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ティアラは世継ぎのために

ティアラは世継ぎのために


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・ケンドリック(Sharon Kendrick)
 ウエストロンドン生まれ。写真家、看護師、オーストラリアの砂漠での救急車の運転手、改装した二階建てバスで料理をしながらのヨーロッパ巡りなど、多くの職業を経験する。それでも、作家がこれまでで最高の職業だと語る。医師の夫をモデルにすることもある小説のヒーロー作りの合間に、料理や読書、観劇、アメリカのウエストコースト・ミュージック、娘や息子との会話を楽しんでいる。

解説

私は世継ぎを産むための器。それが大公妃のティアラに隠された真実。

地中海の公国の君主ルチアーノと2年ぶりに再会したとき、リサはわが目を疑った。ベッドの相手でしかなかった私に、今さらなんの用が?厚かましくも、ルチアーノはリサをまた誘惑する気でいた。そして怒りを覚えながらも……彼女は一夜をともにしてしまう。しかし関係をやり直す気どころか、彼は許嫁である隣国の王女と結婚する前に、リサと楽しみたかっただけだった。なんて傲慢な人。涙ながらに、リサは彼を追い出す。だが彼女の妊娠を知るなり、ルチアーノはふたたび現れた。

■R−3214『富豪が拾ったウエイトレス』の関連作をお届けします。再会した恋人ルチアーノの子供を妊娠したリサ。しかし彼は一国の支配者として、自分の跡を継ぐ存在を求めていました。その結果、リサは愛されぬ妃という、つらい立場に追いやられ……。

抄録

 ルチアーノはうわの空で携帯電話を見ていたが、やがて聞こえてきた規則的な息づかいでリサが眠ったのに気づいた。
 指一本触れずに、彼女の隣に座っているのは拷問だった。ドレスの中に手を入れることしか考えられないのだから当然だ。
 車の中でずっと黙っていたルチアーノは、ロンドン郊外に差しかかって初めて窓から周囲の景色を眺めた。街はまだにぎやかだ。彼は身を乗り出し、運転手に小声でリサの住所を告げた。
「途中で降りますか?」運転手がきいた。
 ルチアーノは腕時計を見た。もう終わりにしてリサから離れたい気もしたが、誰もいない車内で彼女を目覚めさせるわけにもいかない。リサはそんな扱いにふさわしい女性ではない。
 ルチアーノの額のしわが深くなった。リサは一度も僕を困らせなかった。マスコミに話を流したり、王族とのつながりを作るために利用したりもしなかった。
「いや、先に彼女の家に行ってくれ」
 車が方向を変え、見知らぬ地区の薄暗い道に入っていったとき、ルチアーノは驚いた。
 舗道にはごみが散乱し、不機嫌そうな若者のグループが街灯の下で煙草を吸っている。彼女が以前住んでいた、ごく普通だがきちんとしたフラットを思い出し、ルチアーノは眉をひそめた。こんなところに住むとは、リサはどういうつもりだ?
 車がなめらかにとまると、ルチアーノは手を伸ばして、そっとリサを揺すった。「起きるんだ、リサ。家に着いたぞ」
 リサは目を開けたくなかった。夢の中ではまだルチアーノの腕に抱かれ、キスをされようとしていたからだ。しかし耳に入る声は無視できないほどしつこく、まぶたを持ちあげた彼女は、自分の上に身を乗り出している大公に気づいた。その顔は影になっていて、よく見えなかった。
 混乱しながらも、リサは起きあがってあたりを見まわした。家に帰ってきたのだ……帰りたくなかったのに。頭がぼうっとしたまま、身をかがめて靴をはき、銀のクラッチバッグを持つ。「ありがとう」
「君はここに住んでいるのか?」
 リサはその声にとまどいを感じたものの、すぐにわけを理解した。豪奢な生活を送るルチアーノは、こういう貧困地区に足を踏み入れたことがないに違いない。
 一瞬、住んでいるのは自宅を改装する間だけだと言いそうになったけれども、その嘘をのみこんだ。自分が何者で、どういう暮らしをしているのかを、なぜ恥じなくてはならないの?
「ええ」彼女はまだ眠そうな声で答えた。「ここに住んでいるの」
「引っ越したのか? なぜだ?」
「ブリタニーに赤ちゃんが生まれたと言ったでしょう。三人はとても狭いフラットで暮らしていたの。それで……」リサは肩をすくめた。「住まいを交換したのよ。理にかなっているでしょう? もう少しいいところに住むつもりではいるの。いつか――」
「店が軌道に乗ったらか?」ルチアーノがすかさずきいた。
「そうよ」リサは早口すぎるくらい早口で答えた。「とにかく、パーティに連れていってくれてありがとう。新しい店の宣伝になることを期待しているわ。それに……あなたとも旧交を温められてよかった」
「ああ」二人の目が合った。「玄関まで送ろう」
「大丈夫、それには及ばないわ」リサはにっこりした。「もう大人だもの、ルチアーノ」
「議論するような問題じゃない」彼はそっけなく言った。「玄関まで送るよ」
 むき出しの腕を撫でる夜気はまだ暖かかかったが、ルチアーノが背後に立ったとき、リサは身震いをした。彼に送られるのが恥ずかしかったからではない。急に避けられない運命を悟り、本当の別れが近づいていると気づいたからだ。
 リサはハンドバッグから鍵を出し、ぎこちない手つきでドアを開けると、振り返ってルチアーノを見た。胸を締めつける、彼を失うという苦痛は隠せなかった。私はもう二度とルチアーノに会えないかもしれない。彼のそばで楽しい思いをすることも、触れられて甘美なひとときを味わうこともなくなるのだ。
 なぜ私はルチアーノとの関係を終わりにするような、ばかなまねをしているのかしら? 大公である恋人が自分から終わりにするまで、どうしてできるだけ時間を引き延ばさないの? 失恋の痛みから自分を守るためとはいえ、その代償ははかりしれない。
 リサはルチアーノの首に腕をまわし、爪先立ちになって唇に軽くキスをした。
「元気でね」彼女はささやいた。「おやすみなさい、ルチアーノ」
 口づけをされたせいで抑えつけていた欲望に火がつき、ルチアーノは凍りついた。砂漠に押し寄せる濁流のように、全身が熱くなっていくのがわかる。女性から男性にキスをするのははしたない行為で、僕はそういうことをされたくないはずだと、ルチアーノは自分に言い聞かせた。これまでの人生で欲望に負けたことはない。今さらつかの間の関係に走っても、いいことはなにもない。
 なのにリサの温かい体に誘惑されたように、喉は渇き、下腹部はこわばっている。なぜなら、予想外の出来事に遭遇したせいだ。リサにキスされるなど、あってはならなかった。やわらかく、それでいて刺激的で情熱的な約束にあふれる唇に、ルチアーノはベッドの中の彼女がどれほど奔放だったか、だが朝にはどれほど冷ややかだったかを思い出した。
 もう終わったことだ。
 そうでなくてはならない。
 それなら、どうして僕はリサの腕を振りほどき、エンジンをかけて待っているリムジンに戻らない? なぜ彼女を自宅へと押しやり、ドアを閉めてしまわない? しかし、体の奥深くから欲望のにじむ低いうめき声をあげ、ルチアーノはリサを壁に押しつけて唇を重ねた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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