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胸騒ぎの舞踏会

胸騒ぎの舞踏会


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころから歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

 自堕落で酒癖の悪い夫が逝って一年。アナベラは義母から執拗ないじめを受けていた。そんな折、喪が明けて社交界に復帰した舞踏会で、魅力的な紳士サー・ウィリアムから声をかけられる。「以前からお近づきになりたいと思っていました」夏の海のような青い瞳に見つめられて、アナベラの心はかき乱され、胸はときめいた。でも、この紳士に惹かれるのは危険だわ。どういう人なのか何も知らないし……。それにしても、どうしてわたしに関心を持ったのかしら?
 ★今や英国摂政期(リージエンシー)の大御所作家の感があるニコラ・コーニック。この作品の主人公アナベラは、『いたずらな運命』(HS――257)でヒロインをつとめたアリシアの妹にあたります。★

抄録

「もう戻らないと」サー・ウィリアムの口調は断固としていたが、ぴんと張りつめた緊張が今にもはじけそうなのをアナベラは感じ取った。それに、わたしは確かめなくてはならない……。
「楽しむためにわたしを誘ったとおっしゃっていただいて光栄ですわ、サー・ウィリアム」彼女は冗談めかした。「でしたら、あなたも、わたしがあなたをどう思っているか、お知りになりたくありませんか? それとも、ご自分の魅力に自信がおありだから、わざわざ確認する必要などないかしら?」
 サー・ウィリアムの顔に笑みが浮かんだが、決してくつろいだものではなかった。アナベラは自分が背伸びしているのは十分にわかっていたが、自分が正しいのかどうかをどうしても確かめたいという考えでいっぱいだった。湖に目をやると、暗い木陰の向こうに舞踏室の明かりがきらめいている。アナベラはおもむろに口を開いた。
「あなたにお会いしたとき、興味深い方だと思いました。わたしの心を引く……ちょっとしたものをお持ちの方だと。そして、もしあなたにキスをされたら、わたしはもっと興味を引かれるのかしらって思いました」
 サー・ウィリアムのキスは欲望むき出しで、怖くなるほど衝撃的だった。まさにこれこそアナベラが求めていたものだったが、ウィル・ウェストンのような男性を挑発するなんてあまりにも身の程知らずだったと、思い知らされただけだった。サー・ウィリアムはアナベラを自分の張りつめた体に情け容赦なく両手で押しつけ、柔らかい唇をむさぼるように奪った。アナベラは彼から離れようと、両手を伸ばして胸をぐいと押した。サー・ウィリアムが言っていたように、彼女は確かに何も知らないうぶな娘だ。フランシスとの短い結婚生活でも、彼は自分の身勝手な欲望を満足させることしか頭になく、彼女に優しさを示したことなど一度もなかった。だが、今はサー・ウィリアムだけでなくアナベラ自身の中にも、それよりずっと複雑な感情や欲望が渦巻いていた。彼女は急に怖くなった。胸を押されてサー・ウィリアムが体を離したとき、アナベラはがっかりすると同時に困惑した。
「きみの好奇心はこれで満たされたかな、ミセス・セント・オービー?」サー・ウィリアムは慇懃《いんぎん》に尋ねた。「それとも、まだ説明してほしい部分があるかい? いや、言葉で言ってくれれば十分だ」
 暗闇の中で表情は見えないが、彼の口調がひどく冷ややかだったので、アナベラはひるんだ。挑発的でいかにも世慣れた女性のふりをしていたものの、背伸びをしても限界のあることに気づいて、世間知らずな小娘に戻ってしまった。どうしてわたしはこんなふうに振舞ったりしたのだろう? サー・ウィリアムをその気にさせ、慎みも忘れて彼といちゃつきながら、彼の腕に抱かれたとたん、何も知らない乙女みたいに大騒ぎして身を引くなんて。わたしはフランシスに愛情を感じたこともなければ、本当の意味で彼に愛されたこともないんです、などとサー・ウィリアムに説明できるはずもない。フランシスに優しくされたこともないし、社交界にデビューしたばかりの娘と同じように、わたしの感情はまだ目覚めていないんです、などと……。サー・ウィリアムはわたしのことを、ちゃらちゃらした安っぽい女だと思ったにちがいない。退屈しのぎにジョージ・ジェフリーズのような男まで誘うような女。でも口先ばかりで、実際には期待に添うことのない女……。
「許してください」アナベラは言った。恥ずかしさのあまり、蚊の鳴くような声にしかならなかった。まるで自分の声ではないみたいだった。「愚かな振舞いをしてしまって……。いつもはこんなうわついたことは……」すすり泣きそうになるのを必死でこらえる。月明かりの中のロマンスといった美しい夢なんて、しょせんこんなものだわ! こんなにきまりの悪い思いをしたのは初めてだ。
 舟に戻るにはサー・ウィリアムの手を借りなくてはならない。アナベラがおそるおそる手を出すと、彼がいらだたしげに息をのむ音が聞こえた。いつまでもこんな気まずい思いをしていなければならないのは耐えがたかった。だが、サー・ウィリアムが彼女の手を取ったとき、不思議なことに、すべてが変わった。ふたりとも一瞬じっとたたずみ、気がつくと、アナベラは言葉もなく彼の腕に抱かれていた。タウントンの舞踏会で最初に出会ったときと同じように、彼の胸に頭をもたせかけていると、頬に力強い鼓動を感じ、彼の体のぬくもりをとても近くに感じた。だが、あのときとは違って、サー・ウィリアムはアナベラを放そうとしなかった。彼女は初めて、自分が愛で包まれていることを実感した。タウントンの最初の晩と同じように、自分が認められているという思いと、安らかな気持ちがあふれてきた。どれくらいそこに立っていたかはわからない。永遠とも思える時間がたったが、少しも気にならなかった。アナベラは心底幸せだった。やがて、サー・ウィリアムが彼女の顔にかかる髪を払って、優しくキスをした。
「怖がらなくていい」彼は少ししわがれた声で言った。「きみの体験してきたことがすべてだとはかぎらないんだよ」
 アナベラは顔を上げてサー・ウィリアムを見つめた。月明かりが深い影を落としている。「どうしてわかるの?」彼女はためらいがちに尋ねた。
「当然のことだ」サー・ウィリアムは腕にこめていた力を緩め、アナベラの顔を正面から見た。「きみは、愛してもいなければ尊敬してもいない男と結婚した。わたしが聞いたところでは、粗野で下劣な男だったそうじゃないか。おそらく、これでもまだ控えめな表現だろう。きみに思いやりを示すような男だったとはとても思えない。特に肉体的な欲求がからむ状況では。だが、いつもそうとはかぎらないんだよ……」サー・ウィリアムはアナベラの頬に軽く触れ、髪に指を差し入れた。「わたしに証明させてくれ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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