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愛は記憶のかなたに【ハーレクイン文庫版】

愛は記憶のかなたに【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 エマ・ダーシー(Emma Darcy)
 フランス語と英語の教師を経て、結婚後、コンピューター・プログラマーに転職。ものを作り出すことへの欲求は、油絵や陶芸、建築デザイン、自宅のインテリアを整えることに向けられた。人と接するのが好きで、人と人とのつながりに興味を持っていた彼女は、やがてロマンス小説の世界に楽しみを見いだし、登場人物それぞれに独自の性格を与えることに意欲を燃やすようになった。旅を楽しみ、その経験は作品の中に生かされている。現在はオーストラリアのニューサウスウェールズにあるカントリーハウスに住む。

解説

依頼を受け、社長との面会に赴いたジョセフィンは凍りついた。マイケル・ハンター。かたときも忘れることなどできない人。3年前のあの日、妹は、彼のいとこの子を宿してしまっていた。マイケルは、いとこと話をつけると約束してくれたが、翌日、突然てのひらを返し、妹の落ち度だとなじったのだ。去っていくマイケルに追いすがり、妹は車に轢かれて死んだ――いっときでも、彼を信じた自分が呪わしい。ジョセフィンは激しく動揺しながら、立ち尽くしていた。やがて彼への愛の狭間で、悶え苦しむことになるとも知らずに。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 彼は思案げに額をさすった。「マークと会って話す前に、ご両親に相談したほうがいいかもしれない。妹さんはいやがるだろうが、こういう状況では肉親の支えが必要になるでしょう。マークとの結婚はありえないと思うので」
 彼に悪意はないとわかっていたが、ジョーは涙をこらえることができなかった。「両親は半年前に飛行機事故に遭って……亡くなりました」
「お気の毒に」彼は表情を曇らせ、ジョーが涙を拭いて落ち着くのを待った。「ご両親以外に家族は?」
「私たち姉妹のほか、家族はいません。そもそも、両親が健在だったらこんなことにはならなかったでしょう。妹は突然両親を失って混乱し、私が何を言っても聞かないんです。キャロルとマークが話し合わないかぎり、何も解決しないと思いますわ。お願い、彼の住所を教えてください」
 彼はうなずいたが何も言わず、親指の腹でゆっくり下唇をこすっている。
「ミスター・ハンター?」ジョーは返事を促して眉を上げた。「マークの連絡先を――」
「あなたがたが直接彼と話してもいい結果が出るとは思えない。その前に、客観的な判断を下せる第三者としてぼくがマークと話してみます。ぼくがあいだに入れば、彼が拒絶の態度を示しても、妹さんは必要以上の屈辱を味わわずにすむ。ぼくと彼とでいちばんいい解決策を考えるので、二十四時間待ってくれますか?」
「私はよくても……」愛する男性に拒絶されて傷つく妹を見たいとは思わない。「キャロルはどうしても彼に会いたいと言っています。ふたりで話し合うよう、あなたがマークを説得することはできません?」
「ぼくを信じて。できるかぎり努力すると約束しますから。あなたの住所は?」
 ジョーは彼を信じた。深く冷静な声には、混乱した思いを静める誠実な響きがあるように思えた。彼はジョーの住所を書きとめ、間違いがないかどうか、もう一度声に出して繰り返した。
 投げたボールが相手の手に渡ったことを納得しようとしながら、ジョーはしばらく気が抜けたようにそこに座っていた。電話でタクシーを頼む声が耳に届くまで、彼がソファを立ったことにも気づいていなかった。思いやりがありがたく、できればほかのとき、ほかの場所で会いたかったと痛切に思いながら彼の背中を見守った。
「タクシーは十分で来ます」振り向いた彼のまなざしは別人のように柔らかかった。「ぼくの車で送っていってもいいが、それより先にマークと連絡を取るべきだと思うので。あなたはとても疲れているようだ。早く帰って休んだほうがいい」
「ありがとう。階下のロビーでタクシーを待ちますわ」
「階下まで送りましょう」
「ひとりで大丈夫」
「せめて階下まで送らせてください」彼はジョーの肩に手を添えた。「そんなに若いのに、ひとりで家族の責任を負わなければならないとは……」
「二十一歳は大人ですわ」
「二十一? もっと若いと思った」彼は微笑した。「もしこんな状況じゃなかったら、会えてよかったと言うところです。それにしても、あなたの勇気には感服しましたよ、ミス・スタンディッシュ」
 心が聞き取った言葉を信じられずにジョーは眉をひそめた。たったいま、互いに手を差し伸べ、魂と魂が永遠を誓って固い握手を交わしたような気がした……だが、そんなことはありえないと即座にその直感を打ち消した。
「突然お邪魔してごめんなさい。もう行かなくては」
 彼はジョーの肩を抱き、階下のロビーに下りるまでずっとそうしていた。「明日の夜、八時でいいですか?」
「ええ、八時に」コートを隔てて伝わってくるぬくもりが心地よく、ジョーはロビーに下りるまで彼から身を引こうとはしなかった。
「心配しないで。マークから話を聞くまでなんの約束もできないが、いずれにせよ、明日の夜、ちゃんと話をしに行きますから」
 エントランスで立ち止まり、ジョーは心もとなげに彼を見上げた。「ご自分のことでもないのに、親切にしてくださってありがとう。とても不安で、ここに来るのに勇気がいりました」
「わかります」
「どうしておわかりになるの?」
「その目に書いてあるから」不思議なくらい優しいしぐさで彼はジョーの頬に指を滑らせた。「あなたが思っていることは、すべてその表情豊かな瞳に映し出されている」
「もしそうなら、私がどれほど感謝しているか、言わなくてもおわかりになるわね?」ジョーは恥ずかしそうに目を伏せた。
「それ以外のこともいろいろ……」彼は物思わしげに言い、ジョーは再び奇妙な親和の情を覚えた。
 到着したタクシーのクラクションに急かされて、ふたりはエントランスから車寄せへとステップを下りていった。
「ありがとう」ジョーはタクシーのドアを押さえる彼に繰り返した。
「気をつけて」彼の微笑は温かかった。「明日の夜八時に」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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