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幾千もの夜をこえて

幾千もの夜をこえて


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

ずっとずっと永い間、あなたを待ち続けてきた――ロマンス界の女王リンダ・ハワードが描く、世紀の恋。

タロットカードに描かれた絶世の美女、レナ――命を吹き込まれながらも、何千年ものあいだ狭い世界に閉じ込められてきた彼女だが、ある日助けを求める誰かの声に呼ばれ、気づいたときには人間の世界に。そこには母親を目の前で殺されて犯人から逃げてきたという、怯えきった幼い少年がいた。このまま放っておけずレナは少年と行動を共にすることに決めるが、そんな二人の前に現れたのが、5日以内にレナを連れ戻せと厳命を受けた、冷酷と悪名高い傭兵ケイン。レナは反発しつつも、彼の冷たい漆黒の瞳からなぜか目が離せず……。

抄録

「わたしはレナ」称号まで言わなかったのは、彼が知らないはずがないからだ。それを言うなら名前も知っているはずだが、ちゃんと自己紹介するのが礼儀というものだ。「こちらはイライジャ。あなたのお名前は、ハンター?」
「ケイン」
 イライジャが彼女から離れて背筋を伸ばし、口をあんぐり開けてケインを見あげた。濃い茶色の目が驚きでまん丸になっている。「ハンターなの?」興奮で声がうわずる。「ぼくもハンターなんだよ。レナもそうなの。ぼくたちは正義のために戦うんだ。スーパーヒーローはみんなそうなの」イライジャはそこで、涙が筋を引く頬を手で拭った。「ごめんなさい。ハンターは泣かないんだよね」
 ケインは少年を見おろした。彼ほどの長身だと少年の頭はやっとウェストあたりだ。間近にいるレナは、こんなに寒い日なのに、彼の体が発する熱を肌で感じた。「そうだな」彼が早口に言った。「ああ、おれたちは泣かない」
「あなたの銃をひとつ持たせてくれない? 大事に扱うから」イライジャは小さな指で、不思議な武器を突いた。レナにとっても馴染みのない武器だった。「できたらこれがいいな。|水鉄砲《スーパーソーカー》みたいに見えるけど。水鉄砲なの?」
「そうじゃない。こいつは液体レーザーを発射する宇宙銃だ。それから、きみの頼みは聞けないな。おれの武器を持たせるわけにはいかないんだ」彼は顔を巡らしてあたりに気を配った。ほかのハンターのエネルギーを感知しようとしているのだ、とレナは思った。「ここにはいられない」ケインがレナに言った。「ここにいては危険だ」
 ほかのハンターたちが、いつ飛びかかってこないともかぎらない。レナにもそれはわかっており、頭の片隅には、彼らの登場に備え身構えている自分がいた。ケインは戦うだろう。さっきの戦いぶりを見れば、最強の戦士だとわかる。でも、相手は数でまさっている。レナも戦わざるをえないだろう。戦闘技術を身に着けているとはいえ、レナはハンターではなかった。「どこにいても、彼らに見つかってしまうわ」レナは言わずもがなのことを口にした。
「かならずしもそうとはかぎらない」ケインが、測り知れない漆黒の瞳で彼女を見つめた。「おれにはほかのハンターにエネルギーを感知させない|盾《シールド》が備わっている。きみがもっとちかづいてくれれば、そのシールドできみも包み込むことができる。だが、きみはこれからずっとシールドの内側にいつづけなければならない」
「どれぐらいちかづけばいいの?」変に想像力を掻きたてるような言い方はしなかった。文字どおり二人のあいだの距離を尋ねたのだ。距離という絶対普遍の概念ならうまく対処できる。自分が果たすべき役割は正確に把握しているつもりだ。だから、“ちかづく”という言葉にべつの意味を持たせて、相手の気持ちを弄んだりしない。
「密着だな」ケインはやおら腕を彼女のウェストに巻きつけ、もう一方の手でイライジャも抱き寄せた。ビュンとエネルギーが押し寄せてきて、ものすごいスピードにめまいがした。アレクサンドリア・デッキを通してイライジャに呼びだされたときとはまったくちがう。瞬きひとつする間もなく、あたりの景色がひとつに融け合った。まだ森のなかにいるようだけれど――木がたくさん生えている場所ではあっても、さっきまでいた森なのかどうか定かではない――木々がはるかに密生しているようだ。魔法のデッキがなければ、いくらハンターでも、彼女をべつの圏にテレポートさせることはできない。でも、この世界のなかでなら、彼女を確実にテレポートさせられるようだ。
 一瞬の時間のなかのある時点で、彼女は支えが欲しくなって手をケインの肩に置いた。手に触れる筋肉の分厚いこと。彼の服を通してレナの指先へと、熱と張り詰めた力が伝わってきた。全身に張り巡らされた神経の先端が目を覚まし、反応した。彼がシールドとテレポートの両方に費やす膨大なエネルギーに反応して、神経の先端がピリピリしはじめたのだ。
 みぞおちのあたりがギュッと締まり、膝がガクガクする。この感覚は性的欲望に似ている。あまりにも似ているから、脚のあいだに熱が溜まって、反射的に骨盤筋が引き締まった。まるで彼のペニスを体のなかに押し込まれたみたいに。
 ああ、もう、だめよ。
 テレポートがはじまったと思ったつぎの瞬間、ウェストにまわされていた彼の腕がはずれた。レナも彼の肩から手を離した。不意に地に足がついて、体が安定したようだ。彼に触れているあいだは、集中力が阻害されていたのだろうか。なんだか変だ。ハンターが体のまわりにエネルギーをまとっている――つまり周囲にエネルギー場ができていることは聞いて知っていたけれど、それがこれほど強いとは思っていなかった。それもそのはずで、ハンターにじかに触れたのはこれがはじめてなのだから。彼女の知識は不完全だったということだ。
 エネルギー場のことは記憶に刻みつけておこう。これもハンターが持つ秘密の武器のひとつなのだろう。触れるだけで、相手の思考を混乱させる能力。
 それとも、彼が、その、なんというか、とっても……男らしいせいかもしれない。それぐらいは気づいていた。もちろん気づいていた。レナはカードの化身というだけではない。生身の女性だ。でも、〈力〉であることを忘れてはならない。だから、そんなことをぐずぐず考えていてもすぐに気持ちを切り替え、おだやかな表情を彼に見せて、言った。「イライジャは――」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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