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燃えさかる運命【ハーレクイン文庫版】

燃えさかる運命【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キム・ローレンス(Kim Lawrence)
 イギリスの作家。ウェールズ北西部のアングルジー島の農場に住む。毎日三キロほどのジョギングでリフレッシュし、執筆のインスピレーションを得ている。夫と元気な男の子が二人。それに、いつのまにか居ついたさまざまな動物たちもいる。もともと小説を読むのは好きだが、今では書くことに熱中している。ハッピー・エンディングが大好きだという。

解説

まさしくいま、大聖堂では荘厳な結婚式が行われようとしている。ベッカは震えながら後方の席につき、行動を起こすときを待った。花婿は妹を弄び無情にも捨てた男だ。なんとしても悪事を暴露し、男の一族、ギリシアの名門カリデス家の名を貶めたかった。式が始まり、ベッカが席を立ちあがりかけた、その刹那、男らしい大きな手が肩に置かれ、彼女を「だめだ」と制した。恐る恐る振り返ると、そこには精悍さが滲む美しい男性がいた。束の間、復讐をしに来たことも忘れ、思わず見とれた。その人が、カリデス一族の長クリストスだとは夢にも思わずに。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「きみはひどく疑り深いんだな。それで気が楽になるなら、借金だと思えばいい」
「とにかく、あなたからお金は……」はっと息をのみ、ベッカは叫んだ。「わたしの車よ!」
 クリストスは渋滞した車の流れから一瞬視線をそらした。「どこだ?」
「あの青いワーゲン」
「驚いたな!」
 批判めいた口ぶりに、ベッカは気色ばんだ。「どういう意味?」
「あの手の型はもう製造されていない。だめだ、はずしたら!」シートベルトの留め金をはずそうとする彼女に、鋭い口調で命じた。
 ベッカは彼を無視した。「車を止めて!」
 クリストスのほうも命令を無視した。
 青いワーゲンが視界から消えるとベッカは悲痛な声をあげ、彼の横顔をにらみつけた。「なぜ止めてくれなかったの? わたしの言ったことが聞こえなかったの?」
「聞かないほうが難しかっただろうさ。きみの声は実によく通る。さっきブレーキを踏んだら、追突事故を起こしかねなかったんだ」
「じゃあ、引き返して」
「この道は一方通行だ」
「あそこに止めて!」歩道寄りの空いた車線をベッカは指さした。
「あれはバス車線だ。交通違反でつかまる」
 憎々しげな一瞥を彼にくれたベッカは、ばかにしたような笑みを返された。「あら、これまで一度も規則を破ったことがないとでも言うの?」
 彼は黙っている。ベッカはあざけるように鼻で笑った。自分に都合よく規則をねじ曲げるくらい、この人ならやりかねないだろう。
「あなたがえんえんと続く犯罪記録を持っていたとしても、驚かないわ。ねえ、ここで降ろして。歩いて引き返すから」
「雪が降っている」
「わかっているわよ」
「本当に車を見つけられると思っているのか?」
「もちろん」
「だが、今まで見たかぎり、きみにはもっとも初歩的な方向感覚さえなさそうだ。きみがいらだちを抑える努力をするなら、車のところまで引き返すよ。それから」クリストスは横目で彼女を見た。「走っている車から飛びだしたら、命はない」
「わたしはばかじゃないし、自殺願望もないわ」ベッカはぴしゃりと言った。
「よし。だが念のため、ドアハンドルから手を離してくれないか」
 それをつかんでいたことさえ気づかなかった。ベッカはあわてて言われたとおりにした。
「いい子だ」
「保護者ぶらないで!」
「きみはいつもそんなふうに挑戦的なのか? 女らしいとは言えないな」クリストスは道端に車を寄せ、狭いスペースに巧みにバックで止めた。「さあ、きみの車をとりに行こう」
 ベッカは勢いよくドアを開けた。「あなたの助けは必要ないわ」車から降り、顎をつんと上げて歩きだす。
「方角が違う」
 背後からのんびりした口調で指摘され、ベッカは目を閉じた。さらに二歩進んだところでため息をつき、さっと振り返る。彼はそこに立ったまま、腕組みをして見つめている。
「だったら、案内してもらうわ」ベッカはしぶしぶ引き返した。早く家に帰りたかったが、その一方で彼が道に迷えばいいきみだと思った。
 しかし、彼が抜群の方向感覚の持ち主なのは明らかだ。一度も迷う気配を見せず、ベッカがついていけるよう速度を加減して歩いている。
 車が目に入るとベッカは安堵のため息をつき、彼のわきをすり抜けて駆け寄った。
「こいつは本当に動くのか?」車のまわりを歩きながら彼が疑わしげにきく。
「もちろん動くわ」ベッカは威厳をこめて言い返したが、鍵穴にキーをさしこむと、ぎこちない口調になって礼を言った。「助けてくれてありがとう」
「金なしで家まで運転して帰るつもりか?」
 ベッカは顔をしかめた。「言ったはずよ……」
「プライドもけっこうだが、一ペニーもなしでヨークシャーまでどうやって帰るんだ?」
 一瞬気落ちしたものの、それでも顎をつんと上げてベッカは彼を見返した。「わたしがヨークシャーから来たって、どうして知っているの?」
「自分で言ったじゃないか。ガソリンスタンドは借用書は受け入れてくれないだろうな」
 彼の意見が正しいのは否めなかった。さしだされた紙幣の束を見てベッカは顔をしかめ、彼の顔に視線を戻した。「言ったはずよ、赤の他人からお金をもらうわけにはいかないって」
 クリストスは腹立たしげにため息をつき、母国語で何やら言った。
「ギリシア語はわからないわ」
「ぼくが他人でなくなれば解決するかもしれないと言ったんだ」
「わたしの故郷では、村に引っ越してきた人はたとえそこに二十年住もうと、よそ者だと……」彼の大きな手に顔を包まれ、ベッカは言葉を切って目を見開いた。「どういうつもり?」冷ややかに言おうとしても、胸が高鳴り、抑制がきかない。
 彼女の質問が頭のなかで反響していたが、クリストスは無視した。彼女の肌はとても柔らかい。紅潮した頬を親指で撫でたとき、彼の黒い目は情熱のきらめきを放った。
 唇が触れるとベッカははっと目を見開いた。ぴったり重なるとなぜわたしはわかっていたのかしら? 彼のセクシーな唇の動きに応じて唇が開き、思わず快感のため息がもれる。巧みなキスにうっとりとなり、ベッカは完全にわれを忘れた。
 唇が離れたとき、いつのまにか彼の黒髪に指をからませていたことに気づき、ベッカは唇を噛んで手を離した。自身の反応にすっかり動揺していた。ほてった体の芯が余韻でまだうずいている。彼の顔を見ないようにしたが、目の前にたくましい胸があった。それは触れたときの感触を思い出させる。
「これでぼくたちはもう他人ではない」
 ベッカは視線を上げた。「他人では……ない?」
「少なくともぼくの故郷ではね」クリストスは彼女の手をとって指を開かせた。「きみはもう安心してこれを受けとれる」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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