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銀の瞳の公爵

銀の瞳の公爵


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 レベッカ・ウインターズ(Rebecca Winters)
 アメリカの作家。十七歳のときフランス語を学ぶためスイスの寄宿学校に入り、さまざまな国籍の少女たちと出会った。これが世界を知るきっかけとなる。帰国後大学で、多数の外国語や歴史を学び、フランス語と歴史の教師になった。ユタ州ソルトレイクシティに住み、四人の子供を育てながら執筆活動を開始。これまでに数々の賞を受けたベテラン作家である。

解説

置き去りにされたあの日からずっと、心は彼の思い出にしがみついたまま……。

イタリア公爵の跡継ぎヴィンチェンツォと公爵家の使用人の娘ジェンマ。身分違いの恋とは知りながら将来を誓い合った二人だったが、ある夜突然、ヴィンチェンツォはさよならも言わずに姿を消した。息子の失踪に怒り狂った父公爵に母娘ともども城から追い出され、ジェンマは愛しの人と住む場所を一度に失った悲しみに苛まれた。10年後、公爵が他界し、城がさる実業家に買収されると知り、過去にけじめをつけるために、彼女はあえて城の求人に応募する。すると驚くべきことに、実業家の正体は……ヴィンチェンツォだった! 彼の銀の瞳に再び心を奪われかけた瞬間、ジェンマは思い出した――母から繰り返し教えられた、愛は階級差を超えられないということを。

■相思相愛だったはずが一転、突然の別れを突きつけられた17歳のジェンマ。初恋にして最愛の人、ヴィンチェンツォの美しい銀色の瞳を忘れられずにもがいた10年――彼への怒りや悲しみ、名状しがたい複雑な思いに苦悩しました。彼が去った本当の理由とは? 

抄録

 開いているドアから紺と白のスーツに身を包んだ上品な女性の姿が見えた。ハニーブロンドの髪が肩にかかっている。デスクのそばでうつむいて立っているため、横顔はまだ見えない。
 ヴィンチェンツォはごくりと唾をのんだ。ジェンマはもうショートヘアの少女ではない。学校帰りに城の石段を駆け上がってくる制服姿の彼女を見慣れていたが、今は柔らかな曲線を持つ大人の女性だ。
「ジェンマ」しわがれた声になった。
 はっと息をのむ音がオフィスに響き、彼女が振り向いた。鮮やかなグリーンの忘れられない目がヴィンチェンツォをとらえ、固まったように動かない。彼女の手がぎこちなくデスクの端をつかんだ。
「ヴィンチェンツォ……私、幻を見ているのかしら」
「僕も同じ気持ちだ」あの夜にキスをした唇に目がとまった。記憶にあるとおりの形だ。美しい目鼻立ちも変わっていない。
 ジェンマは苦労して息を整えている。「どうして? 何がどうなっているの?」
「とにかく座って。話はそれからだ」彼女は震えている。座る様子がないので、ヴィンチェンツォは続けた。「いい考えがある。僕の車が表にとめてあるから、裏手の湖へ行って二人だけでゆっくり話そう。湖に着くころにはその震えもとまって、話ができるようになっているだろう」
 彼女の頬が赤くなった。「冗談でしょう。十年間連絡もしないでいきなり現れたあなたに、私が誘われるままついていくと本気で思っているの?」
 たとえ再会できても、怒りをぶつけられるのは覚悟していた。ただ、ここまで冷ややかな反応は予想していなかっただけに気持ちが萎えた。
「四日前に私は新しいホテルの求人に応募して、昨日、採用の連絡をもらった。そして今日はあなたが現れた。ものすごく奇妙な夢を見ている気分よ。夢の中で死んだあなたが生き返ったみたい」
 その言葉は今のヴィンチェンツォの心情そのものだった。「混乱しているのは君だけじゃない」過去に引き戻された気分だが、もう十代の自分たちとは違う。それに、怒っている彼女は美しかった。
「いつからミラノにいたの?」
「この半年、ニューヨークとここを行ったり来たりしている」
「ニューヨーク」彼女はつぶやき、打ちのめされたように顔をしかめた。
「ディーミから城が管財人の管理下に置かれたと聞いて、僕とニューヨークの友人二人はディーミと一緒に事業を起こし、城をホテルにすると決めた。先祖代々暮らしてきた場所だ。政府に奪われたり、外国企業に買収されたりするのは耐えられない」
「あなたの城よね、今の話が事実なら」
「僕の城だった、と言うべきかな。だが、それを話すと長くなる」
 ジェンマはかぶりを振った。「あなたの行き先を想像したわ。ヨーロッパに友だちがいるんだろうと思っていたけど、アメリカに行くなんて考えもしなかった」
 ヴィンチェンツォは真実を隠すために用意していた筋書きを話した。「十八歳になって、僕は今こそ自分の力で金を稼ぎ、名を上げて実力を世に示すときだと思った。だが父に話しても許してもらえるはずはないから、黙って家を出るほかなかった」
「私にも黙ってね」ひどく寂しげなつぶやきがヴィンチェンツォの胸に突き刺さった。
「ほかに方法がなかった」真実は話せない。ただでさえ彼女は傷ついている。強い罪悪感から確たる信念が生まれていた。ジェンマは僕と離れて幸せだった。今でも醜い真実から守ってやるべきなのだと。
「つまり、こういうこと? この十年、あなたは無事を知らせる葉書一枚書く時間さえなかったと?」声が震えているのは怒りと悲痛な思いのせいだろう。それを感じ取れるのはヴィンチェンツォ自身、心に痛みを感じているからだ。
「葉書を出そうにも住所がわからなかった。電話番号もだ。ディーミも君の行方がわからなくて、ずっと捜していた。僕だってどんなに捜したか」
 ジェンマが鋭く息を吸った。「私を捜したなんて、本気で言ってるの?」
 思っていた以上に彼女の心の傷は深いようだ。「この十年、探偵を雇って、ずっと君を捜させていたんだ」
「信じられないわ。ディーミもニューヨークにいるの?」
「ミラノだ。母親のコンソラータと暮らしている」
 ジェンマは青ざめ、喉元に手を当てた。ヴィンチェンツォが何度もキスをした首筋が脈打っている。
「それだけ聞けば充分よ」
 言うが早いかジェンマはドアへ向かった。ヴィンチェンツォがその意図に気づいたときにはもう廊下に出て、ロビーに向かって走りだしていた。ハイヒールをはいた彼女を見るのは初めてだった。すらりとした美しい脚がすばやい動きで遠ざかる。
 ヴィンチェンツォは揺れる髪が日ざしにきらめいているのを見つめながらあとを追い、車の脇でようやく追いついた。どんな生活をしてきたのか、ききたいことが多すぎて収拾がつかない。自分が黙って消えたせいでつらい思いをさせた埋め合わせがしたかった。行かせるわけにはいかない。今はまだ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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