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私が変わる朝

私が変わる朝


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

カウンセラーのアリスのいちばんの心配事は、虐待を受けている17歳の少女のことだった。ある日その少女から妊娠したと告げられたとき、アリスの脳裏に、同じ頃の自分の姿がよみがえった。流産、そして愛する人との別れ──いいえ、私は捨てられた……。「彼のお父さんが私たちを別れさせようとしているのよ。“冷血ブラッドフォード”と呼ばれる辣腕弁護士なんですって」少女の言葉に、アリスは凍りついた。ヘイズ・ブラッドフォード?かつて私を捨てたあのヘイズが、この少女の相手の父親なの?思いがけない再会を前に、アリスの心は激しく揺れ動いていた。

■シルエット・スペシャルエディションから1994年に刊行された、MIRAではおなじみの人気作家エリカ・スピンドラーの貴重な作品をお届けします。胸を打つ愛の物語です。

抄録

 アリスは速くなっていく息を落ち着かせようとした。鉛のように重いものが胸から喉につかえている。一二年前、二人は流産のことをほとんど話さなかった。それなのに一二年たっても、あの記憶はたった今起きたことのように迫ってくる。夢を打ち砕かれ、病室にたった一人で横たわっていたときのことが……。「今でも、つらいの……とても」
 アリスの声はすすり泣きに詰まり、言葉にならなかった。ヘイズは彼女を胸に引き寄せた。「わかるよ、すまなかった」
 アリスはヘイズの肩に顔を埋め、すすり泣いた。「私は生まれてくるのを楽しみにしていたのに。あの子は私の赤ちゃんだったのに。私の中で大きくなっていたのに。私の一部だったのに」
 長いあいだ、アリスは声をあげて泣いていた。泣き声がおさまっても、ヘイズは彼女を抱きしめたまま優しくささやきつづけてくれた。彼の体のぬくもりが伝わってくる。彼のにおいがアリスを包む。手の下に彼の引きしまった男の体を感じる……。
 アリスの心の傷と失意が癒されていき、やがて跡形もなく消えていった。
 ヘイズの首に顔を埋め、アリスは深く息を吸った。一日分伸びた彼の髭が頬をくすぐる。彼の肌は温かく、石鹸と汗のにおいがした。
 アリスはきつく目を閉じた。この感触がどんなに恋しかったことか……。
 ほかのどんな男性も、こんな気持にはしてくれなかった。きっとこれからだって、この人以外は誰も……。
 アリスは顔を上げて、ヘイズの目を見た。あなたも同じ思いなのね? 彼の目を見れば、それがわかる。アリスは体を震わせ、彼から離れようとした。「いけないわ、こんなこと」
「ああ」だが彼の腕はさらに強くアリスを抱きしめる。「いけない」
「行かなくちゃ」
「ああ」ヘイズはまたささやくように言った。だが彼の唇が下がってきた。「さあ、行って」
 そうよ、行かなくちゃ。だがアリスの唇はキスを求めるように開いた。ヘイズの唇が重なる。アリスの手から車のキーが滑り落ちた。
 彼の唇、この懐かしい感触。彼のにおい、懐かしいにおい。男の人のにおい。
 アリスはヘイズの髪に指を差し入れ、さらに深いものを求めるように彼の唇に自分の唇を押しつけた。ヘイズとのキスは自分の家に帰ってきたような懐かしさを感じる。
 うめくような声とともに、ヘイズが唇を離した。二人の目が合う。彼の濃い茶色の目に驚いたような表情が浮かんでいる。だがアリスがなにか言おうと唇を開きかけたとき、ふたたびヘイズの唇が近づき、彼女の唇をふさいだ。
 今度のキスはむさぼるようなキスだった。失われてしまった歳月を取り返そうとでもいうような激しいキスだった。アリスも激しく応えた。爪先立ち、彼の頭を抱くようにして、自分の方に引き寄せる。
 ヘイズの情熱が自分の情熱と同じように高まっていくのがわかる。自分の名を呼ぶ彼のかすれた声から、唇をむさぼる彼のキスから、それが伝わってくる。
 そしてアリスの喉の奥からもれてくる歓びの声が、彼をどんなに求めてきたかをヘイズに告げた。
 抵抗もできないほど激しいこの思いは、いつ目覚めたのだろう? 私はいつ、彼に身も心も捧げようと決心したのだろう? 一二年前、そう思った。そしてそれから一二年……その思いは今も変わっていない。私はまだ、彼を求めている、彼のそばにいたいと願っている。
 ヘイズが荒い息とともに唇を離した。彼の目には後悔が、詫びるような表情が浮かんでいる。恥ずかしさが、どっとアリスに襲いかかった。私は彼を受け入れてしまった。傷つくのはわかりきっているのに。
「君のせいじゃなかったんだ、アリス」ヘイズが言った。「君と別れるのは地獄を意味した。だが、ああするのがいちばんよかったんだ」
 アリスはヘイズをじっと見つめた。彼は言い訳をしている。アリスは彼の腕から乱暴に身を振りほどいた。私を言いくるめようというのね。「あなたって、最低ね。今夜はシェリーとジェフのことを話しに来たんじゃなかったの?」
「違う」
 アリスは拳で彼の胸を叩いた。「二人をそっとしておいてあげられないの? 誰でも自分の思いどおりに言いくるめなければ気がすまないの?」
 アリスがその場を離れようとしたとき、ヘイズの手がアリスの手をつかんだ。「違う。ここに来たのは君を言いくるめるためなんかじゃない。ただ、居ても立ってもいられなかったんだ」
 ヘイズは自分に腹を立てていた。こんなことを言う自分に。アリスを求めるふがいない自分に。
 ああ、ヘイズ。私はいつだってあなたを求めてきたのよ。あなたよりも強く。一二年前、にべもなく拒絶されたとき、それを思い知らされたわ。それなのに、今またあの苦しみを繰り返そうとしている。いつになったら、あなたから自由になれるの? いつになったら、あなたに振り回されずにすむようになるの?


*この続きは製品版でお楽しみください。

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