ジャックも自分に押し寄せてくる情熱にふるえていた。ソフィーの唇はあたたかく、魅力的で、蜜《みつ》のようだ。彼が思い描いていたとおりだった。ソフィーが体を近づけた。彼女の胸が一瞬、ジャックの胸に触れる。ソフィーの体がかすかにふるえた。ジャックは、自分の考えが最初からまちがってはいなかったのを確信した。ソフィーは彼のものなのだ。
 ジャックは自分の中で情熱が渦巻くのを感じていた。独占欲に満ちた、勝ち誇ったような情熱。彼は足を踏ん張り、その情熱が暴れ出さないように努めた。ソフィーの魅惑的な唇の誘惑を拒否することはできず、ジャックはさらに激しいキスに身を投じる。その一方で、彼女の情熱的な美しさに対する欲望を抑えようと、自分と格闘した。
 やがてジャックはいやいやながらに体を引くと、キスを終えた。息が荒くなっているのが自分の耳にも聞こえていた。彼はソフィーの顔を包んでいた手を下ろした。
 ソフィーはゆっくりと目を開けると、その大きな星のようにきらめく瞳でジャックの顔を見つめた。うっとりと、とまどったように、ソフィーはジャックの襟にかけていた手を緩めておろした。が、体は放さなかった。ソフィーの中のもうひとりのソフィーが、彼女をジャックの腕の中へとせきたてている。いったい、どんな魔法で心がかき乱されてしまったのかしら? ソフィーはぼんやりと考えた。
 ソフィーはもう一度、ジャックにキスしてほしかった。ジャックの腕に包まれたかった。だが、そんなことになれば、ただでさえ複雑な状況がもっと大変なことになる。
 ソフィーのふくよかな唇から離れるとき、ジャックはソフィーの瞳に欲望が映っているのに気づいた。ジャックは気を引きしめ、ソフィーを腕の中に抱きたいという衝動を抑えた。
 ソフィーはジャックの瞳の奥に、檻《おり》に入って静かになった野生の獣が、餌《えさ》を求めてうろつく姿を見た。彼女は息をのみ、心の中からわき出る興奮と闘った。今まで味わったことのない欲望だった。ジャックの情熱と自分の情熱を交わらせたい……。ジャックの吸い込まれるような瞳に身を投じてみたいという欲望だ。
 ジャックはソフィーの瞳の中に炎を見ていた。その輝きが彼女の顔をいっそう美しくしている。ジャックの決心は粉々に崩れ、抑えていた心が揺らいだ。突然、舞踏会場との間を仕切っているカーテンが上がり、ざわめきが聞こえてきた。ソフィーとジャックが振り返ると、そこにフィリップ・マーストンがカーテンを押さえて立っている。厳しく人を非難するような表情だ。
「ここでしたか、ミス・ウィンタートン、叔母様のところまでエスコートさせてくださいませんか」
 ソフィーは動かなかった。息を吸って、ジャックに視線を送る。ジャックもソフィーをみつめ返したが、その表情は傲慢《ごうまん》で冷ややかな感じだ。ソフィーは息をのんだ。だが、ジャックが腕を差し出したので、ソフィーはほっと胸をなで下ろした。
「ミスター・マーストン、きみは勘違いしている。彼女をエスコートするのはわたししかいない」
 心地よい小さなふるえがソフィーの背筋を走った。そして毅然《きぜん》とした態度をとると、ソフィーはジャックの腕に手をかけた。
「ミス・ウィンタートンは舞踏会場の熱気で気分が悪くなってね」ジャックがさりげなく言った。「ここで休んで、回復するのを待っていたんだ」ジャックはわずかに頬を染めたソフィーの顔をちらっと見た。「もうだいじょうぶのようだから、わたしがみなさんのところにお連れするよ」しかしそう言いながらも、ジャックは残念そうな表情だった。
 ソフィーはジャックの本心には気づかないふりをして、優雅に会釈した。「お願いしますわ」
 マーストンがカーテンを押さえる。そしてジャックとソフィーは、客たちでざわめく舞踏会場へと出ていった。ソフィーは背筋を伸ばし、ジャックといっしょにゆっくりと客たちの中へ進んでいく。マーストンは彼女のもう片側にぴったりとくっついていた。
 ジャックは巧みにソフィーの手を自分の袖から離すと、彼女とフィリップ・マーストンとの間に立った。「ソフィー、まだ話は終わっていないね」ジャックは穏やかな口調でそう言った。
 ソフィーが再び落ち着きはらったよそよそしい表情を見せ、つんと顎を上げる。「そうですわね。わたくしたち、ごく限られた話題についてしか話し合っておりませんもの」
 ジャックはあいかわらずの無表情だったが、その目はしっかりとソフィーの瞳をとらえていた。ジャックはゆっくりソフィーの手をとると、すばやくキスをした。「ではまた、後ほど」
 ソフィーはその手をあわてて引っ込めた。ジャックが大柄だったことが幸いして、ほとんど誰からも見られずにすんだ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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