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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクインSP文庫

早すぎた結婚

早すぎた結婚


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクインSP文庫
価格:400pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ルーシー・ゴードン(Lucy Gordon)
 雑誌記者として書くことを学び、ウォーレン・ベイティやリチャード・チェンバレン、ロジャー・ムーア、アレック・ギネス、ジョン・ギールグッドなど、世界の著名な男性たちにインタビューした経験を持つ。また、アフリカで野生のライオンがいるそばでキャンプをするなど、多くの貴重な体験をし、作品にもその体験が生かされている。ヴェネチアでの休暇中、街で出会った地元の男性と結婚。会って二日で婚約し、結婚して二十五年になる。二人は三匹の犬とともにイングランド中部に暮らしている。

解説

ミラノの高級ホテルの寝室で、リーヴァはショックに凍りついた。別居中の夫デミトリオが勝ち誇った顔をして待ち構えていたのだ。激しい恋に落ち結婚したものの、分かち合えたのは情熱だけ。やがて喧嘩が絶えなくなり、支配的な夫から逃げ出したのだった。いまデミトリオは、伯爵家の子息との結婚を願う妹のために理想の兄夫婦として体面を保つ必要があるので戻ってこいと言う。無条件に慕ってくれる義妹はリーヴァにとっても大切な存在。断ることなどできないと思う一方、元に戻ることもできない……。板挟みの彼女をいたぶるように、デミトリオは返事を迫った。

抄録

 リーヴァは体の底からわきあがってくる欲望を必死で振り払い、デミトリオから資料を受け取って目を通した。完璧な情報だわ! 最初の数行を読んだだけで、リーヴァは心の中で叫んでいた。スイス銀行のデントン名義の口座番号まで書いてある。リーヴァはそっとテーブルを離れ、植木の陰に身を隠しながら、小型カメラでデントンの姿をとらえた。
 リーヴァがテーブルに戻るのを待って、デミトリオが言った。「さっきの話の続きをして、かまわないかい?」彼の大きなてのひらがリーヴァの手に重ねられた。
「いいえ。このフィルムをイギリスへ送らないと」デミトリオから受け取った資料をバッグにしまいながら、リーヴァが言った。「ぐずぐずしている暇はないわ」
 デミトリオは不満そうにため息をもらしたが、リーヴァの先に立って車へ向かった。そして、車を運転しながら車内電話をかけ、それが終わると、言った。「僕のオフィスに部下を待たせてある。今夜じゅうにフィルムをイギリスへ届けさせるよ」
 デミトリオのオフィスへ行くと、リーヴァは待っていた男性にフィルムと新聞社の住所を手渡した。
「さて……」二人きりになると、デミトリオがつぶやいた。
「どこか、仕事ができる場所はない?」
 リーヴァに向かって両腕を広げようとしていたデミトリオの動きがぴたりととまった。「仕事って? 仕事はもう終わったじゃないか」
「すべて終わったわけじゃないわ。この資料をもとに、記事を書かなければならないの」
「でも、君の仕事は写真を撮ることだろう? 記事は別の人にまかせられないのか?」明らかに怒っている声だ。
「ほかの人にまかせるですって? 本気で言っているの? 私だって、文章は書けるわ」
「ああ、神よ!」デミトリオは天を仰いだ。が、すぐに気を取り直して言った。「わかった。僕のオフィスを使うといい」
 デミトリオのオフィスに入るなり、リーヴァは資料を熟読してメモをとり、デミトリオのコンピューターを使って記事を書きあげた。そして、夜がしらじらと明けるころ、イギリスに国際電話をかけた。「泊まりの編集者をお願い。おはよう、ビル。デントンを見つけたわ。もうすぐフィルムが届くはずよ。記事は今からファクシミリで送るわ。あっと驚くような内容よ。期待してて。じゃあね」
「ずいぶんと一方的にしゃべるんだね」オフィスの椅子に腰かけ、黙ってリーヴァを見守っていたデミトリオが言った。皮肉っぽい言い方だった。
「そう? 別にかまわないでしょう? 仕事をやりおえたのは私よ。編集者は黙って聞いていれば、それでいいの。ファクシミリはどうやって使うの? いいわ、自分でやってみるから。大丈夫、簡単よ」
「それはありがたい」
「こんな特だねをものにしたのは、生まれて初めてよ」リーヴァが歌うように言った。「ほんとうに、あなたのおかげだわ。心配しないで。社にかけあって、あなたにも謝礼を出してもらうようにするから。雀の涙みたいなものだけれど――」
 リーヴァをさえぎるように、デミトリオが強い調子で言った。「この件に関して、僕の名前を出すのはやめてもらいたい。正気かい? 君がちょっとした記事を書いたからといって、僕は謝礼など期待していない」
 リーヴァは、“ちょっとした記事”という言い方がどうにも我慢ならなかった。「四〇〇万部も売れている新聞なのよ。ちょっとした記事なんかじゃないわ」
「小物のささいなスキャンダルをすっぱ抜いただけだろう?」
「デントンは小物なんかじゃないわ」
「僕にとっては小物だ」
「だったら、どうして私に協力してくれたの?」
「君を喜ばせたかったからさ」
「なによ、保護者ぶって……」デミトリオのファクシミリを使わせてもらわなければならないことを思い出し、リーヴァはぐっと言葉をのみこんだ。
 デミトリオは、リーヴァが怒りも忘れて思わず見とれてしまいそうなほほえみを浮かべた。「正解だよ。文句を言うのは、記事を送ってからにしたほうがよさそうだ」彼はからかうように言った。
「そうさせてもらうわ」リーヴァはつんと顎を突き出した。
 ファクシミリを送りおえたリーヴァは、謎めいた表情で自分を見つめているデミトリオに気づいた。口元にかすかに笑みをたたえながら、訴えるような、誘うような目をしてリーヴァを見ている。リーヴァはデミトリオに対する反感が嘘のように消え去るのを感じた。それどころか、体が熱くうずいている……。何時間も必死になってデントンの記事を書いたりして、私はいったいどういうつもりだったのだろう? ほんとうに欲しいのは、この目の前の男性の抱擁だというのに。リーヴァはデミトリオの腕の中に吸いこまれるようにとびこんでいった。
 おたがいの唇が触れ合っただけで、リーヴァの体は燃えあがった。キスだけでこんな狂おしい気持ちになるなんて……。リーヴァは自分の反応に驚いた。が、次の瞬間には、激しくむさぼるように、自分からデミトリオの唇を求めていた。キスだけではたりない……。彼だって、私を求めているはずよ。こんなに胸が高鳴っているんだもの。それに、てのひらや唇の動きを見れば危険なほどの高まりがわかる。
 電話のベルが鳴り、リーヴァは現実に引き戻された。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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