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発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクインSP文庫
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和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクインSP文庫

静かに愛して
著: ダイアナ・ハミルトン 翻訳: 三好陽子発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクインSP文庫
価格:400pt
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレットみんなの評価 ★★★★☆(1)
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著者プロフィール
ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。
イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。
解説
フリスは巨大企業の御曹司であるレオンと出会ってすぐ結婚した。若くて自信がなかったフリスにとっては、彼が世界のすべてだった。だが、彼は違った。復讐のためにフリスを利用しただけだったのだ。それを悟ったとき、彼女は短い結婚生活に別れを告げ、家を出た。深く傷ついたフリスは不幸な結婚を忘れようと懸命に働き、4年後、ついにメーカーの販売部門を任されるまでになった。しかし突然、フリスの勤める会社は経営不振に陥ってしまう。ある晩、社長から合併先の代表を紹介され、フリスは凍りついた。目の前に、冷たい目をしたかつての夫が立っていた!
抄録
フリスは毛足の長いモスグリーンのカーペットの真ん中に立って、たっぷり三分ほどもソフトなあずき色の壁を見つめていた。気持が恐ろしく乱れている。これまでは、こんな混乱状態を人生から排除するのに成功してきた。こんな場面に遭遇するまでは。
ペントハウスに足を踏み入れてからというもの、漠然とした恐れに取りつかれていた。だが、今このシングルベッドを見て安堵し、ようやく恐れの実体がなんだったのかわかった。私は、レオンがベッドをともにすることを強要するのではないかと恐れていたのだ。合併はまだ正式に成立していない。彼がそれを種に強要することだってあり得たからだ。
ほっとしていいはずなのに、心が痛むのはなぜだろう? わけがわからない。レオンは、私とベッドをともにする気はないと、はっきり言った。それは私の望むところだ。それなら、どうして?
自分に愛想を尽かして、フリスは少しふくれっつらをしながら、汗ばんだてのひらをスカートにこすりつけた。謎めいた“別の役割”については、そのうちわかるだろう。その時点で対策を考えればいい。
私は選べる立場にないことは明らかだ。けれど、私が彼の気まぐれで操れる人形でないことは、はっきりさせなければならない。まず手初めに、ここが私の部屋なら、この部屋を私の好みに合わせて替えよう。
フリスは熱意のない目であたりを見回した。シンプルで贅沢な部屋だ。足がうまるほど毛足の長いカーペット、大きなワードローブとたんす……でも、この部屋には心がない。これをどうにかしなくちゃ。
「紅茶でも飲むかい?」開いたドアからレオンが声をかけた。フリスはびくっとして目を見開いた。
「あっ、いえ、いいわ」ようやくそれだけ言い、口もとを引き締めたが、唇が震えている。レオンは上着を脱いでネクタイをゆるめ、白いローンのシャツの襟もとを開けていた。リラックスしていて危険な感じだ。彼の口もとに浮かぶほほえみを見ると、四年前に戻った気がする。フリスは息をのんだ。レオンのあの破壊的な魅力は今も健在だ。私を無防備にし、従順な奴隷に変えてしまう、あの魅力……。
けれども、くっきりした黒い眉を片方上げるしぐさが、現実の彼を思い起こさせた。シルクのように人当たりのいい、はかりしれない魅力でうまくおおい隠してはいるが、尊大で人を見下し、強い意志の持ち主であることを、それは物語っている。
「まだ荷解きをしてないのかい、ダーリン? まあ、急ぐことはない。夕食は七時だ。スパイクはたくさん料理を用意してくれているよ。外に出かけなくてもいいだろう?」
まるで私の意思を尊重するみたいな言い方だ。でも、どうせ決めるのは全部彼だ。それ一つ取っても腹立たしい。フリスは黙って窓のそばに歩いていき、モスグリーンのカーテンを開けた。何も目に入らない。ただ彼に出ていってほしかった。
「しゃべりたい気分じゃない?」レオンのベルベットのようになめらかな口調が、笑いを含んでいる。フリスは固くこぶしをにぎった。彼は私を苦しめようとしている! 自分が優位に立っているのがわかっていて、その立場を楽しんでいるんだわ。なんていやな男だろう!
