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財閥富豪と孤独な聖母 しあわせの絆 I

財閥富豪と孤独な聖母 しあわせの絆 I


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュしあわせの絆
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

何より大切なおなかの子に、緊急事態が!支えてくれる家族もない孤独な聖母は……。

研修医のオリヴィアは亡夫の遺伝子を継ぐ子を人工授精で身ごもり、その大切な命とともにこれからの人生を歩んでいくつもりだった。しかし運命は残酷にも、彼女から心のよすがを奪おうとしていた。じつは手違いで、おなかの子が我が子でないことがわかったのだ!本当の親にこの子を奪われてしまうかもしれないなんて……。頼れる者もおらず、どうしようもない孤独感に沈んでいると、意外な人物に慰められ、オリヴィアは思わずときめきを覚えた――職場で女性スタッフらが熱い視線を送る美形ドクター、デイヴィッド。だが、彼が全米屈指の財閥出身だと密かに知る彼女は、我が身を戒めた。ただの同情を勘違いしてはだめ。これ以上辛いことに耐えられないから。

■知らぬ間に発生した受精卵の取り違えにより、我が子と思って愛おしんできた胎児の運命がどうなるかわからなくなり……。作家競作2部作〈しあわせの絆〉第1話は涙の感動作です!

抄録

 もの思いにふけっていて犬の託児所に着くまで気づかなかったけれど、見ればデイヴィッドがいつの間にか眠っていた。どこにいようと寝られるときに寝ておくことは重要だ。ほとんどの医者が、仕事を始めて早い段階でこの特技を身につける。眠っているデイヴィッドは若く見えた。自慢げな言動がない分、か弱げな印象だ。髭はやっぱりそらないとね、などとぼんやり考えながらも、唇がふっくらしていることや、今にも微笑みそうに見えることなどは極力意識しないようにした。
 揺り起こそうとしたところで彼が目をあけ、はっと警戒した様子を見せた。
「まずいな、君の話の途中で寝ちゃったか?」
「今日は何時間働いたの?」
「さあ。最後に家にいたのは昨日の朝だ。ゆうべは病院に泊まった。待機部屋で二時間寝たな。たしか二時から四時までだった」
「夜通し働いたの? 続けて昼間も? よくないわ。あなたにとっても患者にとってもよ」
 彼は片眉をゆがめた。「母親みたいな説教はよしてくれ。自分の限界はわかっている。二時間きっちり寝ていれば、僕の場合は充分だ」
 母親みたい? 今、母親みたいって言った?
「すぐ戻るから」オリヴィアは車を降りた。託児所から戻ってきたバウンサーは、自分の定位置に知らない人がいて驚いたようだが、デイヴィッドのほうはそのあいだにまた寝入ってしまっていた。
 いいよね、と言うようにオリヴィアを見てわんと吠えると、バウンサーは彼の膝に飛びのった。
「え、なんだ……?」ぱっと目を覚ましたデイヴィッドが押しやろうとするが、バウンサーは動かない。
「デイヴィッド、バウンサーよ。バウンサー、こちらはデイヴィッド」オリヴィアが首輪をつかんで引っ張っても犬は平然としている。困惑顔のデイヴィッドがむんずと抱え、膝からどかして後部に移した。
「そこでじっとしてろ」
 驚いたことに、いつもは餌でつったりなだめたりしてようやく言うことを聞くバウンサーが、デイヴィッドを見て、まばたきしてからその場に伏せた。
「いったいどうやったの?」
「毅然と命令すればいいんだ。同じだよ……」
 まさか、女子供と同じだなんて言うんじゃ……。
「その……馬と同じだ」彼は目を輝かせ、そしてあくびをひとつした。「また寝そうだ。いいかな?」
「いいわよ」オリヴィアは車を出した。自宅のある通りに入るころには、彼はもう眠っていた。
 車を止めるとバウンサーが飛び降りた。デイヴィッドも起きて眠そうにあたりを見まわす。
「どこで降ろしたらいい?」
「ここでいいよ」
「本当に? 家まで送らなくていいの? 早くちゃんと寝たほうがいいわよ」
 デイヴィッドはあくびを拳で隠した。「そうだな。実を言うと、厄介になってる友人夫婦の家なんだが、そこは子供が生まれたばかりなんだ。驚いたよ。小さな体であんなうるさい声が出せるのかってね。まあ引っ越すまでの我慢なんだが、問題はそれが三週間先だってことだ」片眉を上げる。「赤ん坊ってのは、日がたつとおとなしくなるのかな?」
「私は子供がいないし、甥も姪もいないから答えようがないわ」彼の意識の中で、自分は明らかに母親のカテゴリーに入れられている。面白くないのはどうしてなのか、オリヴィアはわからなかった。
 デイヴィッドがけだるそうに伸びをした。「だけど、ゆうべは病院にいてよかった。交通事故の患者の脳手術があったからね」車のドアをあけた。「恩に着るよ。残りは走って帰る。動いていれば眠気も飛ぶし、着くころにはちび助も眠ってるだろう。だが先に何か食っときたいなあ。僕の帰り道でどこか食べられる店は? なんてきいたって知らないか」
 オリヴィアはためらった。これ以上彼につき合いたくはない。でも、疲れきって腹ぺこな医者は見ればわかる。こちらがどんな感情を抱いていようと、彼は同僚だ。その同僚がオリヴィアと同じく腹を空かせている。早く睡眠もとらせてあげたい。
「実を言うと、この先にある店に食べに行くところなの」入り江のほうを示した。「よければいっしょにどう? 食事のあとは家まで送るわ」
「家で待ってる人は?」彼はとまどっている。
 答えるのが一瞬遅れた。リチャードが死んだことや彼の子を妊娠した事情をいちいち説明なんてしたくない。そんなわけで、今ではごまかし方もかなりうまくなっていた。「いないのよ、もう」
 探るような彼の目に、詳しくききたそうな気配を一瞬感じた。よけいな質問をしないで、とオリヴィアは視線を受け止めながら念を送った。気持ちが通じたのだろうか、知的な目にかろうじてわかる感情の揺らぎが見えた。そのあとに戻ってきたのは、もはやすっかり見慣れた感のある気だるい笑みだ。
 デイヴィッドはオリヴィアが示した方角に目をやった。「その店にステーキはあるかな? Tボーンステーキをやっつけたい気分なんだが」
 イメージどおりの肉好きらしい。そうでない彼など考えられない。
「ステーキはないけど、チキンパイが絶品よ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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