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アテネから来た暴君

アテネから来た暴君


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジュリア・ジェイムズ(Julia James)
 十代のころに初めてミルズ・アンド・ブーンのロマンスを読み、それ以来の大ファン。ロマンスの舞台として理想的な地中海地方、そしてイギリスの田園が大好きで、とくに歴史ある城やコテージに惹かれるという。趣味はウォーキング、ガーデニング、刺繍、お菓子作りなど。現在は家族とイギリスに在住。

解説

君は僕のいとこから金をだまし取った!いわれのない非難に、彼女はおののいた。

その夜、非常勤教師のサラはリヴィエラにあるクラブで失踪した歌手の代役を務めていた──不似合いな化粧とドレスで。歌い終えたサラが楽屋に戻ると、見知らぬ男性が訪ねてきた。私を世慣れた女だと勘違いして誘いに来たのかしら?すぐに追い払おうとするが、サラはその男性、ギリシア人実業家バスティアンからなぜか目を離せない。「一緒にディナーでもどうかと思ってね」まるでサラの返事がわかっているかのように、彼は微笑んだ。その胸の内に暗いたくらみを隠したまま。

■いきいきとしたピュアなヒロインと、ゴージャスで傲慢なヒーローの王道ロマンスに定評があるジュリア・ジェイムズ。今作のヒーローの暴君ぶりも、2017年MVP候補級の破壊力!必読です。

抄録

 赤い唇を閉じたまま彼を見ていた彼女の目がきらめいた。
「何か《ウイ》?」彼女は鋭い口調で問いかけた。
 バスティアンはいぶかしげに目を細めた。「ウエイターから聞いていないのか?」フランス語で尋ねる。彼は英語やほかのいくつかの言語と同じく、フランス語も堪能だった。
 彼女は眉を上げた。「あなただったの?」答えを待たずに続ける。「悪いけれど、お酒を飲もうというお客様の招待は受けないの」
 はねつけるような口調にバスティアンはかすかないらだちを覚えた。女性はもちろん、誰かにそんな口調で話しかけられることはめったにない。しかも、他人の注目や好意に頼る仕事をしている女性からそんなふうに話しかけられるなど、論外だ。
 もしかしたら、彼女はもう客の機嫌をとる必要はないと思っているのか? 今の仕事から抜けだす準備がすでにできていると?
 かすかだったいらだちが激しくなった。だがバスティアンはそれを表には出さなかった。今はまず彼女の気持ちを和らげなくては。打ち負かすのはそのあとだ。
「では、代わりにディナーに招待しよう」バスティアンはなだめるような声音で応じた。この声を使って失敗したことはない。
 再び彼女の頬が染まったが、今回その口もとがこわばることはなかった。代わりに彼女はかすかにほほ笑んだ。単なる儀礼的なものだ、とバスティアンは察した。
「ありがとう。でも、やっぱりお断りするわ。では……」彼女はまたほほ笑んだ。
 もうこの話はおしまい――彼女の意思はバスティアンにも伝わった。
「では、このへんで。着替えたいの」彼が立ち去るのを待つように彼女は言葉を切った。
 バスティアンはそれを無視し、問いかけるように片方の眉を上げた。「ほかの人とディナーの約束があるのかな?」
 彼女の目で何かがはじけ、瞳の色が変わったことにバスティアンは気づいた。灰色だと思っていた瞳に、急に緑色の光が宿った。
「いいえ」彼女はきっぱりと言った。「それにたとえそうだとしても」再び鋭い声で続ける。「あなたには関係ないわ」笑みを浮かべたものの、ぎこちなく、心はこもっていない。
 相手が僕のいとこなら、マドモアゼル、大いに関係がある。再びいらだちがこみあげたが、バスティアンはそれを隠した。「だったら、僕との食事を断る理由はなんだ?」再びほかの女性には効果絶大な声音で尋ねる。夕食に誘って断られたためしは一度もない。
 バスティアンを見つめる彼女の目は今は灰色に戻り、緑色の光はもう見えない。黒いシャドーに縁取られ、つけまつげと大量のマスカラで強調されている。
 その目がバスティアンを見つめていた。こんなふうに見つめられるのは初めてだった。まるで自分の見ているものが、聞いていることが信じられないと言わんばかりだ。
 ほんの一瞬、二人の目が合った。
 すると、彼女はたじろいだかのように濃いまつげを伏せ、息を吸いこんだ。「ムッシュ、残念だけれど、一緒に食事をとろうというお誘いも断ることにしているの」今回ははねつけるような口調ではなかったが、それでも決然とした響きがあった。
 バスティアンはその言葉を無視した。「この町で食事をするつもりはない。〈ル・タンブラー〉に連れていきたいと思っている」
 彼女の目がかすかに大きくなった。
〈ル・タンブラー〉は今コート・ダジュールで最もおしゃれなレストランだ。そんなすばらしい店で食事をするとなれば、彼女も考え直すだろう、とバスティアンは確信していた。それに、僕が金持ちで興味を持つにふさわしい男だと知って安心するに違いない。僕の年若いいとこよりも格下の男とつき合って時間を無駄にしたくはないはずだ。僕の資産がフィリップよりもずっと多いことを彼女が知っていたら……。バスティアンは皮肉っぽく思った。
 だがもちろん、彼女にとってはフィリップの財産のほうが近づきやすい。本当にフィリップに目標を定めているなら、よそ見をするのに慎重になるだろう。もしフィリップに見つかれば、カモを失うことになるのだから。
 ある思いがバスティアンの頭に浮かんだ。彼女はとても魅力的だ。この僕が見ても。あの手を使って彼女をいとこから引き離すべきだろうか。だが、彼はすぐにその考えを打ち消した。もちろん、何があろうと、このような女性と関わりを持ったりはしない。その目的がいかに立派だとしても。
 残念だ。頭の中でそんな声がした。
「ムッシュ」彼女はまたしても鋭い声で言った。「さっきも言ったように、あなたの……とても気前のよいご招待は遠慮するわ」
“気前のよい”という言葉には皮肉な響きがあっただろうか。彼女は僕が意図していたのとは違う印象を僕に抱いたのか?
 バスティアンはかすかな電流のごとく新たな感情がわくのを感じた。
 緑がかった灰色の目に奇妙な感情を浮かべて僕を見つめるこの女性には、見た目以上の何かがあるのか? その目は今は灰色というより緑色に近い。目の色が変わることが気になり、彼は推し量るように彼女を凝視した。
 ほんの一瞬、二人の視線がぶつかり、バスティアンは体を電気が駆け抜けるのを感じた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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