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愛を夢見る家政婦

愛を夢見る家政婦


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイト・ヒューイット(Kate Hewitt)
 アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。

解説

イタリア大富豪との熱い一夜の代償は、犯罪者の恋人という汚名と、新しい命。

シチリア島の大富豪の別荘で家政婦として働くエマのもとに、ある夜、雇い主のラレンツォが予告もなくやってきた。げっそりとやつれ、深く心を悩ませている彼を慰めたい一心で、エマは情熱のままにラレンツォと一夜をともにする。ところが翌朝、突然数人の警官に踏み込まれ、彼女は凍りついた。ラレンツォが、ある重大な事件に関与しているというのだ。連行された彼はやがて重い判決を受けるが、そのときすでにエマのおなかには彼の子どもが宿っていた。この子が父親と会うことは叶わない。そう思っていたのに……。

■これまで多くの作品を残してきたK・ヒューイットですが、じつはベビーがテーマの作品はほとんど存在していないのです。予期せぬ妊娠に揺れる家政婦の心情を描いた本作は超希少!お見逃しなく。

抄録

「学校では何を専攻したんだ?」
「一年だけ写真の講座を取りました。それから、バックパックとレイルパスを持って世界を見に出かけたんです」
「楽しそうだね。そういえば、きみがカメラ片手にこのあたりを歩いている姿を見かけたことがある。ここの写真を撮ったのか?」
「ええ……」
「見せてもらってもいいかな?」
 エマはためらった。これまで自分の写真を他人に見せたことも、見せてほしいと頼まれたこともなかったからだ。自分の魂の一部を見せるような気がする。「わかりました。取ってきます」急いで寝室へあがり、アルバムにざっと目を通して気に入った作品を何枚か選んで戻ってくると、無言でラレンツォに手渡した。
 ラレンツォは眉間に皺を寄せながら、一枚一枚ていねいに見入っている。
「休日のスナップ写真とは違うんだね」
「ええ」エマは人々のありのままの姿を撮るのが好きだった。見知らぬ他人や友人たちが、悲しみであれ幸せであれ、何か強い感情に動かされた瞬間をとらえるのだ。
「これなんかいいね」ラレンツォが示したのは、トロイーナの町でパン屋を営んでいるロザリアの写真だった。店の奥でスツールに腰かけた彼女が頭をのけぞらせ、顔をしわくちゃにして大笑いしている。「喜びが表れている」自分の作品の意図を彼がちゃんと理解してくれたことに、エマは感動せずにはいられなかった。
「ええ」
「ぼくはこんな喜びを感じたことはなかったように思う」ラレンツォが暗い目をエマに向けた。「きみはあるかい?」
 その質問にエマは衝撃を受けた。自分でも意識しないうちに、答えが口からもれていた。「いいえ、わたしもないと思います」これまで世界を旅してきて、自分は幸せな人間だと思ってきたけれど、そうした本物の喜びを感じたことがあっただろうか? 彼の質問ではじめてそう気づかされた。
「きみは腕がいい」ラレンツォが言い、ふたたび写真に目を戻した。「才能があるよ。みすみすその才能をつぶすことはない」
「つぶしてなんか――」
「ぼくが言いたいのは、作品を発表すべきだってことさ。写真を誰かに、たとえばプロに見せたことはあるかい?」
「いいえ、あなたがはじめてです」
 ラレンツォがエマと視線を合わせ、低い声で言った。「ありがとう」
 エマは無言でうなずいた。その瞬間、何かが変わった。ふたりで見つめ合ったまま、目をそらすことができない。
 いまやどうしようもない欲求が込みあげるのをエマは感じた。理性が消え去り、今この瞬間のことしか考えられない。目の前の男性がほしい。これほど強く誰かを求めたことはなかった。そしてラレンツォの瞳を見れば、彼も同じ思いを抱いているのがわかった。
 ラレンツォが片手をゆっくりとエマのほうへのばしてきた。指先を頬へ滑らせてから、手のひらを添える。彼の手のぬくもりを感じたとたん、エマの体に電流が走った。全身の神経がうずき、震えているかのようだ。彼の親指が唇をかすめると、思わず小さなあえぎ声をもらした。もしキスをされたら、われを忘れてしまうだろう。いや、むしろ忘れさせてほしかった。
 頬に当てられたラレンツォの手がかすかにこわばったのを感じて、エマは一瞬、彼が手を離して立ち去るのではないかと不安になった。だが、彼はもう一方の手をあげて両手でエマの顔を包み込むと、強く引き寄せて唇を重ねた。優しさと激しさ、冷たさと熱さ。あらゆる感覚が一度に押し寄せてきて、エマはなすすべもなく口を開いた。
 ラレンツォに引き寄せられて、エマは彼の脚の上にまたがるような格好になった。脚の付け根に彼の欲望のあかしが押しつけられるのを感じた瞬間、いっきに興奮の渦に巻き込まれてしまった。
 いまやラレンツォは荒々しく性急にキスを深めている。エマは彼の髪に指を差し入れ、体をぴったりと密着させた。それに応えて彼が体を押しつけてくると、無意識のうちに体を弓なりにした。
 だが、いつまでも終わることがないと思えたその時間が過ぎ去ると、ラレンツォはキスをやめてしまった。荒い呼吸をしている。
「だめだ。こんなことをしてはいけない」
「いいえ、いいのよ」エマはささやいた。今ここでやめるなんて耐えられない。
 ラレンツォが頭をさげ、エマの額に額をつけた。ふたりの体はまだぴったり重なったままで、どちらも心臓が激しく高鳴っている。「きみがほしい。こんなに誰かをほしいと思ったのははじめてだ」
 この率直な告白に、エマの体を興奮が駆け抜けた。「わたしもあなたがほしいわ」
「だが、ぼくがきみに与えられるのは今夜しかない」彼が一瞬目を閉じた。「せいぜいあと数時間。それで終わりだ。そうせざるをえないんだよ」
「わかっているわ」エマは言った。最初から、彼女はこの瞬間のことしか考えていなかった。ラレンツォのような男性になんらかの約束を期待することなどできないとわかっている。「今夜だけでいいの。それ以上の関係を望んではいないわ。わたしを信じて。ただ今夜、あなたがほしいだけなの」
「本当に……?」
 エマはうなずき、自分が本気でそう思っていることに自分でも驚いた。「本当よ」
「それなら、おいで」ラレンツォが滑らかな動きでエマから離れて立ちあがり、手を差しのべて彼女を立たせた。ふたりは指を絡めながら、黙って階上の寝室へ向かった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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