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シチリアからの誘惑者【ハーレクインSP文庫版】

シチリアからの誘惑者【ハーレクインSP文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクインSP文庫
価格:400pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ミシェル・リード(Michelle Reid)
 1997年の日本デビュー以来たちまち人気を博し、ハーレクイン・ロマンスを代表する作家になる。五人きょうだいの末っ子として、マンチェスターで育った。現在は、仕事に忙しい夫と成人した二人の娘とともにチェシャーに住んでいる。読書とバレエが好きで、機会があればテニスも楽しむ。執筆を始めると、家族のことも忘れるほど熱中してしまうという。

解説

ジャンカルロは義兄が経営する会社の重役用ルームに入ると、若く美しい赤毛の女性に目をとめ、顔をしかめた。あれが社長秘書のナタリア・デイトン――義兄の愛人ともっぱらの噂で、僕の姉を苦しませている女か。鋭い視線に気づいたのか、そのときナタリアが振り向いた。青く魅惑的な彼女の瞳に、一瞬、呼吸すら忘れそうになる。ジャンカルロはそんな自分に腹を立てつつも、ほくそえんだ。不届きな愛人など金で追い払うつもりだったが、計画は変更だ。もっと愉しい方法で、彼女には罪を償ってもらおう。
*本書は、ハーレクイン文庫から既に配信されている作品のカバー替え版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ああ、知っているとも。ジャンカルロは胸の内でつぶやいた。おまえとエドワードの関係は知っている、痛い目にあわされないうちに早く義兄から手を引けと、本来ならここで言ってやるべきだ。実のところ、彼女をさっさと追い払うために、信じられない金額を書きこんだ小切手までポケットに忍ばせてある。
 しかし、小切手をとりだしはしなかった。彼女を無傷のまま追い払う気がうせたのだ。確かなものが欲しい。ひとつは彼女のひそやかな美しい体、そしてもうひとつは彼女の心の扉を開く鍵が。
 復讐、甘い復讐だ。ジャンカルロの体に流れるシチリア人の血は、良心のとがめを感じさせずに目的を正当化した。
「内緒で進めたのさ。二人には、ヒースロー空港へ出発する時間の直前に知らせた。エドワードが留守のあいだ、会社のことはぼくがロンドンに来て引き受けると安心させてね。なにせ時間がなかった。彼は抵抗する暇もなく、姉と一緒にバルバドス行きの飛行機に乗るよう、送られていったよ。船はバルバドスから出航するんだ」
「あなたの会社が持っている豪華客船のこと?」ナタリアの目がきらりと光った。ようやく事態がのみこめてきた。
 その目になまめかしさはないが、少なくとも恐れは消えている。「最高だと思わないか?」ジャンカルロはにっこりした。「ハネムーン・スイートにロイヤルデッキ。贅の限りを尽くしてある。二人を心配してくれてありがとう、ミス・デイトン。だが、ぼくだって心配している。二人があの悲劇を乗り越えられるよう、最善の手助けをするつもりだ」
 悲劇と聞いて、ナタリアが立ちあがった。今の言葉も効き目があったようだ。ジャンカルロは内心ほくそ笑んだ。彼女の瞳が陰りを帯びている。彼が見たいなまめかしさとは違う。これは罪悪感だ。なるほど、彼女にも良心はあるらしい。けれど罪悪感はやましいことがある証拠だ。
 やはり、最初の計画どおりここから追いだすべきだ! 急に怒りが募り、ジャンカルロの表情が険しくなった。突然の自動車事故でひとり息子を失った姉は、つらい日々を送った。アレグラの人生において、マルコは光り輝く存在だった。その光がかき消えたとき、彼女まで暗闇のなかで死ぬのではないかと、家族みんなが心配したほどだ。
 ところが、悲嘆に暮れた夫のほうは、妻の半分ほどの年齢の女に慰めを求めた。誇り高いシチリア人にとって許されざる罪だ。ジャンカルロはその場でナタリアを絞め殺したい衝動にかられた。
 そんなことを考えていた折、肩に彼女の手が触れて、彼は言いようもないほど驚いた。
「本当にお気の毒に」ナタリアがつぶやく。「エドワードから、あなたはマルコと仲がよかったと聞いています。ご家族は、さぞつらい思いをされたでしょうね」
 彼女はぼくの怒りを悲しみと間違えている。嫌悪感に鳥肌が立ちそうだ。
 嘘つきめ。ジャンカルロは即座に自分をあざ笑った。嫌悪ではなく快感に打ち震えているくせに。動悸が速くなる。彼女の目に、ついにあのなまめかしさがかいま見えたせいだ。最初の計画を実行する気は消えうせた。それより、彼女を味わいつくし、もっと満足を得たい。そのあとで、彼女にふさわしい場所へ追いだしてやろう。
 しかし、今の彼女にふさわしいのは乱れたベッドの上だ。そこに一糸まとわない姿で横たわる彼女の姿が見えるような気がした。彼の望むままにすべてを与えようと、あのすばらしい目をして誘っている姿が。
 復讐としてはそのほうがずっといい。ジャンカルロは決意した。復讐だと言い聞かせながらも、切れ者として知られる自分が燃えるような欲望に負けそうなのも自覚していた。
 もう気持ちを抑えるすべはない。「ありがとう」ジャンカルロは彼女の美しい口元に指をあて、低くつぶやいた。「わかってくれて」
 指の下でナタリアの唇が震えている。彼女の瞳の色が濃くなり、わずかに頬が染まった。ジャンカルロは引きこまれるように顔を下げ、楽園の唇を味わおうとした。
 いきなり彼女が身をよじった。あわてて彼から離れようとしたせいで、勢いあまって後ろへよろめき、さっきまで座っていた椅子に倒れそうになる。
 この場合、沈黙は金だと考え、ジャンカルロは何も言わなかった。その場の雰囲気を読めないのは愚か者だけだ。
 二人のあいだに安全と思える距離をとったナタリアは、どうにか気持ちを落ち着け、それからまっすぐに彼の目を見た。「エドワードはどのくらい留守にするんでしょう?」
 なんと冷静な声だ。ジャンカルロはこぼれそうになる笑みをこらえた。「六週間だ」きわめつきのショッキングな答えに彼女の美しい肌が青ざめる様子を、彼は見守った。
 これから六週間、彼女は自分の気持ちと闘うことになる。せいぜい一週間ともたないだろう。ぼくは欲望を隠すつもりはない。
 彼の瞳が強く訴えているものを理解したのか、ナタリアが顔を赤らめ、また目をそらした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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