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花園物語4

花園物語4


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・プレゼンツスペシャル花園物語
価格:900pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シェリー・シェパード・グレイ(Shelley Shepard Gray)
 テキサス州に生まれ、大学進学でコロラド州に移ったあと各地を転々として、現在はオハイオ州南部に落ち着いている。ニューヨークタイムズとUSAトゥデイのベストセラーリストに載った経歴を持つ大人気作家。アーミッシュの人々の生き方に魅力を感じ、彼らの物語を書き始めた。非凡な社会に暮らす、ごく普通の、気のいい人々を描きたいのだという。

解説

密かにはぐくんできた恋に、切ない試練が降りかかる……。

かつて婚約者に裏切られてぼろぼろになったビバリーにとって、フロリダの小さな町で宿を営むことが心のよりどころだった。きれいな花が咲く庭の手入れや、おいしいお菓子作りなど、みんなの喜ぶ顔が見たくて一生懸命にお客さんをもてなしてきた。ときどきオーナーのエリックとも楽しい時間を過ごし、いつしか彼と言葉を交わすだけで幸せを感じるようになっていた。そんなある日、宿にどこぞの悪漢が押し入り、事件を知ったエリックが遠くから駆けつけてくれた。ビバリーは彼の優しい瞳と言葉に安心し、さらに恋心を募らせた――じつは彼が、けがれなき彼女が恋すべきでない相手とも知らずに。

■ベティ・ニールズを彷彿とさせる穏やかな作風で人気の北米ベストセラー作家による、読めば心癒されるあたたかなロマンスをお届けします。ビバリーがひどく純情だと思うときにエリックが見せる、うぶな女性を密かに愛でる大人の男性の表情にご注目ください!

抄録

「ビバリー」エリックがもう一度言った。低い、なめらかな声に変わっていた。「どうして泣いていたんだい?」
「わたしね……いえ、サディがね、予約をキャンセルさせてもらったお客様に電話をしてくれて、それで何組かはまた来てくれることになったの」
 エリックは唇の端を持ち上げた。「よかったじゃないか!」
「ええ、そう……そうよね」
 たちまちエリックの顔から笑みが消えた。「でも、きみは嬉しくないのか?」
「エリック、ほんとうにばかみたいだってわかっているわ。でも、心のどこかで、この家に見ず知らずの人を入れたくないって思ってしまうの」
「ああ」
 ビバリーは目を閉じた。できれば今この場から消えてしまいたい。「ここが宿だってことぐらいわかってる。もう何年も〈オレンジ・ブロッサム・イン〉の女主人としてやってきたってことも。でも、あんなことがあって、ここへ来る人たちをお客様だと思えなくなってしまったの。みんな、見ず知らずの怖い人たちだと思えてしまうの」
「なるほど」
 ビバリーはため息をついた。「そうよね」エリックの目を見つめる。「わかってる。わたしがおばかさんだと思っているのよね。きっと一時的なものよ」そう、きっとすぐによくなるはず。
 エリックが優しい声で言った。「ねえ、どうやらきみには見えていないみたいだね?」
「なんのこと?」ビバリーはキッチンを見まわした。特におかしな点はない。エリックはいったい何を言っているのかしら?
「ばかだね。ぼくを見て」
 ビバリーははっとしてエリックの顔へ目をやった。深い瞳の色も、頬骨の上のかすかな傷跡もいつものまま。けれど、普段は楽しそうに輝いている彼の瞳には、真剣な色が浮かんでいる。エリックは笑っていない。わたしをばかだなんて思っていない。
 とはいえ、エリックが何を言いたかったのかは、相変わらずわからなかった。「わたし、何か見逃しているのかしら?」ビバリーはささやいた。
 エリックがビバリーの両手をぎゅっと握った。「ぼくだよ」
「あなた?」
「そう、ぼくさ。ぼくがここにいるじゃないか、ビバリー。ぼくはどこへも行かないよ」
 ビバリーは息をのんだ。「でも、ペンシルバニアに戻って家が売れるのを待たなければならないんでしょう?」
 エリックは首を横に振った。「いいや、戻らないよ。少なくとも、しばらくはね」
 信じられなかった。「だって、立ち会わないといけないって言っていたわ」
「そうだね。でも今朝、不動産業者に電話して、しばらくは内見に立ち会えないと言っておいたから」
「それで大丈夫なの?」
 エリックはうなずいて、さっきのままの真剣な表情で続けた。「何もかもをきみひとりに押しつけて帰ったりはしないよ、ビバリー」
 突然の安堵感に、のど元に嗚咽がこみ上げてくる。ついさっきまで、最初のお客様を笑顔で迎えられるか不安でしかたがなかったのだ。
 ふと、新たな疑問が浮かんだ。「不動産業者に電話をしたのは、わたしが怖がっていると思ったからなの?」
「ぼくがこの宿のオーナーだからだよ」エリックが言った。「ぼくはこの宿に責任がある」つないだ指を見下ろして、優しく続けた。「それに、ぼくはきみの雇い主だからね、きみに対しても責任がある」
「わかったわ」ビバリーは手を引っこめようとした。彼の重荷にだけはなりたくなかった。
 けれど、エリックはビバリーの手を放そうとはせず、かえってきつく握りしめた。「いや、きみはわかっていない。ぼくがここに残ろうと決めたいちばんの理由は、きみがぼくを必要としているからだよ。きみには守ってくれる人が必要なんだ。そばにいて、警察から話を聞いたり、ドアの鍵をチェックしたりしてくれる友達がね。きみは用心深いし、仕事もできる……でも、きみはひとりじゃない」
“きみはひとりじゃない”自分でも、うっすらと唇が開いているのがわかった。まるで大きなクリスマスツリーの光を見上げる子どものように、うっとりとエリックを見つめているということも。
 エリックは顔を寄せて低い声でささやいた。「ぼくの言っていることがわかる?」
 ビバリーは唇を閉じてエリックを見つめた。口を開けばおかしなことを言ってしまいそうで、ただうなずいた。
「そう。きみをひとりにはしないよ。きみは、真夜中にたったひとりで心配したり、怯えたりする必要はないんだ。お客様に朝食を出すときだって、きみはひとりじゃない」
 エリックはほんとうにわかってくれている。「ありがとう」
「どういたしまして、ビブ。それに、必要なときにそばにいてくれなかったなんて、きみに思われるのはたまらないんだ」エリックはビバリーの手の甲を指でなぞった。そして次の瞬間、その手を持ち上げてキスをした。
 ビバリーは唇をかみ、口をついて出そうになることばをのみこんだ。わたしだって、あなたが必要とするときにはそばにいたい。あなたはかけがえのない人。何にも代えがたい存在。そう言いたかった。けれど、控えめな性格がそれを許さなかった。かつての婚約者の裏切りも頭をよぎる。きっと、あの記憶を完全に忘れることなど一生できないのだろう。ビバリーはただ黙って立っていた。
 とはいえ、たとえそうでなくても何も言えなかったのかもしれない。
 エリックの誓いは重く、驚きのあまり文字どおり息をのんでしまったから。しかも、彼はずっと手を握っていてくれた。
 それはもう、ことばに尽くせないほど感動的な瞬間だった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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