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禁じられた追憶【ハーレクインSP文庫版】

禁じられた追憶【ハーレクインSP文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクインSP文庫
価格:400pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・ケンドリック(Sharon Kendrick)
 ウエストロンドン生まれ。写真家、看護師、オーストラリアの砂漠での救急車の運転手、改装した二階建てバスで料理をしながらのヨーロッパ巡りなど、多くの職業を経験する。それでも、作家がこれまでで最高の職業だと語る。医師の夫をモデルにすることもある小説のヒーロー作りの合間に、料理や読書、観劇、アメリカのウエストコースト・ミュージック、娘や息子との会話を楽しんでいる。

解説

施設育ちながら、努力の末に大学の奨学金を得たエリザベス。将来を夢見て意気揚々とロンドンへやってきた彼女は、旅行中のイタリア系アメリカ人、リカルドと衝撃的な恋におちる。だが彼に婚約者がいるとわかったとき、恋ははかなく散った。彼女が予期せぬ妊娠に気づいたのは、彼が去ったあとだった……。それから10年、一児の母、そして会計士になった彼女は新しい顧客である大物弁護士と対面し、卒倒しそうになった。忘れもしない貴族的な顔つきに、アメリカ人らしい話し方。まさか息子の存在を知って、奪いにやってきたの?
*本書は、ハーレクイン文庫から既に配信されている作品のカバー替え版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「やあ、ベス」そっと呼ぶ声が聞こえた。
 一瞬、エリザベスは凍りついた。顔から血の気が引いていく。だが、ショックを受けたせいではなかった。さっき彼がいきなり電話を切ってからずっと、こういう事態になるのを心の奥で予測していたのだ。
 振り向いて彼に向き合うと、冷たいまなざしが待っていた。
 再びあのころの自分に戻ってしまいそうだ。何年もかかって作り上げた落ち着きのある自分の像が崩れ去っていく。自分の中にある大人の女と少女が争い、ついに少女のほうに軍配が上がった。だいたいこんな巨大な敵に対して何も知らないふりができるのは子供ぐらいだ。
「えっ、なんですって?」よかった、思っていたとおりちょっと愉快そうな調子で言えた。
 リックは冷たい笑みを浮かべた。「覚えていないのか? だったら思い出させてあげよう」
 まるで蝋人形にでもなってしまったかのように、エリザベスは身じろぎしなかった。リックが手を伸ばしてきても、まったく動けない。彼はじっとエリザベスの顔をのぞき込んだ。
「思い出させてあげようか、ベス?」
 そう言ったかと思うと、彼は押さえ込むようにして唇を重ねた。
 ああ、甘く、めくるめくような彼とのキス。体の奥で、即座に呼び覚まされたものがあった。エリザベスは思わず両手でがっしりした肩をつかんだ。何かにつかまらなければ、倒れてしまいそうだった。ああ、ずっとこんなふうだったらよかったのに! この長く寂しかった年月が、嘘だったらよかったのに!
 すると、リックが唇を離した。始めたときと同じように唐突だった。お互い空になった肺に息を吸い込もうとするように、大きく息をする。その呼吸音だけが響きわたった。彼のほうがやや早く呼吸を整え終わり、一歩下がって、冷たくうかがうような目でエリザベスを見た。
「昔と変わっていないな」軽蔑するように言う。「すごい反応だ。正しいボタンを押しさえすれば、ぱっと燃え上がる! これで思い出したかい? それとも、もっと思い出させてほしい?」彼はエリザベスの頭のてっぺんから爪先まで、ゆっくりと眺めまわした。特に豊かな胸には、しばらく視線を留めていた。「どうだい、昔を思い出した感想は?」
 エリザベスはずっと彼にキスしてもらいたいと思い続けてきた。だから、その思いをかなえるために、あえて冷たい表情を無視して応じたのだ。だが、この屈辱的な言葉までは無視できなかった。もしほかの人が彼と同じように振る舞ったら、その顔を平手打ちしていただろう。しかし、なぜかリックにはそうできなかった。
 それにしても、なぜ彼はこんなに怒っているのかしら。私は昔すれ違った女の一人にすぎないはずなのに。そう思ったとき、記憶がよみがえった。あの朝、私が黙ってベッドからいなくなったので、彼はきっとプライドを傷つけられたのにちがいないわ。彼みたいな人は、自分のほうから出ていくのでなければ耐えられないのよ。きっと空港で見送らせたかったのね。そう思ったとたん、エリザベスは彼に裏切られたことを思い出して唇を強く噛んだ。
「出ていって!」
 リックは笑い出した。「出ていけだって? いや、だめだ、ベス。話し合うことが山ほどあるはずだ」
 エリザベスは必死で威厳を取りつくろった。「私の名前はエリザベスよ」
“ベス”は永遠にこの世から消えたのだ。ベスはあまりにも人を信じやすく、純粋だった。だけどエリザベスはクールで、なんにでも対処できる。
「いや、僕にとっては違うね。たとえみんなからエリザベスと呼ばれていても、僕にとって君は、いつまでたってもベスだ。情熱的なベス。甘く熟れた桃のような……ちょうど食べごろの……」
 エリザベスは思わず身震いした。「リカルド、お願いだから……」
「なんだ! 覚えているんじゃないか!」
「もちろん覚えているわ」
「けっこう。一瞬、この長い年月、自分自身を過大評価してきてしまったのかと思ったよ」
 それとなくあのときの出来事を自慢されて、エリザベスは顔を赤らめた。自分と出会う前、それから別れたあと、彼がベッドをともにしたであろう女性たちのことを考えると、嫉妬で気分が悪くなりそうだ。早くこの場を離れなくては。一日でこれだけ侮辱されれば充分だ。
「帰らなくちゃ」
「いや、だめだ。僕たちは話し合うんだ」
 エリザベスは家で待っているピーターのことを考えた。リックの息子!
 彼女はゆっくり首を振った。「いいえ、だめよ。話はできないわ」
「なぜだ?」
 本当のことを言うわけにもいかず、エリザベスは押し黙った。
「ほかにデートの約束があるのか?」
 その言葉に飛びついた。「ええ、そうよ!」
「じゃ、キャンセルするんだ!」彼のためならほかのデートをキャンセルするのは当たり前だと信じている、傲慢な言い方だった。
「それだけじゃないの」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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