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白い迷路

白い迷路


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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解説

 ニッキは誰かの声で深い眠りから覚めた。ベッドのそばに女友達がいて、助けを求めている。はっきりと意識が戻らないまま再び眠りに落ちたニッキは翌朝、その友人が死んだことを知った。死因はヘロインの過剰摂取――そんなはずはない。麻薬中毒の過去がある彼女だが、きっぱり縁を切ったと自慢げに話していたのだ。死亡推定時刻はまさに彼女が枕元に現れた午前4時。私は何を見たの……? 不可解な出来事に動揺するニッキの前に、ブレントという男性が現れた。彼は訳知り顔で微笑み、こう言った。「僕なら君を助けてあげられる」

抄録

 ニッキは息をすることができなかった。
 アンディーがそこにいる。彼女はベッドのそばに置いてあった鏡台の椅子に腰をおろし、テレビを見ながら古い冗談に小さな笑い声をあげている。
 ニッキの頭のなかをさまざまな言葉が駆けめぐったけれど、幻影を追い払うことはできなかった。
 アンディーは死んだのだ。死んで埋葬されたのだ。
 それなのに彼女はここにいる。埋葬されたときと同じきれいな服に身を包んだアンドレア・シエロ。彼女は、口をあんぐり開けてあえぎながら彼女を見つめているニッキを振り返った。心の底までおびえきっているニッキを。
「わたしは昔のビーバーの再放送を見るのが好きだったわ」アンディーがささやいた。「ねえ……わたしよ。それと、ありがとう……この服を着せてくれて。わたしが自分で選んでもこれにしたわ。あなたがばかげたフリルのついた服を選ばなくてよかった。あんなの、絶対に着たくないもの」突然、彼女の口調が哀愁を帯びた。「すてきな葬儀だったわね。ニューオーリンズの葬儀はああでなくっちゃ。ありがとう、ニッキ。わたしには家族がいなかったけれど、あなたがいてくれたんですもの」
 もう耐えられない。アンディーは実際にそこにいるかのように話している。生きていたらきっとそうしたように、くだけた調子で礼を述べている。
 ついにニッキの喉から悲鳴がほとばしりでた。
 どしんという音がしたのを彼女はぼんやりと意識した。ジュリアンがベッドから転がり落ちたのだろうか。
「ニッキ」アンディーもその音を聞いたと見え、ニッキをとがめるように言った。
 ニッキは自分が再び息を切らしてアンディーを見つめていることに気づいた。
 そのとき、ジュリアンが部屋へ駆けこんできた。
 するとアンディーは最初からいなかったかのようにふっと消えた。
「いったいなんだってあんな悲鳴を……?」ジュリアンがきいた。彼はスエットパンツをはき、髪は乱れたまま、寝ぼけまなこをしばたたいて、左の肘をさすっていた。
「彼女が……アンディーがここにいたの!」ニッキはベッドから出た。「ジュリアン、あなたは彼女を見なかった?」
 ジュリアンはため息をついて視線を落とした。「いいや、ニッキ、ぼくはだれも見なかった」彼は首を振って再びニッキを見た。この人は怒っているんだわ、と彼女は思った。「ニッキ、ここにはだれもいない。ドアにはしっかり鍵がかかっているよ」
「彼女がここにいたわ」ニッキはささやいた。
「ふうん、そうか。で、彼女は行ってしまったんだね。なあ、ニッキ、きみは本当に医者に診てもらう必要があるよ」
 ニッキはくいしばった歯のあいだから長いため息をもらした。「わかったわ、ジュリアン。でも、警察に話したあとにしましょう」
 ジュリアンが部屋を出ていく。ニッキの腕には鳥肌が立っていた。彼女は再び怖くなってごくりと唾《つば》をのみこんだ。だが、しばらくするとジュリアンが戻ってきた。枕《まくら》と上掛けを抱えている。
「ジュリアン……」ニッキは哀れっぽい声でもごもごと抗議した。
「眠るといい」ジュリアンが言った。
「あなたがベッドに寝てちょうだい。わたしは床に寝るわ」
 だが、早くもジュリアンは床へ横たわっていた。「さあ、心配しないで眠るといい」彼は繰り返した。
 言うはやすく、行うは難し……。
 しかし、朝が訪れる少し前ごろにニッキは眠りこんだ。
 そして夢を見た。アンディーの夢でもなければ、彼女の死の前日とさっき目撃した、ホームレスのような男の夢でもなかった。
 ニッキが見たのは、彼女とジュリアンを助けに来た男性の夢だった。彼は人通りの多い道路の反対側に立って、ニッキを見つめていた。
 彼の唇は動いていない。ただニッキを見つめているだけだ。高い頬骨、黒い髪、いかつい線をした顎。緑色の目は彼女に据えられている。
 ニッキには彼の思いが声となって聞こえた。
“ぼくがきみを助けてあげる”
 彼の言葉がいっそうニッキをおびえさせた。
 だれにもわたしを助けられないわ。すべてわたしの心のなかの出来事だもの。
 この人はなんてハンサムなのだろう。人目を引くその魅力的な容貌《ようぼう》は、異なる人種がまじりあっていることをはっきり示している。
 彼がほほえんだ……。
 そして背中を向けた。
 朝になって起きだしたニッキは、ジュリアンにつまずいて転びそうになった。
 ジュリアンがうめき声をあげる。ニッキは身をかがめて彼の額にキスし、これまで飲んだことがないほどおいしいコーヒーをいれてあげると約束した。
 彼女は夢のことを覚えていなかったし、目覚めたときに恐怖を感じてもいなかった。朝食を終えたら真っ先に警察へ行こう、と決意を固めていた。
 わたしがこんなに思いわずらっているのは、わたしが事件の全容を知らないからなのだ、と彼女は確信した。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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