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清らかな背徳

清らかな背徳


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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解説

 燃えるような赤い髪を持つエリザベスは父の城で皆に疎まれ、使用人のように扱われていた。17歳のある朝ついに城を出ることにした彼女は、贖罪の旅の途上にあるウィリアム公の一行とともに聖堂へ向けて旅立った。国王の庶子である彼は貴族の娘を殺した危険人物で、暗い噂には事欠かない。だが何よりもエリザベスをおびやかしたのは、彼が放つ強烈な魅力だった……。ベストセラー作家が中世イングランドを舞台に描く愛と陰謀のヒストリカル・ロマンス。

抄録

「どいてよ、このろくでなし!」
 彼は不意ににやりとした。そのけだるそうな笑みは、怒った顔よりもっと人を不安にする。「それがイングランド国王の息子に言う言葉か? 恥を知るのだ。きみが粗野な親に育てられたことはわかっている。しかし、その年になれば礼儀正しい言葉づかいくらい知っているはずだ」
「どいてください、ろくでなし様」エリザベスはやさしい声を出した。
「どくつもりはない」
「わたしに触らないと約束なさったじゃないの!」
「そんな約束をした覚えはない。事実、こんなに狭いベッドで触らずに寝るのは不可能だ。わたしは確かにそう言ったはずだ」
「だからといって、胸に触らなくてもいいじゃありませんか!」
 エリザベスは彼を押しのけようとしたが、彼は片手で簡単にエリザベスの手首を両方ともつかんで押さえつけた。手首を押さえつけただけではない。体ごと押さえつけた。「わたしは眠っていた。眠っているときに何があろうと責任はない。きみがわたしの手を胸にのせたのかもしれないだろう。わたしを誘惑しようとして。そこで急に気が変わったとも考えられる。そうではないとどうして言える?」
 あまりに腹が立って口がきけず、エリザベスは彼をどかそうとして蹴飛ばし始めた。
「それは誤解のもとだ、エリザベス」彼は小声で言った。「男が上に乗っているときにそんなことをしたら、誘いかけていると思われる」
「下りてくださいと誘いかけているのよ」
 彼は笑い声をたてた。「話が少しかみ合わないようだ。きみは素直になるべきときにわざわざ人を怒らせる。きみを黙らせるには、きわどい行動に出るしかない。きみは体を奪われてなるものかと抵抗する。だが、本当にそれがいやなら、わたしを刺激しないでおとなしくすることだ。きみがわたしを怒らせるたびに、わたしは特別な方策を講じてきみを黙らせようとするだろう。きみには大いに魅力を感じるが、今は禁欲生活を貫かなくてはいけない。少なくともセント・アン聖堂に着くまでは。たとえ、きみが体を差しだしてくれても、わたしは断るだろう」
「体を差しだす? わたしが差しだしたいのは剣の先だけよ」
「いや、きみはそんなことをしない」
「あなたほどうぬぼれが強くて、卑しむべき男性はいないわ」
「それでもきみはわたしがほしい。ああ、わかっているよ。きみは気づいていないのだろう。口げんかしたり、人を扇動したりするのは、報われない情熱を隠すためで……」
「からかわないでください」
「からかっているのではない。きみの気を惹《ひ》こうとしているのだ」
 エリザベスは彼を見あげた。その目には驚きと恐れが表れている。「わたしの気を惹こうとする男性なんて、今までいませんでした」
「それは違う。わたしは機会があるごとにきみの気を惹こうとした。女性を押さえつけて口説こうとしたのは初めてで、いつもこんなことをしているわけではない。今は大いに融通をきかせているのだ」
「ずいぶん変わった口説き方ですね」エリザベスの声は震えていたが、おそらく彼は気づかなかっただろう。
「いや、そんなことはない。ただ、ありきたりなお世辞を言ってもきみは何も感じないだろうと思ったのだ。きみははりねずみに似ている。誰かがなでようとすると、体中の針を逆立てるからね」
「まさか、そんなことはなさらないでしょうね?」
「そんなこととは?」
「わたしをなでることです」
 彼の顔がゆっくり笑み崩れた。「わたしはまずきみにキスしようと思っていたのだ」
 彼は身をかがめ、エリザベスの唇に唇を重ねた。その瞬間、最後の蝋燭の炎が揺らいで消え、ふたりを闇《やみ》に閉じこめた。
 明かりが消えると同時に、エリザベスの分別も消え去った。暗闇の中にふたりきりでいるうえに、彼の唇にしっかり唇をとらえられている。エリザベス・オブ・ブリーダンは森の中に置き去りにされ、ここにはいない。ウィリアム公の力強い体の下に横たわっているのは、名前も持たない美しく魅力に満ちた女性だった。彼の指が顔に触れ、唇をそっと開かせても抵抗しようとは思わなかった。体からしだいに緊張が消え、固く閉じていた脚からも力が抜けていく。彼がその脚のあいだに割りこむと、体の感触がはっきりと伝わってきた。彼の情熱の証《あかし》がありありと感じられる。暗闇の中に悩ましい声が小さく響いた。それが自分の声であることはかろうじてわかった。
 続いてウィリアム公の手が胸に触れた。幸いなことに、その手はとても快かった。やがて、彼の指が張りつめた頂を軽くすべり始めた。言葉にならない大きな喜びが、どこからかわきあがってくる。泣きたいほどすばらしい気分だ。彼は苦もなく修道服を脱がせられるらしい。エリザベス自身はどうすれば脱げるかよくわからないのに、いつのまにか彼の手と素肌を隔てているのは薄いシュミーズだけになっていた。
 今まで、こういう気持ちになったことがないわけではない。昨夜、森の中で彼にキスされたとき、同じ気持ちを味わった。けれど、今の感情はあのときの千倍も激しい。肌は熱く、彼を求める思いが胸に迫る。脚のあいだでは何かが熱く燃え、とうてい治まりそうもない。闇が好き。体に触れる彼の手も、彼の唇も好き。もっと抱いてと言いたかったけれど、言葉にすることはできなかった。その思いを伝えたくて、体はひとりでに弓なりになり、腰は彼の腰にぴったり触れていた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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