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視線の先の狂気

視線の先の狂気


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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著者プロフィール

 ヘザー・グレアム(Heather Graham)
 新作を出すたびニューヨークタイムズをはじめ数々のベストセラーリストに顔を出す人気作家。作品は15カ国語に訳され、発行部数は世界中で2000万部を超える。フロリダで生まれ育ち、大学では舞台芸術を専攻した。卒業してからは女優やモデルなどの職業を経験し、第三子出産後に執筆を始める。受賞歴も豊富で、テレビのトークショーに出演したり、雑誌で取り上げられたりするなど実力と人気を兼ね備えている。

解説

 母親が殺された瞬間、マディスンは激しい苦痛を自分のものとして感じ、殺害場面を透視していた。その日を境に不思議な能力が備わったマディスンは殺害現場のイメージを見つづけ、しばしば警察に協力することになる。彼女の脳裏に現れる被害者はいつも赤毛の女性だった――母やマディスン自身のような。やがてマディスンは、彼女の身を案じるFBI捜査官カイルに我知らず心を開いていく。マディスンをおびやかす狂気の正体が明らかになったとき、ふたりを襲った衝撃の事実とは? 人気作家の傑出ロマンティック・サスペンス。

抄録

 カイルはリッキーに、コンピュータで被害者たちの生活に関する最新情報をこちらへ送るように指示してから、おやすみを言った。そのあとしばらくコンピュータに向かって、四人の被害者の記録を調べた。デブラ・ミラー、ジュリー・セイバー、それにホリー・タイラーの三人は独身で、過去に一度も結婚していない。マリア・ガルシアは離婚しており、あとに幼い子供をふたり残した。画面に現れた彼女の写真を見て、カイルは胸の奥に痛みをおぼえた。仕事のうえでは、たいてい分析的に物事を見ることができる。だが、ときとして人間的にならずにはいられない。他人の痛みを感じずにはいられないときだってあるのだ。
 これまでの情報からでは、赤毛であること以外に、四人の女性を結びつけて考えることはできなかった。住所も勤務先も市内のあちこちに散らばっており、仕事の内容もそれぞれ異なっていた。デブラはマイアミ生まれ、ジュリーはニューヨーク出身、マリアはキューバからの移民、ホリー・タイラーはミネソタ州で生まれている。四人の共通点といえば、全員が赤い髪で、若く、元気はつらつとしていて、魅力的だということぐらいである。きっとそれで全部なのだ。そしてたぶん、それで十分なのだ。
 カイルは額をこすりながら、過去の連続殺人者たちの殺害方法や動機について思いをめぐらした。たいてい女のほうに何かがあって、それが殺人者の心の何かを刺激するのだ。それはなんだろう? 赤い髪か? はつらつとしていることか? テッド・バンディーは、若くてきれいな女がいくらでもいるからと、大学のキャンパスを物色してまわっていた。だが今回の被害者は、もう少し年をとった二十代後半の女性たちだ。
 解答は得られそうになかった。カイルはたいして疲れていなかった。シャワーを浴びる気になれなかったし、ベッドへ入ってひと晩じゅう寝返りを打っているのもいやだった。
 それよりもっといやなのは、眠って夢を見ることだった。廊下の突き当たりの部屋にいるマディスンのところへ行こうとしている夢。ふたりのあいだの暗がりに殺人者が潜んでいて、月明かりにナイフがきらめく夢。
 それでもカイルはコンピュータの電源を切って、目をこすった。それから重い腰をあげてシャワーを浴びに行った。石鹸《せっけん》を泡だてて肌をこすり、つまみをめいっぱい冷たいほうへひねって、体がすっかり冷たくなるまで長いあいだシャワーを浴びた。
 ようやくシャワーを出ると、バスルームだけ残して、ほかの明かりを消した。バスルームの明かりは、部屋のドアを入ったすぐ左側にある。長年の訓練の結果、カイルは、入口を明かりが照らすようにしておいて暗がりで寝る習慣が身についていた。
 彼は目をつぶったが、眠れなかった。目を開けて天井を見あげた。
 その気になれば、起きあがって廊下を歩いていくことができる。口実なんかいらない。ただ彼女に、一緒に寝たいかと尋ねさえすればいい。
 簡単じゃないか。そうとも、これほど簡単なことはない。
 廊下を突き当たりまで歩いていって、彼女にこう言おう。水を飲みに行ったのだが、部屋へもどるときにまちがって反対方向へ曲がってしまったのだ、と。
 きっと彼女はぐっすり眠っているだろう。
 こういう幻想を、これまでに幾度となく頭のなかに思い浮かべたものだ。部屋へ入っていくと、そこに彼女がいる。まとっているのはタオルかもしれない、シルクかもしれない。それはどっちでもいい。身にまとっているものがするりと床へ落ちる。ふたりともそれを望んでいる。言い争うのはやめて、心に正直になろう。おたがいに心の欲するままに生きよう。そうすればきっと……。
 カイルにはできなかった。どうしてもできなかった。マディスンが何を考えているか、自分にはわかっているとカイルは思った。ときどき、ほんのまれに、彼女が自分を見る目つきや、彼女がうっかり漏らした笑みから、ふたりのあいだに熱烈な感情が存在すると思った。そこへふたりがいますぐ到達しなかったら……。
 不意に足音が聞こえた。低く、忍びやかで、それでいながらせかせかした足音。ドアのすぐ外だ。
 カイルは緊張した。ベッドから足を出して、素早くナイトテーブルへ手を伸ばし、三十八口径の銃を握った。
 部屋のドアがゆっくりと開く……。
 バスルームから差し込む柔らかい光のなかに、マディスンの姿が浮かびあがった。彼女は光に目がくらんでその場に立ちつくした。カイルは闇のなかに座っていた。
 彼女が着ているのはシルクだった。
 エメラルドグリーンの長いシルクのローブが、彼女の肉体にまといつき、体に沿って曲線を描いている。そしてその上に髪が振りかかっている。あたかも闇のなかに赤々と燃える火のように。
 彼女のほうから彼のところへやってきたのだ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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