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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ラブ ストリーム

この夜が明けるまでに

この夜が明けるまでに


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ラブ ストリーム
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ゲイル・ウィルソン(Gayle Wilson)
 あのリンダ・ハワードをして“絶妙な会話のセンスといい、個性豊かな人物設定といい、読者をストーリーに引き込むすべを心得ている”と絶賛せしめた実力派。ロマンティック・サスペンスと、十九世紀初頭の摂政期を舞台にした歴史ロマンスを書き分けながら、北米ではこれまで二十作以上の作品をハーレクインから刊行。ロマンス小説界の由緒あるRITA賞を二度も受賞したほか、数々の賞を獲得している。すでに独立した一人息子も教師となり、現在は夫と増え続ける犬や猫とともにアラバマ州に暮らす。ミニシリーズ『孤高の鷲』は元CIAエージェントのヒーローたちの孤独な闘いと真実の愛にたどりつくさまを描いた連作で、北米で大好評を博し、続編が次々と刊行されている。

解説

 コンピュータ・プログラマーのカーラは、父親を事故で亡くし、悲しみに暮れていた。ところが、葬儀の席で近づいてきた謎の男性ニックにこの死には不審な点があるとささやかれて動揺する。さらに彼はカーラに一緒に調査をしたいと提案してきたのだ。その矢先、二人は何者かに命を狙われる。姿の見えない殺人者から逃れ、二人はホテルで一夜をともにすることになった。「君を抱くつもりはない」熱い欲望を宿した瞳と続いた言葉に、カーラの胸の不安は消え、なぜか甘い期待に満たされた。「僕が君を抱くときは……」
 ★リンダ・ハワードもその実力を絶賛するゲイル・ウィルソン。元CIAエージェントたちをホットに描いた人気ミニシリーズ『孤高の鷲』をお届けします!★

抄録

 ニックはカーラの腰にそっと手を当て、先に行くよう促した。一階の最初の部屋に近づいたとき、二人の背後の道路で大きな爆発音が聞こえた。
 ニックは反射的に右腕をカーラにまわし、モーテルの壁に押しつけると、自分の体でカーラの体をかばおうとした。その急激な動きとカーラを壁に押しつける力の激しさに、ニックの肋骨《ろっこつ》が悲鳴をあげた。
 ブレザーの下のホルスターから拳銃《けんじゅう》を抜いたときには、さっきの思いがけない音の正体がわかった。ごみ収集車がモーテルの業務用大型ごみ箱の中身を空ける音だったのだ。
 何も恐れることはないとわかったあとも体内のアドレナリンの噴出は止まらないまま、ニックは拳銃をホルスターにおさめ、体の力を抜いてカーラの顔を見下ろした。ニックを見上げるカーラの目はショックで大きく見開かれていた。けれども、何も突然頭がおかしくなって押し倒してきたわけではないとわかったらしく、彼から離れようとはしなかった。
 そしてニックもまた、過剰反応だったと気づきながらも、カーラからすぐに手を離しはしなかった。二人の体はぴったりと密着し、ニックの胸板の上でカーラの胸のふくらみが、はずむ息とともに上下している。弔いの夜に初めてカーラと出会って以来、美しいその体をこんなふうに抱き寄せたいという思いを、ニックは心の奥底にずっと秘めてきたのだ。
 ニックがもはや彼女の身を案じているのではないと、カーラも気づいたらしい。唇をわずかに開き、顔を上げてニックの瞳を見つめていたカーラは、その瞳に浮かぶものを目にして唇を結び、彼の体を押しのけるように、両手のひらをニックの胸に当てた。
 本当なら一歩下がり、気まずい思いをしているカーラから体を離してやるべきだ。だが、どんなときも己を律する力を誇りにしてきたというのに、ニックはどうしても動けなかった。
 その代わり、わずかに顔の角度を傾け、カーラの唇を求め、顔を近づけていった。抵抗するだろうという予想とは裏腹に、カーラの唇は彼のキスを待ちこがれるように開いた。青ざめた頬に長く黒いまつげを伏せ、彼女は目を閉じた。
 ニックの胸を押していた手のひらから力が抜け、彼のシャツをぎゅっとつかんで引き寄せた。その瞬間、ニックの心の堰《せき》が切れた。
 壁についていた両手をカーラの背中にまわし、唇を重ねる。カーラの唇は開いたまま、柔らかく濡《ぬ》れていた。唇を割って入ってきたニックの舌とカーラの舌がからみ合う。二人の舌はゆっくりと欲望のダンスを踊り始めた。いつかこんなときが来ると、二人ともわかっていたとおりに。
 ニックはカーラをいっそう強く抱きしめ、大きく広げた指で柔らかなヒップを包み込んだ。彼の高ぶりは一気に最高潮に達した。今までの欲求不満も何もかも、腕の中のカーラ以外はすべてが吹き飛んだ。
 二人が立っている廊下の隣のドアが不意に開いた。室内からテレビの大きな音がもれてきたが、それよりも聞こえてくる甲高い声にニックはぎょっとした。
 子どもたちの声だ。
 カーラも両手をほどき、さっきのようにニックの胸に手を当ててその体を押し戻した。今回はニックも我に返り、なんとか己を律してそれに従った。
 一歩下がったニックはちらりと左手を見た。思ったとおりだ。せいぜい五歳か六歳ぐらいの女の子が二人、興味津々といった顔で見上げている。
 そのとき、二人の母親が部屋から出てくると後ろ手にドアを閉め、ひどく大きなショルダーバッグを肩にかけ直した。母親はニックたちには目もくれず、子どもたちのか細い肩に手を置いて、二人を駐車場へと導いた。今自分たちが邪魔したキスが気になってしょうがない女の子たちは母親に押しやられながら、ずっとニックとカーラを見つめ続けている。
 子どもたちが視界から消えるのを待ち、ニックは改めてカーラの顔を見下ろした。カーラは唇を閉じ、母親と子どもたちをまだ目で追っている。
「すまない」
 カーラが目を上げてニックを見た。「あなただけのせいじゃないわ。わたしも悪かったの」
「そんなことはない」
「人前であんなことをしてしまったのが自分の責任だと、思いたければ思えばいいわ。でも……わたしもあなたを押しのけはしなかった」
 確かにそうだ。最初は少しためらうようなそぶりもあったが。これは、部屋に入ったらさっきのキスの続きをしてもいいと受け取っていいのだろうか。
 おい、待て。今のおまえの仕事はなんだ。ハイラム・シモンスンの娘をベッドに連れ込むことじゃないはずだぞ。
“よく気をつけてやれよ”というポークの言葉も、ニックの胸中のジレンマを鋭く突いてくる。
 自分には、カーラをここまで連れてきた責任がある。カーラに近づいたのも、彼女がコンピュータの専門家であり、連邦捜査局《FBI》のファイルにも容易に侵入できるという点で利用できると考えたからだ。その結果、カーラを命の危険にまでさらしてしまった。一度ばかりか、二度までも。
 己の死に直面したとき、人間の通常の抑制にどんな影響が出るか、誰よりもニック自身が知り抜いている。自分はまだ生きているという喜びに全神経が快哉《かいさい》の声をあげ、その喜びを、肌の触れ合いを含め、あらゆる形で祝おうとするのだ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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