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ベルトルッチ家の花嫁

ベルトルッチ家の花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・スペンサー(Catherine Spencer)
 三十数年前にイギリスからカナダのバンクーバーに移り住む。英語の教師からロマンス作家に転身。カナダ人の男性と結婚し子供にも恵まれ、現在は孫もいる。あいた時間があれば、ピアノを弾いたり、アンティークショップをのぞいたり、庭の手入れをしたりしている。

解説

 イタリアの高級別荘地に住む祖母のもとを訪れたナタリーは、到着早々、隣家の男性にじっと見つめられていることに気づいた。祖母によれば、彼は地元では忌み嫌われた一族の出身だという。だが何度かその男性、デメトリオと言葉を交わすうちに、ナタリーは彼に強く惹かれていく自分に気づいた。祖母がなんと言おうと、彼は絶対に悪い人間じゃない。直感を信じ、ナタリーは何かとデメトリオにかかわろうとするが、当のデメトリオは金持ち娘の気まぐれだと彼女を相手にしない。たび重なる拒絶のすえ希望を失いかけていたとき、彼女は突然、デメトリオから激しいキスを受けた。

抄録

 ナタリーは彼の手をつかむと、引きずるようにして走りだした。彼女の言うことも、もっともだ。やせた小さな体なら、囲いを抜け出せるかもしれない。
 ところがキッチンに入ってみると、すべてが出かけたときのままだった。悲しげな目に垂れた耳の子犬は、無傷で囲いの中に座っている。「ほらね、言ったとおりだろう? こいつは大丈夫だ」
「さあ、それはどうかしら」ナタリーは囲いに近づき、犬を抱き上げた。「私に言わせれば、この子はかわいそうなちびちゃんよ。あなたに会いたがっていたんだと思うわ。ちゃんと夕食をあげた?」
「君が帰ったあとすぐにね。持ってきてくれた食料を平らげたうえに、まだ食べたんだ。きかれる前に言うけど、明日ポジタノの獣医に連れていくよ」
 ナタリーは子犬の耳にキスして、頭に頬ずりした。「ちびちゃん、つらいスタートだったでしょうけど、これからはずっと幸せになれるわ」
 そいつはもう十分幸せだ。君にそんなに大事にされてね! うらやましさとおもしろさの狭間《はざま》で、デメトリオは咳払《せきばら》いした。「お楽しみのところをじゃまして悪いが、またおしっこをかけられたくなかったら、そろそろそいつを外に出したほうがいいよ」
「それじゃ、私が連れていくわ」
「いや」彼はコルク抜きをポケットに突っこみ、ワインとグラスを持った。「二人で行こう。崖《がけ》の上から満月に乾杯だ。それから念のために言っておくが、ちびちゃんなんて名前の犬を飼うのはお断りだね」
「そう。それならなんて呼ぶの?」
 デメトリオは冷蔵庫の上から大きな懐中電灯を取った。「犬っころと呼んでどこが悪いのか、僕にはわからないね」キッチンから裏庭の奥へと斜めに伸びる敷石道を照らしながら、彼は言った。「とはいえ、だめ犬というのもなかなかいい響きだな。どう思う?」
「あなたには、いろんな意味でものすごく助けが必要だと思うわ」ナタリーは笑い、彼の手から落ちそうなワイングラスを受け取った。「プリンスかバロンなんてどうかしら? それともキングとか」
「こんな、みすぼらしいやつに? 冗談だろう!」
 二人は楽しく言い合いながら歩き、崖の縁の塀まで来たときには“ピッポ”という名前ならいいだろうということに話がまとまった。
 デメトリオは海に面した石のベンチを懐中電灯で照らした。「そこに座ってワインを開けよう」
「わあ、すてき! 私のために用意してくれたんでしょう」ナタリーはいたずらっぽく彼を見た。
「残念ながら違うよ。ここは祖母の特等席だったんだ。よくここへ来て、沈む太陽や昇る月を眺めていたよ。君も気に入るんじゃないかと思ってね」
 ナタリーは口元に笑みをたたえ、ゆったりしたピンクのスカートをはためかせた。「気に入ったわ」
 デメトリオはワインを注《つ》ぎ、塀に絡まったつる草に懐中電灯を差して、ベンチに座った。「気に入ってくれて嬉《うれ》しいよ。乾杯!」
 彼女はグラスを合わせると、急に真顔になった。「連れてきてくれてありがとう、デメトリオ。こんな大切な場所を教えてもらえて光栄だわ」
 彼の喉元に熱い思いがこみ上げた。ナタリーの優雅な魅力は完璧《かんぺき》の域を超え、まさに計り知れない。祖母もきっと彼女を好きになっただろう。「こちらこそ光栄です、プリンセス」
 ナタリーは満足げにため息をついて星を見上げた。「夜の庭の匂いって大好きよ」夢見るような瞳を彼に向ける。「ここで夕食をとらない? ロマンチックだし、塀の上をテーブルに使えばいいでしょう」
「ロマンチックだって? 蜘蛛《くも》は言うまでもないが、塀の割れ目にはとかげや蛇も住んでいるんだぞ」
 ナタリーは小さな悲鳴をあげて身震いした。「蜘蛛は大嫌いよ。蛇もだけど……。あなたの家のキッチンで水を盗んだのを見つかったあの日、私、この塀を上ったの。上にまたがって、五分は休んだわ。しかも、はいていたのはショートパンツよ」
「覚えているよ」いつの間にか、デメトリオは彼女の肩に手をまわしていた。「これから冒険するときは、君ももっと気をつけるだろう」二人の体温が交じり合い、微《かす》かな香水の香りが彼の感覚を満たす。
 デメトリオの腕がウエストに下りてきたので、ナタリーは息をつめたまま抱き寄せられた。
 そのとたん、事態は二人の予測を超えたものに変化した。張りつめた沈黙が、会話だけでなくこれまでのたわいない友情までも、忘却のかなたに葬り去る。二人は、お互いの間で火花を散らす熱情に必死で気づかないふりをしている十代のカップルのように、ぎこちなく座っていた。
 それでもデメトリオは、懐中電灯に集まる蛾《が》に向かって跳びはねる子犬のしぐさに見入っているようで、実はナタリーを見つめていた。
「今度は何を考えているの、デメトリオ?」彼のほうを見もしないでナタリーは尋ねた。
「君のことだよ、プリンセス」
 彼女はため息をついて体を離した。「私もよ。あなた、私を呼んだことを後悔しているでしょう」
 そうだろうか? 「ああ」彼はにべもなく答えた。
「それじゃ、なぜ呼んだの?」
「自分を抑えられなかったんだ」
「今になって、どうしたらいいかわからないのね」
 デメトリオは眉を上げて夜の海に視線を投げた。誘惑と闘わなければ。「僕がどうしたいのか、君にはわかっているんだろう」
「わかっているわ。どうして抵抗をやめて、このままそれを実行しないの?」
 彼は後ろから刺されたかのように突然立ち上がり、落ち着きなく塀のほうへ歩いていった。「それを考えるだけでも、間違っているからだよ」
「二人の大人が合意のうえで自然な衝動に身を任せるのに、間違いも何もないわ」
「僕たちの場合は、あるんだよ。君と僕とでは住む世界が違うんだ。君のおばあ様だって――」
 ナタリーは立ち上がり、近づいて彼のグラスを取って自分のグラスとともに塀の上に置いた。「デメトリオ」彼の首に腕を巻きつけながら、彼女は静かに言った。「これは祖母の問題じゃないわ。あなたと私の問題よ。だから言い訳を探すのはやめて、もう一度キスしてちょうだい」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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