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さよならジェーン

さよならジェーン


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

「ジェーン? 大丈夫かい? 」悪夢から覚めると愛しい夫の姿があった。夢のなかで迫りくるモーターボートのスクリュー、生々しい激痛の記憶……。幼いころの悲劇を乗り越え、彫刻家として名を上げたジェーンはハンサムな医師と恋に落ち結婚した。そして今、お腹には待望の赤ちゃんがいる。人生はまさに順風満帆だった“ボートの男”が再び現れ、彼女のすべてをおびやかすまでは。異色の作家が愛と狂気の狭間を描く傑出ロマンティック・サスペンス。
 ★めくるめく展開と巧みな罠、徹夜必至の一冊!! ★

抄録

 面会室を出ると、エルトンが待っていた。「ニュースがある」彼は言った。「起訴状が提示された」
 ジェーンは身構えた。「それは悪いニュースなんでしょう?」
「残念ながら。君のご主人は特殊事情つきの死に値する殺人で起訴された。州は死刑を求刑するつもりらしい」

二〇〇三年十月二十三日 木曜日
午後十一時五分

 電話のベルがジェーンを深い眠りから呼び覚ました。彼女はふとまぶたを開けた。一瞬、以前の生活に戻った気がした。かたわらにイアンが眠り、おなかの中では二人の初めての子供が眠る幸せな日々に。
 次の瞬間、現実が襲ってきた。二つの殺人事件。イアンの逮捕。メッセージが書きなぐられた切り抜き。
“あれは事故じゃない。おまえの悲鳴を聞くためにしたことだ”
 再び電話が鳴った。ジェーンはナイトテーブルに置いてあったコードレス電話をつかんだ。「もしもし」眠気の残る声で答えた。
「ミセス・ウェストブルック?」
「そうですけど」
「『ダラス・モーニングニュース』のトリシュ・ダニエルズといいます。ご主人の逮捕についてコメントをいただけますか?」
 ジェーンの眠気が吹き飛んだ。「いま何時だと思ってるんです?」
「夜分に申し訳ないとは思いますが――」
「いいえ」ジェーンの声がうわずった。「コメントがほしければ、主人の弁護士のエルトン・クレインに連絡してください」
「テリー・ストックトン検事は死刑を求刑するつもりだとか。ぜひコメントを――」
 ジェーンは電話を切り、怒りに任せて受話器を投げやった。受話器は化粧だんすにぶつかり、蓋《ふた》がはずれて、バッテリーパックがこぼれ落ちた。
 こうなる可能性についてはエルトンからも警告されていた。今回の連続殺人事件は大々的に報じられていたからだ。ハンサムな形成外科医とアーティストとしてそこそこに名の売れた妻。妻は悲劇を乗り越え、ようやく名声と真実の愛をつかんだところだった。警察側が描くシナリオにもマスコミや大衆が飛びつきそうな要素があふれていた。セックス。裏切り。欲望。殺人。
 考えただけでも胸が悪くなるわ。マスコミが私の妊娠を知らないのがせめてもの救いね。でも、マスコミはいつか必ず嗅《か》ぎつける。そして、それを利用する。
 ジェーンはベッドから上体を起こした。顔にかかる髪を押しやりながら、エルトンのアドバイスを思い返した。マスコミには情け容赦のない連中もいる。夜討ち朝駆け、待ち伏せも覚悟しておくように。
 君はノーコメントで通し、私の名前を出しなさい。とにかくいまは沈黙を貫くことだ。マスコミに出回る情報は少なければ少ないほどいい。タイミングを見計らって、こちらが報じてほしい情報をもらしてやろう。
 ジェーンは弁護士の話を誇張だと考えていた。取材を受けても冷静に対処できるつもりでいた。
 だが、その考えは甘かった。今日の午後、自宅に戻ってみると、記者たちが待ち受けていた。電話は昼も夜も鳴りっぱなしだった。一人一人の記者に“ノーコメント”と答えるたびに、本音をぶちまけたい衝動が募った。イアンの無実を訴えたい衝動が増していった。
 彼女はその衝動に耐えた。イアンに不利に働いたらと思うと、うかつなことは言えなかった。
 月曜日の罪状認否が終われば、取材攻勢も落ち着くだろう、とエルトンは言った。イアンの名前は表舞台から消え、マスコミは次の獲物を探しはじめるだろうと。
 ジェーンはベッドを出た。レンジャーをまたぎ、裸足《はだし》のまま浴室へ向かった。なんだか気持が悪いわ。おなかも痛いし。彼女は眉をひそめた。妊娠初期にはよくあることなのかしら?そういえば、せっかく妊婦の入門書を買ったのに、まだページも開いていない。あの本を買ったときの浮き浮きとした気分。遠い昔のことみたいだわ。
 あれからまだ一週間もたっていないのに。
 ジェーンは洗面台の前に立ち、グラスに水をついだ。その水を飲んでいたとき、ふと鏡の中の自分に目が留まった。青ざめた顔。落ちくぼんだ頬。目の下のくま。疲労困憊《ひろうこんぱい》って感じね。
 体を休めなきゃ。妊婦には休養が必要なのよ。くたくたに疲れた状態でイアンの力になれると思う?私が入院してしまったら、イアンはどうなると思う?
 でも、いまの私がどれだけイアンの役に立っているというの?
 彼女は水を飲み干し、照明を消した。ベッドに戻る途中で足が止まった。逮捕された夜、イアンは警察にオフィスを捜索されたと言ったわ。コンピュータと予約リストと患者のファイルの一部を持っていかれたと。
 警察は何を捜していたのかしら?
 警察はイアンがエル・ヴァンメアと浮気をしていたと思いこんでいる。イアンは経済的に困っていた。妻に浮気をばらすと脅され、妻の財産を失うことを恐れて、浮気相手を殺した。そして、口封じのためにマーシャまで殺害した。そう思いこんでいる。
 ジェーンは手のひらでまぶたを押さえた。なんとか客観的に考えようとした。警察の言い分なんて気にしちゃだめよ。気にしたら、私の負け。私は負けるわけにはいかないの。冷静さを保たなければならないの。
 警察は証拠固めをしているのよ。だから、イアンの財務記録を調べた。だから、浮気の証拠を求めて、通信記録と予約リストと患者のファイルの一部を押さえた。
 でも、彼らが見落としたものもあるんじゃないかしら?イアンの無実を示す何か。彼らはそんなものは捜していなかった。捜していないものが見つかるわけがないわ。
 でも、それは何?どこを捜せば見つかるの?ジェーンは目を細めて考えた。情報はすべてコンピュータに入力されていたはずよ。警察が押収したコンピュータに。
 コンピュータ。それだわ。
 新しいオフィスに移ったとき、マーシャがCDにバックアップ・データを取ったじゃないの。コンピュータのハードドライブが故障した場合に備えて。
 賭《か》けてもいいわ。CDはまだあそこにある。
 ジェーンはジーンズとセーターに着替えた。彼女を目で追っていたレンジャーが立ち上がり、キッチンまでついてきた。ジェーンはバッグとキーホルダーを手に取り、愛犬を見下ろした。
「今回はお留守番よ。ごめんね、レンジャー」
 レンジャーは抗議するかのように低くうなった。ジェーンは眉をひそめ、暗い窓の外に目をやった。
“あれは事故じゃない。おまえの悲鳴を聞くためにしたことだ”
 あの男がすぐそこにいるかもしれない。私を見張り、待ち伏せしているかもしれない。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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