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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル

名うての貴族

名うての貴族


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころから歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている

解説

 夏のある朝、レイチェルが川岸で読書をしていると、一糸まとわぬ男性が川から上がってきた。わたしは幻覚におそわれているのかしら? レイチェルは自分の目を疑ったが、それはまぼろしではなかった。たくましい肩、幅広い胸、引きしまった腹部……。まるで大地を突き破って現れた異教の神のようだ。その男性が幼なじみのコーリーだとわかるやいなや、レイチェルは心臓が止まりそうになった。放蕩貴族として名を馳せるコーリーが、なぜここに?
 今や英国摂政期(リージエンシー)の名手の感があるニコラ・コーニック。風光明媚な田園地帯で繰り広げられる放蕩貴族と淑女の恋愛模様をお楽しみください。

抄録

「いや、断るよ、レイチェル。ぼくは水彩画のモデルなどごめんだ。くだらない企画だな」コーリーは頑固にあごを引き、銀灰色の瞳でにらんだ。そのあと、やけに勢いよく土をすくって右側の山に盛った。
 レイチェルがため息をつくのが聞こえた。彼女はコーリーが掘っている|試掘溝《トレンチ》の横にバケツを伏せて座っている。彼はバケツの土を完全に落としてから座るよう勧めた。少なくともきみがいるあいだは骨の一片も出ないだろうから、と請け合って。
 コーリーは皮肉っぽく考えた。昨日はサルティア館で読書会があったのだから、慈善事業に熱心なレディ・サリーにたきつけられてレイチェルがやってくるだろうと覚悟しておくべきだった。そもそも、昨夜この話題を持ち出さなかったのが不思議なくらいだ。ふだんのレイチェルはとても率直に話す。何か思いついたら、黙っていられないのだ。
 レディ・サリーの水彩画集については、コーリーはすでにケストレル公爵から聞いていた。公爵は昨夜ラング家のカード・パーティでレディ・サリーに会い、協力を頼まれたらしい。ジャスティン・ケストレルはそのアイデアを笑ったが、難色を示すことはなかった。コーリーはそこまでの関心もない。
 レイチェルは顔に日が当たらないように日傘を傾けた。その落ち着き払った風情は公爵夫人の園遊会にでもいるようだ。発掘現場の真ん中にそんなふうに座っていられるのは彼女ぐらいだろう。
 コーリーはシャベルを土に突き刺して手の甲で額をぬぐった。発掘は汚れる仕事だ。おそらくもう汗臭いだろう。もし風呂に入る必要があるなら、レイチェルがはっきりそう言うはずだ。これまで幾度となくそういう指摘を受けてきた。友だちだから、まわりくどい言い方はしないのだ。
「なぜ昨日、読書会から帰ったときに話さなかったんだ? どうしてためらった?」
「断られると思ったからよ」彼女は不機嫌に言った。
 コーリーは笑った。「じゃあ、どうして話したんだい?」
「憶測で決めつけたくなかったの。でも、あなたがどんな返事をするかぐらい、わたしには手に取るようにわかっていたわ」
「きみほどぼくのことをよく知っていれば、たいていの反応は予測できるだろう」
 レイチェルはその意味を考え、眉間にかすかにしわを寄せたが、反論しなかった。しばらくしてコーリーは発掘を再開した。レイチェルがぼくをよく知っているとしたら、ぼくも彼女を知っている。彼女は頑固だ。水彩画集についてはまだ最後まで話していない。賭けてもいいが、この話題は五分以内に蒸し返されるだろう。コーリーはトレンチを数十センチ掘り、待った。五分ではなく、二分後だった。
「なぜモデルになってくれないの、コーリー? これはレディ・サリーの慈善事業の一環で、立派な目的があるのに」
 コーリーは顔を上げ、日光がまぶしくないように帽子をずらした。レイチェルが茶色の瞳で興味深そうに見ている。画集を売るために男たちを見世物にするのを少しも悪いと思っていないのは明らかだ。コーリーは考え違いを正そうとした。
「レイチェル、ぼくは女性の食欲を満たすための肉みたいに陳列されるのはごめんだ」コーリーは怒りをあらわにしてシャベルを地面に突き立てた。「説明書きが目に浮かぶよ。コーリー・ニューリン卿、身長百八十五センチ、年収四万ポンド。ノーサンプトンシャーとコーンウォールに領地を所有……」ふんと鼻を鳴らす。「ほかにどんな取り得があるかは、積極的な若きレディがご自身で発見されたし!」
 レイチェルは大笑いした。「あなたがそんなに頭が固いとは思わなかったわ。今までは女性たちがあなたの取り得をあれこれ吟味しても、気にしなかったじゃないの! 川辺にいた自分を考えてごらんなさい!」
 コーリーは返事をしなかった。彼はいらついていた。レディ・サリーの慈善活動に協力する気のない無粋な男だと思われたくなかった。いまいましい。ぼくはいつでも立派な目的のために貢献する気がある。気が進まないのは、モデルになることだ。画集といっても、結局は夫探しの女性たちの手引き書にすぎないのは明白だ。女性に必死で物色されるよりは、むしろ自分が物色したい。それに、こういうことは仰々しい口実をつけてやるべきではないだろう。
「なぜぼくが協力しなければならないんだ?」
 レイチェルは遠くの廃棄場で土をふるいにかけている父親をぼんやり見ていた。彼女はコーリーに視線を戻した。口元にまだかすかな笑みを浮かべている。コーリーが断った本当の理由に気づいていないのだ。
「だって、これは慈善の――」
 コーリーは片手を上げて制した。「ああ、それはわかっている。だけど、なぜぼくなんだ?」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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