「疲れたんだろう」彼の声はまるで愛撫するかのように響く。フリスはかたくなに背を向けていた。「シャワーでも浴びてリラックスしたら? 一眠りするといいよ、このシングルベッドで。安全このうえなしだぞ。君のほうから頼まない限り、僕は絶対に近づかないから」
私から頼むですって? そんなことはあり得ないわ! レオンが部屋を出ていく音を聞きながら、フリスは誓った。愚かしい涙があふれそうになるのをこらえて、窓を離れる。問題は、私がレオンの愛を狂おしく求めた時期があったことだ。求めすぎたのだ、たぶん。あまりに彼を愛していたから、情熱的なキスや愛撫だけでは物足りなくて、愛の充足を求めた。その愛の行為は、私たちふたりを固く結びつけるはずだった。
けれども、子供時代に芽生え、義母の敵意によって増幅された、心の奥底にある不安定さゆえに、フリスは自分を価値のないものとどうしても思ってしまったのだった。ずっと年上の、洗練されて成熟した大人である夫の愛を受け入れるにはふさわしくない、と。初めての夜も、彼を失望させることを極度に恐れた。恐れるあまり、そのとおりになってしまった。
フリスは彼にうまく説明できなかった。自分でもよくわかっていなかったのだ。けれども、その晩レオンは彼女の震える体を抱き、やさしく涙をぬぐって、時がたてばすべてうまくいくよ、と言った。だが、そうではなかった。事態は悪くなる一方だった。フリスのささやかな自信は、自分自身の失敗と義母の冷たい軽蔑の言葉によって、粉々にされた。それまで愛されたことのない、不器用な十八歳のバージンが、二十九歳の世故にたけた都会的な男を満足させるなんて、高望みにすぎるのではないか。
*この続きは製品版でお楽しみください。
ペントハウスに足を踏み入れてからというもの、漠然とした恐れに取りつかれていた。だが、今このシングルベッドを見て安堵し、ようやく恐れの実体がなんだったのかわかった。私は、レオンがベッドをともにすることを強要するのではないかと恐れていたのだ。合併はまだ正式に成立していない。彼がそれを種に強要することだってあり得たからだ。
ほっとしていいはずなのに、心が痛むのはなぜだろう? わけがわからない。レオンは、私とベッドをともにする気はないと、はっきり言った。それは私の望むところだ。それなら、どうして?
自分に愛想を尽かして、フリスは少しふくれっつらをしながら、汗ばんだてのひらをスカートにこすりつけた。謎めいた“別の役割”については、そのうちわかるだろう。その時点で対策を考えればいい。
私は選べる立場にないことは明らかだ。けれど、私が彼の気まぐれで操れる人形でないことは、はっきりさせなければならない。まず手初めに、ここが私の部屋なら、この部屋を私の好みに合わせて替えよう。
フリスは熱意のない目であたりを見回した。シンプルで贅沢な部屋だ。足がうまるほど毛足の長いカーペット、大きなワードローブとたんす……でも、この部屋には心がない。これをどうにかしなくちゃ。
「紅茶でも飲むかい?」開いたドアからレオンが声をかけた。フリスはびくっとして目を見開いた。
「あっ、いえ、いいわ」ようやくそれだけ言い、口もとを引き締めたが、唇が震えている。レオンは上着を脱いでネクタイをゆるめ、白いローンのシャツの襟もとを開けていた。リラックスしていて危険な感じだ。彼の口もとに浮かぶほほえみを見ると、四年前に戻った気がする。フリスは息をのんだ。レオンのあの破壊的な魅力は今も健在だ。私を無防備にし、従順な奴隷に変えてしまう、あの魅力……。
けれども、くっきりした黒い眉を片方上げるしぐさが、現実の彼を思い起こさせた。シルクのように人当たりのいい、はかりしれない魅力でうまくおおい隠してはいるが、尊大で人を見下し、強い意志の持ち主であることを、それは物語っている。
「まだ荷解きをしてないのかい、ダーリン? まあ、急ぐことはない。夕食は七時だ。スパイクはたくさん料理を用意してくれているよ。外に出かけなくてもいいだろう?」
まるで私の意思を尊重するみたいな言い方だ。でも、どうせ決めるのは全部彼だ。それ一つ取っても腹立たしい。フリスは黙って窓のそばに歩いていき、モスグリーンのカーテンを開けた。何も目に入らない。ただ彼に出ていってほしかった。
「しゃべりたい気分じゃない?」レオンのベルベットのようになめらかな口調が、笑いを含んでいる。フリスは固くこぶしをにぎった。彼は私を苦しめようとしている! 自分が優位に立っているのがわかっていて、その立場を楽しんでいるんだわ。なんていやな男だろう!
「疲れたんだろう」彼の声はまるで愛撫するかのように響く。フリスはかたくなに背を向けていた。「シャワーでも浴びてリラックスしたら? 一眠りするといいよ、このシングルベッドで。安全このうえなしだぞ。君のほうから頼まない限り、僕は絶対に近づかないから」
私から頼むですって? そんなことはあり得ないわ! レオンが部屋を出ていく音を聞きながら、フリスは誓った。愚かしい涙があふれそうになるのをこらえて、窓を離れる。問題は、私がレオンの愛を狂おしく求めた時期があったことだ。求めすぎたのだ、たぶん。あまりに彼を愛していたから、情熱的なキスや愛撫だけでは物足りなくて、愛の充足を求めた。その愛の行為は、私たちふたりを固く結びつけるはずだった。
けれども、子供時代に芽生え、義母の敵意によって増幅された、心の奥底にある不安定さゆえに、フリスは自分を価値のないものとどうしても思ってしまったのだった。ずっと年上の、洗練されて成熟した大人である夫の愛を受け入れるにはふさわしくない、と。初めての夜も、彼を失望させることを極度に恐れた。恐れるあまり、そのとおりになってしまった。
フリスは彼にうまく説明できなかった。自分でもよくわかっていなかったのだ。けれども、その晩レオンは彼女の震える体を抱き、やさしく涙をぬぐって、時がたてばすべてうまくいくよ、と言った。だが、そうではなかった。事態は悪くなる一方だった。フリスのささやかな自信は、自分自身の失敗と義母の冷たい軽蔑の言葉によって、粉々にされた。それまで愛されたことのない、不器用な十八歳のバージンが、二十九歳の世故にたけた都会的な男を満足させるなんて、高望みにすぎるのではないか。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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