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後悔と真実

後悔と真実


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫ヒストリカル
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころから歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

 19人目の求婚者を断り、ポリーは憂鬱な気持ちで考えた。若く愚かだった5年前、わたしは親の言いなりだった。だからヘンリー卿への思いに胸を焦がしながらも、彼の熱烈な求愛に応えられず、駆け落ちを拒んだ。あのとき、もしも彼の胸に飛び込んでいく勇気があったら……。ヘンリー卿のほうも、あれからすっかり放蕩に溺れて、ひどく退廃的な生活を送っているという。わたしたち二人とも、そろそろ過去を清算しなければ。覚悟を固めたポリーは、舞踏会の夜、ある大胆な行動に出た。

抄録

 棚から一冊の本を抜き出そうと前かがみになったポリーは、同時に棚の反対側の本を選んだ誰かの眠たげな灰色の瞳と向き合うことになった。
「まあ!」ポリーは今まで選んだ本をすべて落として一歩あとずさりし、ふたりの婦人に、しいっときつくたしなめられた。向かいの紳士は書棚のこちら側に回ってくると、かがんでポリーの選んだ本を拾い、うやうやしく手渡した。
「こんにちは、レディ・ポリー」ヘンリー・マーチナイト卿が言った。
「いったいここでなにをしてらっしゃるの?」ポリーはほんの一時間前に、もう二度と彼とは口をきかないとひそかに決意したことも忘れ、いまいましげに言った。ヘンリー卿はその心惑わす灰色の瞳によく映える紫がかった灰色の上着の完璧《かんぺき》な装いだ。不意打ちを食った思いのポリーは不愉快だった。こんなことなら家にいればよかった!レディ・フィリップスの館《やかた》のテラスでの場面がまたよみがえってきて、彼女はさらに混乱した。こんなにすぐまた彼と顔を合わせなくてはならないなんて、なんと運が悪いんだろう。
 ヘンリー卿は脇《わき》に抱えた二冊の薄い本を手で示した。「あなたと同じように本を選んでいたんだよ」彼は穏やかに言った。「紳士だって気が向けば巡回図書館へ足を運ぶだろう!」
「確かに。ただ、わたしはまさかあなたが読書好きだとは……」ポリーはうろたえているせいで失礼なことを言ってしまったのに気づいて唇を噛《か》んだ。「ごめんなさい。わたしはただ、あなたはもっと別のことにいろいろ関心が……」彼女はまたも口ごもった。失敗を取り繕おうとして、さらに失敗を重ねてしまったではないか!
 ヘンリー卿はほほえんで、彼女に選んだ本を見せた。「それは驚かせて悪かった!ぼくが持っているのはコールリッジの『文学的自叙伝』とホメロスの著作だが、読むのは子供のころ以来かな!言っておくが、ぼくはあなたが思っているよりずっと博学なんだ!」
 ポリーは目の前の証拠に反論もできず、まばたきした。しかし、人生の目的はとことん楽しみ抜くことだと公言する男が、書物だけを友にひとり静かに過ごすなんて、なんだか奇妙に思える。
「元気になられたようでなによりだ」ヘンリー卿は滑らかに続けた。「ぼくはさっきまでレディ・ラウトレッジ主催のピクニックに出席していたんだが、あなたの義姉《あね》上が昨夜舞踏会から帰って以来、あなたのぐあいが悪いようなことをおっしゃっていたんでね。なにか食べたもの……あるいは飲んだもののせいかな?」
 ポリーはかっとして頬が赤くなるのを感じた。きのうの夜のこと、ヘンリー卿のけしからぬ振る舞いについては、もう思い出したくない。
「すっかり元気になりましたわ、ありがとうございます」彼女はむっとして言った。「では、ごきげんよう。わたしは今夜劇場へ行く予定なので、もう館へ帰らないと」
「じゃあブルック・ストリートまでお送りしよう」ヘンリー卿は礼儀正しく申し出た。
 彼がドアを開けてくれ、ポリーは明るい通りへ出た。彼の申し出を受けたい気もしたが、ポリーはまだ昨夜の自分の態度が恥ずかしくてたまらず、彼にそばにいられてはついそのことを思い出してしまう。彼女はヘンリー卿にほほえみかけたが、複雑な思いは隠しきれなかった。
