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求婚の作法【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】

求婚の作法【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ステファニー・ローレンス(Stephanie Laurens)
 セイロン(現スリランカ)生まれ。五歳のとき、一家でオーストラリアのメルボルンに移り住む。大学では生化学を専攻して博士号を取得、その後、夫とともにロンドンに渡り、四年を過ごしたのち、帰国。研究活動に従事しつつ、十代のころから愛読していた歴史ロマンス小説を書き始める。現在ではアメリカでも人気が沸騰し、ベストセラーリストの常連となっている。

解説

彼に求婚されるのがわたしの夢だった。なのに、身を引くしかないなんて……。

ソフィーは4年前、社交界デビューした矢先に母が急死して以来、社交から退いて地方で父の手伝いをしてきた。そんな彼女も22歳になり、そろそろ結婚相手を探してもいい頃だった。最近、狩猟のためロンドンから来た貴族ジャック・レスターと知り合い、何度か会ううちにほのかな想いを寄せるようになっていた。やがて、再会を約束して帰っていったジャックを追うように、ソフィーは胸を高鳴らせながらロンドンを訪れた。だが、社交界を取り巻く噂が彼女の恋に暗い影を落とす――レスター家に嫁ぐには、充分な持参金がなくてはならないというのだ。つましいわが身を思い、ソフィーは泣く泣く彼を諦めるのだった……。

■MIRA文庫でも活躍中のS・ローレンスによる人気作をリバイバルでお届けします。想いを寄せるジャックから求婚されるのを夢見ていたはずのソフィー。けなげにも恋を諦めるという決断をした彼女の心中を思うと胸がつぶれそうになり、応援せずにはいられません。
*本書は、ハーレクイン文庫から既に配信されている作品のハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ソフィーはあえぎながら身を起こした。たちまち世界がぐるぐる回り出す。そして力強い手が腰に回されると、体がふわりと軽くなり気が遠くなった。
 気がつくと地面に立っていたが、小刻みなふるえが止まらない。次の瞬間、ソフィーはがっしりした腕に抱擁されていた。大きな手が彼女の頭を支え、頬は男らしい固い胸に押し当てられている。ツイードと革の匂いが心地よかった。ソフィーは息苦しさにあえぎながら、さらに彼の胸にしがみつく。
「まったく! だいじょうぶですか?」
 その声が少しふるえているように聞こえる。恐怖に喉を詰まらせたまま、ソフィーは黙ってうなずいた。それからようやく礼儀を思い出して体を離そうとしたが、その瞬間、ジャックは彼女を揺さぶった。
「あの馬は十分扱えるとおっしゃったね」
 ソフィーはしびれた感覚で、その瞳にちらつく怒りの炎を見つめていた。血管の中を少しずつ冷たいものが広がり、顔から血の気が引いていくのがわかった。冷たい闇が広がり目まいに襲われる。
 ジャックは両腕を広げてソフィーを支え、引き寄せた。ソフィーは逆らわなかった。支えられたまま倒れた木のほうへ連れていかれた。「ここに座って!」ジャックはよろけるように座り込んでいた彼女の前に立ち、冷たく無表情に見下ろした。「顔が真っ青だ。頭を低くしなさい」
 また目の前が暗くなり、ソフィーは深く息を吸い込み心を静めようとした。ゆっくりと感覚が戻ってきて、まわりの世界も元に戻った。
 ジャックの長い指が彼女の巻き毛をかきわけ、乗馬服とブラウスの襟の中へすべり込むと、うなじを優しくさすりはじめる。ひんやりした確かな指先がソフィーの敏感な肌に魔法の印を描いた。また気を失いかけたが、彼の指の感触が現実に引き戻し、すり切れた神経を癒してくれた。
 ずいぶん長い間、それが続いたような気がする。やがてソフィーは深く息を吸い込むと身を起こした。うなじから彼の手が離れる。長いまつげの下から見上げたジャックの表情は、相変わらずとらえどころがない。もう一度深呼吸して、ソフィーは着衣の乱れを直した。目の前に差し出された手に、彼女は一瞬ためらったが、結局その手を握って立ち上がった。
「助けていただいて、お礼を申し上げます、ミスター・レスター」言葉はすらすら口をついて出たが、顔を合わせる勇気はない。彼女はうつむいてモスグリーンのビロードのスカートを整えるふりをした。
「そんなお礼よりも、ひとつお約束いただきたいものですね、ミス・ウィンタートン。もう二度と、あの馬にはお乗りにならないと」
 その言葉も口調も冷たく傲慢だ。ソフィーはゆっくりと身を起こし、ジャックと目を合わせた。「ミスター・レスター、これは単なる偶然の事故です」
 ジャックは言い返した。「偶然ではない、ミス・ウィンタートン。あなたにはあの馬は無理だ」
 ソフィーは唇をかみしめ、こわばった表情でにらみ返した。ジャックの怒りは今にも爆発しそうだった。
「ミス・ウィンタートン」感情を押し殺しているせいか、その声は低い。「出発する前に、今後二度とこんな無茶なまねはなさらないとお約束いただきたい」彼は驚きを隠せずにいるソフィーをじっと見つめたまま続けた。「さらにひとつ警告させていただこう。今度この馬に乗っておられるあなたが、わたしの目に入ったら、ただではすみませんよ。よろしいかな?」
 ソフィーはふるえ出しそうな体を必死で抑えた。彼の厳しいまなざしに耐えられず、きつく結ばれたその口元に目を落とす。ふたりの間には一メートルもない。さいわいソフィーのショックは治まりかけていた。いつもの気丈さが頭をもたげ、気持ちもしっかりしてきた。ソフィーはもう一度ジャックを見上げた。「わたくしにそんな要求を突きつける権利など、あなたにはないはずです、ミスター・レスター」
 ジャックは押し黙ったまま、体の中にわき上がるわけのわからない激情と闘っていた。ソフィーも彼の動揺に気づいた。口元をふるわせ、両手を固く握りしめて、全身に緊張をみなぎらせたその姿。ダークブルーの瞳はますます深みを帯び、その奥にいい知れぬ暗い炎が揺らめいている。強くたくましいその体の威圧感が彼女をがんじがらめにし、屈服させようとしていた。
「ソフィー?」クラリッサの声に、ソフィーはわれに返った。「ソフィー、大丈夫なの?」
 ソフィーの心臓は早鐘のように打ち、胸が激しく上下している。いま一度、彼の燃えるブルーの瞳を見返してから、クラリッサとそのあとから近づいてくる一団に目を向けた。やっとの思いで気を落ち着け、自分の馬のほうへ何歩か踏み出す。「大丈夫、なんともなくってよ」
 ジャックは触れはしないが、いつでも彼女を支えられるよう脇を歩いている。自分を守るように寄り添っている彼の存在感。どれほど危ういところを救われたのかは十分わかっているつもりだ。それは正直に認めなければならない。ソフィーはそう思いながら彼を見上げた。
 彼はその視線をとらえて尋ねた。「家まで乗っていけそうですか?」
 ソフィーはうなずいた。ジャックの表情は相変わらず硬い。彼女はまだわずかにふるえている胸で息を吸い込むと彼の顔を見た。「お助けいただいて、ほんとうにありがとうございました」
 ジャックは小さくうなずいた。そして、ソフィーに手を差し延べ、軽々と灰色の馬の背に乗せた。抱き上げられた瞬間、彼女は体が萎えていくような感覚に襲われた。そんな心を落ち着かせようと、彼女はスカートの裾をなでつけた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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