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億万長者が愛したナニー ディ・シオーネの宝石たち 6

億万長者が愛したナニー ディ・シオーネの宝石たち 6


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンスディ・シオーネの宝石たち
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイト・ヒューイット(Kate Hewitt)
 アメリカ、ペンシルバニア州で育つ。大学で演劇を学び、劇場での仕事に就こうと移ったニューヨークで兄の幼なじみと出会い結婚した。その後、イギリスに渡り六年間を過ごす。雑誌に短編を書いたのがきっかけで執筆を始め、長編や連載小説も手がけている。読書、旅行、編みものが趣味。現在はコネチカット州に夫と三人の子供と住む。

解説

彼女の凍てついた心を甦らせたのは、皮肉にも愛を拒む億万長者だった。

7年前に起きた悲劇のせいで長らく引きこもっていたナタリアは、最愛の祖父がかつて手放した家宝の詩集を取り戻すため、勇気を振り絞ってギリシアへ飛んだ。だが、詩集の持ち主の億万長者アンゲロスと対面するなり、彼の幼い娘のナニー志願者と決めつけられ、雇われてしまう。正体を偽ったまま屋敷で暮らし始めたナタリアは、娘にも冷淡で人を寄せつけようとしないアンゲロスにしだいに惹かれていく。ある嵐の夜、ついに彼女は想いを抑えきれず彼の胸に飛びこむが、もう誰も愛さないと、にべもなくはねつけられて……。

■イタリア名門一族の華麗なロマンスを描く〈ディ・シオーネの宝石たち〉第6話をお贈りします。すべての愛を拒むギリシア人億万長者を愛してしまったヒロイン。想いが届く日は来るのでしょうか?

抄録

「遅刻だ」
「ごめんなさい。部屋がわからなくて」
 タリアの服装に気づいて、アンゲロスのしかめっ面がさらにひどくなった。「着替えていないじゃないか」
「いえ、着替えました。洗って、また着たんです」どういうわけかタリアは赤面し、それをごまかすために、くるりと回ってみせた。「わかるかしら?」すると、彼のしかめっ面が険悪な形相に変わった。
 アンゲロスはグレーのビジネススーツから、白いシャツと濃い色のズボンに着替えていた。ふつうなら退屈に思えるような装いだ。けれども、たくましい体を包むシャツとズボンは、タリアの視線をその広い肩と引きしまった腰、力強い腿に引きつけた。
 タリアは無理やり筋肉質の体から目をそらし、ベルベット張りの椅子と二人分の食器が用意された巨大なテーブルを見た。「ソフィアは同席しないんですか?」
「サンドレスを洗ったって?」信じられないと言わんばかりにアンゲロスがきき返した。
 タリアは顎を上げた。「ごめんなさい、イブニングドレスの着用が必要だなんて知らなくて」テーブルの一方の端に向かい、椅子の背に手を置く。「ソフィアはどこに?」
「あの子はマリアと一緒に食事をしている」
「いつもそうなんですか?」
 アンゲロスがテーブルを回ってタリアの椅子を引いた。「今後、君が望むならあの子と夕食をとってもいい。だが、今夜は君と二人きりで話をしたかった」
「そうですか」アンゲロスが椅子を押さえて待っているので、タリアは腰を下ろし、アフターシェーブローションのウッディな香りを吸い込んだ。彼が椅子を押したとき、二人の顔が近づいた。腕に鳥肌が立ち、タリアは身震いしたい衝動を抑えた。そして、彼の顎はどんな感触なのかと考えた。髭を剃ったばかりの顔はなめらかだろうか、それとも少しちくちくするだろうか。
 アンゲロスはテーブルを回って向かい側に座ると、ナプキンをぱっと振って広げ、膝にかけた。タリアも同じことをした。祖父の屋敷はここ以上に広大で豪奢だが、それでもアンゲロス・メナの自宅とその存在感に圧倒されていた。これまでタリアはキッチンか、アトリエで食事をとることが多かった。祖父と一緒のときには、ラジオを聴きながら、あるいはテレビを見ながら静かに食事をする。最後にディナーパーティに出席したのは……いつだったか思い出せない。兄や姉とクリスマスや感謝祭の食事をともにするときも、この男性と二人きりの食事ほど仰々しさを感じなかったし、おじけづくこともなかった。
 マリアが最初の料理を持って現れた。肉厚のトマトとスライスした胡瓜にフェタチーズを散らしたサラダだ。タリアはサラダを食べながらこっそりアンゲロスを観察した。私の調査が間違っていなければ、この男性は貴重な詩集の所有者で、同じ無名の詩人による別の本を競り落としていた。インターネットで稀少本を捜す掲示板に行き当たったタリアは、そこでたまたまある書き込みを見つけた。投稿者はアンゲロスの――少なくとも〈メナ・コンサルタント〉のために動いている代理人だった。あとはアンゲロスが本当に詩集を持っていることを祈るばかりだ。
 苦労してここまで来たのに、無駄足だったらどうするの?
「それで、あなたとソフィアはここに住んでいるんですか?」タリアは尋ねた。
「ソフィアはここに住んでいる。僕は出張が多い。実を言うと、明日には発つ予定だ」
 彼は私が滞在する四週間、ずっとここにいるわけではないということ? そう考えてタリアはほっとした。同時に、ソフィアのためを思い、失望の痛みを感じた。
「あのくらいの年齢の女の子にとって、ここは少し寂しくないでしょうか?」
「ソフィアはそのほうが好きなんだ。教師が船でここに来て、勉強を教えている。それに、マリアやほかの使用人たちが話し相手になってくれる。もちろん今は君もいる」
「これまでナニーがいたのでは?」
「ああ。だが、長続きしたのは一人もいない」アンゲロスの口調は事務的で、その目は表情を閉ざしている。「今度こそうまくいくよう願っている」
「その人たちはどうして長続きしなかったのかしら?」タリアは好奇心に駆られて尋ねた。ソフィアは気むずかしい子供には見えない。それに、この場所はパラダイスだ。ナニーの職を求める人にとっては夢の仕事と言える。
 アンゲロスが肩をすくめた。「この環境が好みに合わなかったんだろう。君は質問ばかりだな、ミス・ディ・シオーネ。僕がこういう席を設けたのは、君に質問するためだったんだが」
 タリアは胡瓜をフォークで突き刺した。「だったら、質問をどうぞ」本心とは裏腹にのんきそうに言った。アンゲロス・メナにあれこれ探られたくなかった。どう答えればいいか見当もつかない。嘘をつくのはいやだが、今の時点では正直に答えるのもむずかしい。「でも、まずはタリアと呼んでください」
 アンゲロスの言葉を聞いたとき、タリアは口に入れた胡瓜を喉に詰まらせた。「いいだろう、タリア。僕が知りたいのは、君がアテネに来た理由だ。もっと明確に言えば、なぜ僕のオフィスに来たかだ。君はどう見てもナニーの職など求めていなかった」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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