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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ディザイア

氷の王に奪われた天使

氷の王に奪われた天使


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイア
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 オリヴィア・ゲイツ(Olivia Gates)
 カイロ在住のエジプト人。作家だけにとどまらず、眼科医、歌手、画家、アクセサリーデザイナーという実にさまざまなキャリアをもち、妻と母親業もこなしている。キャラクター設定やプロットのアドバイスをしてくれる娘と、ストーリーが気に入らなければキーボードの上を歩きまわる辛口批評家のアンゴラ猫の助けを借りながら、情熱的なロマンスを書き続けている。

解説

彼が欲しいのは、わたしの愛しい娘たちだけ。母親など添えものでしかないのよ。

カサンドラは2年前、親友の結婚式で、青い瞳にまばゆい美貌を持ち、圧倒的なオーラを放つ大富豪レオニードにひと目で心奪われた。与えられるのは情熱と快楽だけだと言う彼に、何も望みはしなかった――だから思いがけない妊娠を告げ、冷たい別れの言葉を投げつけられたあと、ひとりで双子の赤ん坊を産み育ててきた。なのに今、彼は突然姿を現し、娘たちが欲しいと言い出した。近く復活するゾーリャ王国の王位を継承するには、国の守護神である双子の女神そっくりの娘たちが必要だという理由で。なんて身勝手な言い分なの?ショックを受けるカサンドラにレオニードは強引な結婚話を持ち出してきて……。

■熱く激しい男女の愛憎劇を綴り、大人気のオリヴィア・ゲイツ。好評を博した『海運王に魅せられて』、『消せない情熱の記憶』、『氷のキスを花嫁に』の関連作をお楽しみください。

抄録

 空気が肺にとどまったまま、神経がひりつき、筋肉が引きつって、心臓が止まりそうだった。
 レオニード。
 彼がそこにいる。わが家の玄関先に。
 彼との再会は数えきれないほど思い描いてきた。ときどきどうしようもなく未練がつのって、そのたび切ない夢を見た。会いに来て。あの心を見透かすような目で見おろして。事故のあとのことは全部悪い夢だったとわからせて。希望が燃え尽きて灰になるまで、カサンドラは望みを捨てられなかった。
 それがいま……彼が目の前にいる……。
 なんてこと! 彼が本当にそこにいる。
 昔とはまるで別人だった。でもやはり彼だ。
 いちばん目立つ変化は髪型だった。愛の行為のさなか、この指に巻きつけられるほど長かった髪は短く切りそろえられている。顔の端整さを強調するいまの髪型のほうが、前よりも似合っていた。
 次に目についたのは体格の変化だった。昔はもっとがっちりしていた。プロのアスリートらしかった筋骨隆々とした体が、陸上走者のようなしなやかな体つきに変わっている。
 顔だち、雰囲気、どれも見覚えがあるのに前と同じではない。その大きな違いがナイフのようにカサンドラの心臓につきつけられているようだった。
 全体として、あらゆる人間らしさがすべて溶けてなくなり、磨きあげられた鋼鉄の骨格が現れたような印象だった。そのたたずまいさえ、どこか……人間離れしている。純粋な知性と目的意識しか持たないサイボーグのようだ。
 彼を見あげ、彼にじっと見つめられているだけで、すぐに一時間がたってしまいそうだった。レオニードにはそんなパワーがあった。彼の力がおよぶ勢力圏に入ると、カサンドラの時間の流れはいつも狂ってしまう。
「なかに入れてくれないのか、カサンドラ」
 低い声がカサンドラをもの思いから呼び覚ました。
「そんなことをするわけがないでしょう」
「ポーチでできるような話じゃない」
 その傲慢さにカサンドラはあいた口がふさがらなかった。あんな仕打ちをしておいて、いきなり玄関先に現れて、謝罪どころか挨拶もしない。しかも命令は当然受けいれられると思っているなんて。
「どこであろうと、わたしと口がきけると思わないで。おたがい話すことなんてひと言もないはずよ」
「二年ぶりなんだ、話したいことがたくさんある」
「わたしはこの二年で話すことなんてなにもないわ。たとえあったとしても、聞く気なんてないから」
 レオニードはさっと値踏みする視線を向けた。カサンドラの返事にどれだけ真実が含まれているか見てとり、嘘だと判断したようだ。カサンドラは彼に対する自分の弱さがいやでならなかった。
「こんなふうにここに来て、なにを考えているのか知らないけど……」
「もしきみがまだ怒っているのなら、そのことも話し合ってもいい」
 もし? もし、ですって?
「事故で折れたのは本当に脚だけなの? ほかにも壊れてしまったものがあるんじゃない? 人間らしさとか」
「ぼくが来たせいで驚いているのはわかるが……」
「あきれているのよ。怒っているわ」
 レオニードは身じろぎした。まるでカサンドラの反応に対処するためギアを入れ替えるサイボーグのように。「だから直接来たんだ。あらかじめ連絡を入れたらとても謁見は許されないだろうと思ってね。むだな手間は省くことにした」
「ここに来た手間だってむだになるわよ。もちろん謁見は許されない。あなたと話すことなんて一つもないもの。二人とも不愉快な思いをするだけだからさっさと帰って。もう永久に顔を見せないで」
「よりを戻しに来たわけじゃないから安心してくれ。ここに来た目的はきみじゃない。ぼくの娘たちだ」
 ひと言ひと言の意味が頭のなかにしみこんでいく。そして最後のひと言が破壊的な力をもたらした。
“ぼくの娘たちだ”
 ‘ぼくの’娘たち、ですって。
 よくもそんなことが言えるものだ。カサンドラは怒りに身を震わせた。感覚がなくなるくらい唇を噛んで黙っていたが、やがて絞りだすように言った。「出ていって。いますぐ」
 レオニードは平然とたくましい肩をすくめた。「言うべきことを言って合意に達したら帰るさ。いくらきみが否定しようが、ぼくが双子の父親であることに変わりはないし、ここに来たのは――」
 怒りに目の前が真っ赤に染まった。「いますぐ帰らないなら、警察を呼ぶから」
 空色の瞳に動じる気配はなかった。カサンドラがいくら脅しをこめたきつい言葉で抵抗しようと、それに応じる感情さえ持ち合わせていないようだった。「そんなことはやめたほうがいい。隣人が驚くし、不必要な臆測が飛びかうことになる。きみは警察に嘘をついて、ぼくを連行させるようになるかもしれない……」
「あなたが押しかけてきた。それのどこが嘘なのよ。あなたがわたしにいやがらせをしていることだって、“わたしの”娘たちにとんでもない言いがかりをつけてきたことだって……」
「ぼくの娘たちでもある」
「法的にはそうじゃないわ。あの子たちにとっても、世間にとっても。通りがかりの赤の他人のほうが、あの子たちと縁が深いくらいだわ」
 レオニードはうなずいた。「だから、わざわざここまで足を運んだんだ。きみが交渉を始めることに同意するまで帰るつもりはない」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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