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燃えさかる運命

燃えさかる運命


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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著者プロフィール

 キム・ローレンス(Kim Lawrence)
 イギリスの作家。ウェールズ北西部のアングルジー島の農場に住む。毎日三キロほどのジョギングでリフレッシュし、執筆のインスピレーションを得ている。夫と元気な男の子が二人。それに、いつのまにか居ついたさまざまな動物たちもいる。もともと小説を読むのは好きだが、今では書くことに熱中している。ハッピー・エンディングが大好きだという。

解説

 盛大な結婚式が行われようとしている大聖堂で、ベッカは後方の席につき、行動を起こすときを待った。花婿のアレックス・カリデスは、妹の心と体を弄び、無情にも捨てた男。式を妨害し、憎きカリデス一族に復讐してやらなくては気がすまない。ついに式が始まり、ベッカは真実を暴露しようと席を立ちかけた。その瞬間、肩に置かれた手が彼女を制した。「それはいい考えとは思えない」恐る恐る振り返ると、まれに見るハンサムな男性が立っている。復讐をしに来たこともつかの間忘れ、ベッカは彼に見とれた。この男性が、敵であるカリデス一族の長だとは夢にも思わずに。

抄録

「それはいい考えとは思えない」
 いい考えですって? ベッカの体から緊張がいっきに抜けた。‘いい’考えでないのはわかっている。
 たとえつまらない方法だとしても、これはエリカと甘い言葉にたぶらかされたほかのすべての女性を擁護するための行為だ。アレックスの花嫁は破廉恥な男と結婚しようとしていることを知る必要があるし、世間の人たちはアレックス・カリデスがどういう男か知る必要がある。
 いいえ、違う。わたしは誰をごまかそうとしているの? これは単純明快な仕返しでしょう!
 外国語訛《なまり》のある低い声が耳のすぐそばでやんわりと言い添えた。「本当はこんなことはしたくないんだろう」
 肩に置かれた大きな手とともに、その声は“実行しようとしたら力ずくでもここから連れだす”と暗に警告していた。こうなっては、計画を断念するしかなさそうだが、少しでも威厳を保って退場しようとベッカは決心した。
 顎をつんと上げ、まっすぐ前方を見つめたまま席を立つと、肩に置かれた手にうながされ、おとなしく通路を進んで、右手にある扉を通り抜けた。
 彼女がしようとしていたことに気づいたとき、クリストスは胸の奥でくすぶっていた怒りがゆっくり燃えあがるのを感じた。彼女が何を言おうとしたのかわからないが、状況から引きだされる結論はひとつしかない。この赤毛の女性はアレックスに捨てられた女のひとりなのだ。
 口元に皮肉っぽい冷笑が浮かんだ。従弟《いとこ》の魅力的な笑みと洗練された外見に、女性はころっとだまされてしまうらしい。
 メリナとアレックスが一緒にいる現場をとらえたときより今のほうが怒りを感じていると気づき、クリストスは目を見開いた。
 これが時差ぼけによるものでなかったら、深刻な問題だ!
 ベッカは小さな控えの間に連れていかれた。重厚なドアが閉められると同時に膝が震えだし、たちまち震えは全身に広がった。
「彼はそれだけの値打ちもない」
「わかっているわ……」言いながら振り返ったベッカは息をのんだ。それから無意識にあえぐような声を出した。「まあ!」
 これまで見たなかでもっともハンサムな男性を目の前にして、それはひどく控えめな反応だった。どうせつかまるなら、目をみはるほどハンサムな男性に越したことはない。考えこんだ面持ちの浅黒い完璧《かんぺき》な顔に見入ったまま、ベッカはぼんやりと思った。
「顔色が悪いな。外の新鮮な空気を吸ったほうがよさそうだ」
 ベッカははっとし、見知らぬ男性にすっかり見とれていたことに気づいた。どれくらいのあいだ、その黒い目に魅了されて忘我の境地に陥っていたのかわからない。
 とまどいつつ、ベッカはうなずいた。
 肩を落とし、長身の男性のあとについて外に出る。数分でもいいから時間が必要だ。そうすれば、この挫折《ざせつ》感を追い払うことができる。あまりにも不公平だ。アレックス・カリデスのような男が当然の報いを受けないのはどうして?
 外に出ると、ベッカは木のベンチに腰を下ろし、前かがみになって両手に顔をうずめた。
「あとで冷静に考えられるようになったとき、きみはぼくに感謝するはずだ」
 ベッカはさっと顔を上げた。「感謝?」喧嘩《けんか》腰に言う。「あなたは自分の仕事をしただけじゃないの。もっとも、あなたが優秀な警備員なら、わたしはあそこまで入りこめなかったでしょうけど」
 長身で浅黒いハンサムな男性は、一瞬驚いたようだが、すぐに口の端を上げてほほ笑んだ。とたんにベッカの下腹部にうずきが走った。
「できることなら実行させてやりたかった」
 ベッカの目に無念の涙がにじんだ。「そうしたかったわ……」
「落ち着いて」
 本当に今まで出会ったなかで最高にハンサムな男性だ。ベッカは乾いた唇を舌先で湿らせ、恨めしそうに彼を見た。「見ないふりもできたはずよ」
「そうしたら、ぼくは仕事を失っていた」
 ベッカはため息をついた。「でしょうね」
「きみは本気で物笑いの種になるようなまねをしたかったのか?」
「したいとかいうことじゃないわ、これは……」ベッカは口ごもり、深呼吸してなんとか自制心をとり戻そうとした。ちょっと間をおき、隣に座っている男性に視線を向ける。「ねえ、彼は人の人生を台なしにしたのよ。それなのに、罰せられないままでいるのは正しいことだと思う?」
「あいつも九死に一生を得たというわけだ」クリストスは冷ややかに言った。
 ベッカは眉をひそめた。「あなたに何がわかるっていうの?」
「アレックス・カリデスのことはよく知っている」
 彼が軽蔑《けいべつ》もあらわな表情をしているのは、そのせいかもしれない。「あなた、そんな人のもとでよく働けるわね」あんな卑劣漢の近くにいると思うだけで鳥肌が立つ。カリデス一族全員がそう感じさせる。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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