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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル

魅惑の一夜

魅惑の一夜


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころから歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

 兄の結婚式を控え、デボラは悩んでいた。未亡人とはいえ、それなりに充実した日々を過ごしていた彼女に父がこのごろ再婚しろとうるさく言ってくるからだ。あまりの煩わしさに、彼女はつい嘘をついた。「お兄様の結婚式には婚約者とともに出席します」窮したデボラは、つかの間の婚約相手を探すため新聞の求人欄に“紳士募集”の広告を出した。意外にも応募者はただ一人きり。約束の日、待ち合わせ場所に赴いた彼女が目にしたのは、放蕩者として名高いリチャード・ケストレル卿の姿だった。
 ★ 放蕩貴族と淑女の恋の駆け引きに謎と陰謀が絡んで、ますます目が離せません。★

抄録

 デボラは草に覆われた道で、馬を彼より少し先に進め、肩越しに彼を見た。
「わたしにとって馬に乗る楽しみの一つは一人になれることなの」あてつけがましく言う。「さようなら、リチャード卿」
 彼は手袋をはめた手で彼女の手綱を押さえた。デボラはいかにも不快そうに彼の手をじろりと見た。
「なんなの?」冷ややかな声だ。
「ちょっと待ってくれ、ミセス・ストラットン」ふたたびくつわを並べながらリチャードは言った。「わたしのような腕の持ち主と一緒に馬を走らせる機会はめったにない。賭《かけ》をしないか?きみが勝ったら一人にしてあげよう」
 デボラはさっと彼を見た。彼に息をする暇さえ与えず、彼の手から手綱をひったくる。そして馬首を返して馬のわき腹を蹴った。リチャードの横すれすれのところを通っていったので、彼はぶつからないようにハンター種の馬をどけなくてはならなかった。
 次の瞬間リチャードもマーリンの向きを変え、あとを追って駆けだした。彼は騎士道精神から、彼女を先に行かせるつもりでいた。だが彼女には遠慮する気は全然なかったらしい。雌馬はもう川岸に向かって傾斜している広々とした野原へ出る門に達し、少なくとも二百メートルは彼に差をつけている。
 リチャードは苦笑いして追いかけた。赤い乗馬服のデボラは鞍の上で身を屈め、ほとんど平らになるほど馬の首に覆いかぶさって、飛ぶように走っていく。このあたりをよく知っているぶん、リチャードより有利だ。ためらうことなく水辺を目指す。乗馬用の帽子が風に吹き飛び、長い髪が女神ワルキューレのようにうしろになびいた。
 リチャードは追いすがり、彼女との差をつめていった。デボラは川岸の伐採用の林を目指すしかなくなった。やがて彼女はリチャードから逃れようがないのを悟り、馬の手綱を引いて頭上に木の葉が茂る道をゆっくりと歩かせはじめた。
 リチャードは彼女をしげしげと見た。彼女はまた森の外へ逃げ出してしまいかねない。いらだったような挑戦的な顔をしている。馬をあんなに走らせたせいで、体にぴったりした赤い上着の下で、胸が大きく波打っている。
「なんておてんばなんだ、きみは。ミセス・ストラットン」リチャードはゆっくりと言った。「きみは世間のしきたりなど蹴飛ばして自由になりたいのだろうとわたしはいつも思っていた」馬の向きを変えて彼女と顔を合わせ、膝が触れ合うほどハンター種の馬を近寄せる。デボラは逃げようとしない。だが鞍の上で凍りつき、大きく見開いた青い目で彼をじっと見た。「賭に負けたらどんな罰を受けるのかきみはきかなかった」リチャードは穏やかに言った。
 彼は手袋をはめた片手を手綱から離してデボラの後頭部に持っていった。風に乱れた髪の中に突っ込んで彼女の頭を引き寄せる。ぴったりとくっついた二頭の馬の熱い体がリチャードの脚を締めつける。キスするのにこんな不安定な姿勢はない。だが彼にはすばらしい瞬間だった。ずっと前からデボラにキスしたくてたまらなかったのだ。彼女の唇は柔らかくてひんやりしていて、さわやかな空気とかすかな蜜《みつ》の味がした。そしてデボラと同じようによくわからない味わいもあった。頭でそう感じると、すぐに彼の体のほかの部分が反応した。リチャードはデボラの官能をそそる下唇を歯のあいだにはさんだ。それから舌を差し入れて誘う。やがてデボラは自分から彼にキスを返すまでになった。はじめはためらいがちに、それからしだいに情熱的に。彼女の感触とその唇の味わいに、太陽の暖かさと風のさわやかさが一緒になって彼の心に欲望をかき立てる。もう少しで彼女を馬の背から引きずり下ろして、木々の下の、草のベッドに横たえそうになった。
 リチャードはデボラをいっそう強く引き寄せた。やさしく背中をなで下ろし、乗馬服に包まれた体のあらゆる曲線をなぞっていく。女性にこれほど欲望をかき立てられたことはない。今腕に抱いている女性以外のすべてを忘れる、こんな気持ちもはじめてだ。デボラが柔らかくて敏感な体を彼に押しつけ、絡み合う舌の感触に小さなため息をついたとき、彼は抵抗する力を失った。
 二頭の馬が身動きして離れた。リチャードはしぶしぶデボラを解放した。彼女を見つめたまま体を起こす。デボラは一瞬、完全にぼうっとしているようだった。彼女の自己防衛をここまで突き崩したことに、リチャードは激しい喜びを覚えた。そのとき彼女が突然怒りだした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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