「ありがとうございます。でも、けっこうですわ。小間使いがついていますし、館まではさほど遠くもありませんから」
「がっかりだな」ヘンリー卿はポリーの言葉など聞こえなかったかのように、彼女の隣へ来た。「もっとお互いを理解しようと約束したのに。一緒にいることを拒まれたのでは、どうやって理解に達すればいいのかな?」
「お互いを理解しようと約束した?」ポリーは立ち止まってヘンリー卿を見上げた。夏の風が彼の豊かなブロンドの髪を乱し、ポリーはふいにその髪に触れたいという衝動に駆られた。自分がじっと彼を見つめていたことに気づき、ポリーは慌ててまた歩き出した。
「そうだとも」いつの間にかヘンリー卿はポリーの腕を取っていた。ここで彼の手を振りほどくのは、不作法な気がした。「ぼくたちは友だちになるんだろう?きのうの夜、あなたがそう提案したんじゃないか!」
「友だち!」ポリーがショックによろめきそうになると、彼女の腕を支えるヘンリー卿の手に一瞬力がこもり、いまだ知らぬ甘美な感覚が彼女の体を走り抜けた。
「そうさ、あなただってもちろん覚えているだろう!ぼくたちはテラスで――」
「ええ!」ポリーはかん高い声で答えた。ヘンリー卿はあの恥ずかしい場面のすべてを彼女に思い出させようとしているに違いない。彼女は深いため息をついた。「もちろん、あのときの会話は覚えています。でも、あなたはわたしの提案に興味を示さなかったという、はっきりした印象が残っているんですけれど!」
 ヘンリー卿は振り返ってポリーを見た。彼はなんとも思わせぶりな表情を浮かべていた。「あなたに対するぼくの反応が……好意的でなかったと?」
 ポリーは怒りに赤くなった。「ええ、そのとおりよ!強引で無礼で、好意的というのにはほど遠かったわ!」
 ヘンリー卿は肩を震わせ、笑いをこらえている。「なんとまあ、情け容赦のない言い方だ!ぼくと一緒にいるのがそんなにいやかな?」
 ポリーの心はふたつに引き裂かれた。慎《つつ》ましくあるためにはここで嘘《うそ》をつくべきだが、彼女は珍しいほど正直な娘に育てられていた。
「あなたの態度は紳士にふさわしくなかったわ!」
「本当にそうだ!」ヘンリー卿はほほえんだ。「でも、あのときはあなたの提案にびっくりしたんだよ、レディ・ポリー。ぼくはぜひあなたとの友情を深めたいと願っている。昨夜の出会いでますますその気持ちが高まったんだ!」
 ふたりはブルック・ストリートにたどり着き、なんと答えていいかわからずにいたポリーはほっとした。ヘンリー卿は彼女の手にキスした。
「ぼくの学識をさらに確かめたいと思うなら、セントジェームズ・スクエアのわが家へ訪ねてきてほしい。自慢の美術品のコレクションを、ぜひあなたにも見てもらいたいと……」彼はいたずらっぽい目になった。「それとも、ぼくの博識と趣味のよさはもう納得してもらえたかな?」
「それは納得しました」ポリーは吹き出しそうになりながらも、なんとか真顔を保った。「では、ごきげんよう!」
 美術品のコレクションですって!ヘンリー卿の冗談交じりの招待の意味を考え、ポリーは少し赤くなった。わたしのことを、そんな手にまんまと引っかかるうぶな娘だと思っているのね!ヘンリー卿は一度挑発的な目で振り返っただけで、にやにやしながら通りを去っていった。ポリーは彼の後ろ姿を見つめていたことに気づかれてしまっただろうかと気になった。
「魅力的な紳士ですね」ジェシーがポリーの肩越しにヘンリー卿を見て言った。「そして危険な人!お嬢様もお気をつけにならないと!」
 まったく同じことを考えていたポリーは、なに食わぬ顔で振り返った。「あら、ばかなことを言わないで、ジェシー!ヘンリー卿なんてただの浮気男よ!」
「浮気男!」ジェシーは怒った顔だ。「はっきり言って名うての放蕩者《ほうとうもの》でしょう!そんな方がお好みなんですか!」
 ポリーはあえて答えなかった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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