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愛を宿したウエイトレス

愛を宿したウエイトレス


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・ケンドリック(Sharon Kendrick)
 ウエストロンドン生まれ。写真家、看護師、オーストラリアの砂漠での救急車の運転手、改装した二階建てバスで料理をしながらのヨーロッパ巡りなど、多くの職業を経験する。それでも、作家がこれまでで最高の職業だと語る。医師の夫をモデルにすることもある小説のヒーロー作りの合間に、料理や読書、観劇、アメリカのウエストコースト・ミュージック、娘や息子との会話を楽しんでいる。

解説

愛情も結婚も望まない。それが愛人の掟だった。

ナイトクラブでウエイトレスをしていたダーシーは高名なイタリア富豪レンツォ・サバティーニに見初められ、抗うすべもなく純潔を奪われて彼の秘密の愛人になった。無上の喜び以外は与えられない、ベッドの上だけの逢瀬――切なさに別れを決意した彼女を、レンツォは別荘へ招待する。ふたりは美しいトスカーナの地で恋人同士のように過ごすが、目もくらむほどの幸福の果てにダーシーは無残に捨てられる。私のような女には、彼に愛される価値なんてない……。彼女は静かに姿を消した。傷つき疲れて、小さな命を育みながら。

■身重の体で働き続け、ついに過労で入院したダーシー。そこへレンツォが現れ、結婚という解決策を提示します。お腹の子を守るため、ダーシーは義務的な求婚を受け入れますが……。人気作家S・ケンドリックが身分違いの切ない愛を繊細かつ情熱的な筆致で描きます。

抄録

 しばらくは順調だった。順調以上だった。レンツォがイギリスにいてスケジュールに空きがあるとき、ダーシーはいつも彼と一緒に夜を過ごした。ときには朝のひとときも。バイオリン演奏の入った夢のような音楽が流れる中、ダーシーはレンツォが作ってくれた卵料理を食べた。そのあいだ彼は恐ろしく緻密なスケッチを入念に眺めていた。遠くない将来、この国を象徴する摩天楼になるはずのスケッチを。建築業界で彼の名を知らない者はいなかった。
 ところが最近、ダーシーの心の中にはもやもやしたものが芽生え始めていた。良心の呵責を感じているからだろうか? それとも、宮殿を思わせるアパートメントに罪深い秘密のようにかくまわれ、わたしの自尊心が徐々に摩耗しているから? わからない。わかっているのは、自分が何になったのかを分析し始め、思いついた答えが気に入らないということだけ。
 わたしはお金持ちの男性のおもちゃ。彼が優美な指を鳴らせばいつでも下着を脱ぐ女。
 それでも、今わたしはここにいる。得体の知れない胸の内のもやもやに、今日の夕方の楽しみを台なしにさせるなんて、ばかげている。そう思い、ダーシーは硬い笑みを明るい笑みに変え、荷物が入ったバッグを床に投げ捨てた。髪から輪ゴムを引き抜き、頭を振って濡れそぼった髪を解き放つ。レンツォの目が欲望に陰るのを見て取り、満足感を覚えずにはいられなかった。ダーシーの体が彼にとって魅力的であることに疑いの余地はない。レンツォは彼女をいくら抱いても飽き足らないようだった。
 その理由にダーシーは気づいていた。二人はあまりに違うからだ。まず第一に、彼女は下層階級の出で、大学にも行っていない。義務教育課程でも欠席日数が多かったせいで、彼女のほぼすべての知識は独学で身につけたものだった。容姿の特徴は、赤毛と起伏に富んだ体つき。一方、メディアに掲載された写真を信じるなら、レンツォの歴代のお相手はすべてスレンダーな黒髪の女性だった。そう考えると、ダーシーとレンツォは、すべての面で不釣り合いな組み合わせだった。ただひとつ、ベッドでの相性を除いては。
 ベッドでの営みは驚くほどすばらしかった。だが、こんな逢瀬をいつまでも続けることはできない。どこにもたどり着かない道をあてもなく進むことは。
 ダーシーは自分が何をするべきかわかっていた。人はかなり長く自分をだませるものの、いつかは現実に傷つき、変更を余儀なくされる。レンツォはわたしがそばにいることを当然だと思い始めている。もしこのまま関係を続けたら、二人が分かち合う魔法の力は弱まっていくに違いない。ダーシーはそうなるのを望まなかった。レンツォとの思い出は強烈すぎるからだ。悪い思い出は重い荷物と同じで運ぶのに苦労する。彼女はいい思い出を持って荷物を軽くしようと決意していた。
 だったら、わたしはいつ彼のもとから去ったらいいの? レンツォのほうから先に別れを切りだされ、わたしの心が粉々に打ち砕かれる前のほうがいいでしょう?
「わたしが早く着いたのは、あなたの運転手を追い返して地下鉄で来たからよ」ダーシーは説明し、豊かな赤毛から重い雨粒を払いのけた。
「運転手を追い返しただって?」レンツォは顔をしかめながら濡れたレインコートを脱がせた。「なぜそんなことをしたんだ?」
 ダーシーはため息をついた。自分がレンツォ・サバティーニになり、世間とは隔絶された世界でぬくぬくと暮らしたら、どんな気分になるかしら? そこでは運転手つきの車や自家用機が、雨や雪や大多数の普通の人間が持つ心配事から守ってくれる。そこでは代わりに買い物をし、前の晩に寝室で脱ぎ散らかした服を片づけてくれる人がいる。話をしたくない相手と無理に話す必要もない。あいだに入って交渉してくれる使用人が常に控えているから。
「この時間帯の道路は地獄だからよ。しばしば渋滞に巻きこまれ、かたつむり並みの速度でしか進めなくなるの」ダーシーは彼の手からコートを奪い、軽く振ってからクローゼットにぶらさげた。「ラッシュアワーには公共の交通機関を使ったほうがいいのよ。さあ、時間に不正確なわたしの話はさておき、紅茶を一杯いただける? 寒くて凍死しそう」歯をかちかち鳴らしながら訴える。
 だが、レンツォはその訴えを無視し、キッチンに向かう代わりにダーシーを抱き締めてキスをした。唇を強く押しつけ、制服の上から指でヒップを愛撫する。そしてキスを深めながら体を密着させ、自分の下腹部のこわばりと温かい裸の胸を彼女に感じさせた。ダーシーがまぶたをはためかせて目を閉じると、レンツォに固い腿を執拗に押しつけられ、彼女は無意識に脚を開いた。ダーシーはそれまでの寒さを忘れ、紅茶も頭から消え去った。ますますキスが深まるにつれ、懸念や不安も溶けていく。彼の裸の胸に冷たい指を這わせたとき、ダーシーが自覚していたのは高まる一方の欲望だけだった。
「あなたは悪魔だわ、レンツォ」ダーシーはささやいた。
「ということは、ここは地獄か?」
「いいえ、ここは……」ダーシーの唇が彼の唇をかすめる。「天国よ。言うまでもないけれど」
「同感だ。きみはぼくの胸で手を温めようとしているのか?」
「そうよ。でも、あまりうまくいきそうにない。あなたはたいていのことはうまくこなすけれど、人間湯たんぽの役は不得手みたい」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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