マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクション恋愛小説ロマンス小説

流れ星に祈って

流れ星に祈って


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆4
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


解説

 夫と子供のいる温かい家庭がほしい――サラのささやかな夢は、皮肉にも親友ダイアンの存在によってついえた。密かにサラが想いを寄せていた上司、エリート重役のロウムは、サラが紹介したダイアンと一目で恋に落ちた。5カ月後に彼らは結婚、二人の息子に恵まれ、今まさにサラが夢見たような幸せな家庭を築いている。一方のサラはロウムへの憧れを胸の奥に封印して、仕事に生きる決心をするしかなかった。だがその矢先、悲惨な事故がロウムの家族を襲った。ダイアンと子供たちは亡くなり、ロウムは絶望の淵に突き落とされる……。
 ★禁じられた恋、それは苦しいほどに甘美な結末へのプロローグ。大ベストセラー作家リンダ・ハワードの原点、本格ロマンスの真骨頂! ★

抄録

「ゆうべのことは、すまなかった」ロウムは唐突に口を開いた。「きみに言ったひどい言葉のことは謝るよ。だけど、キスをしたこと、きみをもう少しで抱こうとしたことは謝らない」
 サラはロウムの情熱的な目から視線をそらした。「もういいの。二人とも――」
「どうかしていた。そのとおりだよ」ロウムがかすかな苦笑を浮かべてサラをさえぎった。「だが、どうかしていようがいまいが、二度目にキスをしたのはぼくの意思だ。ぼくはきみにキスがしたかったんだ。ゆうべの暴言を許してもらえるなら、これからときどき夕食につき合ってくれないか?」
 サラは舌で唇を湿した。彼女のなかの一部は、ロウムとすごせるならどんな機会にでも飛びつきたがっている。でも一方には、警戒し、傷つくことを恐れている自分もいた。
「そういうことは、しないほうがいいんじゃないかしら」やっとのことで、とぎれとぎれに答えた。「ダイアンが……ダイアンのことが忘れられないもの」
 苦悩がロウムの目を暗くした。「ぼくだって同じだ。でも、ぼくはダイアンと一緒に墓のなかで暮らすことはできない。生きていかなくてはならないんだ。ぼくはきみに惹《ひ》かれている。正直に言うと、ずっと前から」ロウムは興奮を抑えようとするように前髪をかき上げた。「どう言ったらいいんだろうな。ゆうべ、ぼくははじめてダイアンや子どもたちのことを口にできた。きみはぼくの家族を知っていた。だから、わかってくれると思った。ずっと心のなかにしまいこんでいたことを、やっときみに話せた。頼むよ、サラ。きみはダイアンの友人だった。今度は、ぼくの友人になってくれ」

 サラは息を止めて、ただロウムを見つめていた。なんという皮肉だろう。長いあいだひそかに愛しつづけてきた男性が、こうしてわたしに友情を求めている。死んだ妻のことを、わたしになら話せるという理由で。いまはじめて、サラはダイアンを恨めしいと思った。ダイアンが、死んでもなおしっかりとロウムの心をつかんでいることが恨めしかった。だが、どうしていやと言えるだろう。必死の形相でこちらを見つめているロウムにむかって。たとえどんな願いであれ、ロウムにいやとは言えない。胸が痛むけれど、それが真実だ。
「いいわ」つぶやくように、サラは答えた。
 ロウムはしばらくじっと座っていたが、やがてほっとしたように目を閉じた。もしサラに拒否されたら、どうなっていただろう。ある意味で、それは想像もつかないことだった。いまのロウムにとって、サラに無視されるのは命綱を断たれるようなものだ。サラはダイアンを思いださせる最後のきずなだが、いまはそれ以上の意味がある。昨夜、ついにサラの冷たい壁を突き崩した。もう一度、昨夜のようなサラを見たい。自分の愛撫《あいぶ》で情熱的に燃え上がるサラを想像するだけで、下腹部が熱くなっていく。
 あわててロウムは気をまぎらわそうと、部屋を見まわした。そして、ふたたび驚きを感じた。想像していたようなガラスやクロームを使った家具は一つもなく、温かみのある質感と柔らかな色合いに満ちている。椅子はどれもがっしりしていてクッションがよくきき、疲れたからだを心地よく迎えてくれそうだ。ロウムは、彼の長い脚もはみださずにすみそうな広々としたソファに寝そべってみたくなった。のんびりとテレビで野球を見ながら、缶ビールを片手にポップコーンを食べてみたい気がする。サラの部屋は、それほど居心地がよかった。そう、ここは文字どおりサラがあのすばらしい髪を下ろしていられる場所なのだ。仕事のときには小さくまとめてアップにしているので気づかなかったが、こうして下ろしていると、サラの髪にはわずかにウェーブがかかっていて、軽くはねた毛先が白っぽく見える。ほんとうに色の薄い金髪なのだ。
「この部屋が気に入ったよ」ロウムはサラに視線を戻して言った。
 サラは落ち着かない気持ちで部屋を見まわした。いままで自分の性格をずいぶんいつわってきたことが、すっかりわかってしまいそうだ。サラはここを、両親の家にはなかった温かさと安心感の感じられる家にしようと努力してきた。両親の家には、金銭的にはなんの不安もなかったが、ひどく寒々とした空気が漂っていた。莫大《ばくだい》な費用を使ってインテリアデザイナーに完璧《かんぺき》な装飾をしてもらった家だけれど、その空気の冷たさにサラは震え、子どもながらになんとかして家を出る口実を探したものだった。愛のない結婚をし、子どものためだけに夫婦という体面を保っていた父と母の険悪さが家の空気を冷たくし、温かみのかけらも笑いもない家にしていたのだ。サラが大学に入ったわずか数週間後に両親は離婚し、やっと三人は気づまりな状態から解放された。そのときから、サラと両親との距離は以前にもまして広がってしまった。母は再婚してバミューダに住んでいるし、父もやはり再婚してシアトルへ行ってしまった。五十七歳の父はいま、六歳の息子を溺愛《できあい》している。
 温かな家庭の雰囲気というものを、サラはダイアンを通してしか知らない。はじめはダイアンが両親とともに暮らしていた家で、つぎにはダイアンがロウムとともに作った家庭で、それを味わった。ダイアンには、人を引きつけずにはおかない温かさがあった。ダイアンといるときだけは、サラも笑ったり軽口を叩《たた》いたりと、ふつうの若い娘らしいことができた。でも、もうダイアンはいない。ロウムに対するこの思いに、ダイアンが死ぬまで気づかなかったことだけが、せめてもの救いだ。そう考えたとき、サラの胸に苦い思いがこみ上げた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。