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孤独な領主【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】

孤独な領主【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 マーガレット・ムーア(Margaret Moore)
 俳優エロール・フリンに憧れ、『スター・トレック』のミスター・スポックに恋をした少女は、やがて謎めいた魅力的な悪漢をヒーローに仕立てたロマンス小説を書くことに夢中になった。カナダのオンタリオ州スカボローに夫と二人の子供、二匹の猫と暮らしている。読書と裁縫が趣味。

解説

領主の姫君が、男爵の召使いに! 父の死を境に一転した乙女の運命――

ガブリエラはドゲール男爵一行の到着を待っていた。伯爵である父はひと月前に亡くなり、彼女には借金だけが残された。城と領地は没収され、今日ドゲール男爵に明け渡すことになっている。でも、消息不明でまだ父の死も知らない兄が戻るまで、わたしはなんとしてもこの城に残りたい。一縷の望みを胸に、彼女はやがて到着した男爵に願いを伝えた。すると、噂にたがわず冷酷な彼は、情け容赦なく言い放った。「ここを出ていくか、召使いとして城に残るかだ!」あまりのことに色を失うが、行くあても金もないガブリエラは、悲痛な思いで召使いになる道を選んだ……。

■ヒストリカルの大御所マーガレット・ムーアの名作! “悪魔の申し子”の異名をとる傲慢男爵と、父が遺した城を守りたいと願うけなげな乙女の物語。愛情表現を知らない男爵に振り回され傷つくヒロインの運命やいかに?
*本書は、ハーレクイン・ヒストリカルから既に配信されている作品のハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 エティエンヌにはこんな口づけは生まれて初めての経験だった。ふたりで分かち合う喜びのなかで、世間知らずでかしこまったガブリエラはどこかへいってしまい、経験豊かな娼婦のように自分の力を知りつくした、官能的な女性になったかのようだった。エティエンヌはガブリエラに口づけするつもりはなかったのだが、彼女を引き寄せ、やわらかな胸のふくらみの下で激しく打つ鼓動を感じたとき、少しも後悔していなかった。
 ガブリエラは低くあえぎながら、口のなかに滑り込んできたエティエンヌの舌に応え、彼の腕にもたれて体をそらした。ふたりの舌がからみ合って快感がつのってくると、激しい欲望がエティエンヌの体を貫いた。彼はガブリエラのすらりとしたしなやかな背中を撫でながら、てのひらの下で彼女の背骨から緊張感が消えていくのを感じた。口づけが深まると、エティエンヌは大きくなっていく快感を少しでも長続きさせたいと思うだけで、自分がなにをしているのかわからなくなっていった。
「やめて!」ガブリエラが目を大きく見開き、嫌悪に打たれたようにいきなり彼から身を引いた。
 エティエンヌは全身を駆け抜けた快感を突然断ち切られて、呆然とした。「なぜだ?」ガブリエラによって目覚めさせられた感情を無視しながらたずねる。ガブリエラが少なくとも自分と同じくらい抱擁を楽しんでいたのは間違いない。だとしても、ふたりが感じたのは肉体的な欲望だけだ、とエティエンヌは自分に思い込ませようとした。「わたしがきみを求めているのと同じくらい、きみもわたしを求めているはずだ、ガブリエラ。でなかったら、わたしと口づけしなかっただろう」エティエンヌは声を落としてささやくように言った。「口づけして悪いことはなにもない」
 ガブリエラの視線が一瞬揺らぎ、頬が真っ赤になった。エティエンヌはもう一度彼女を抱いて、腕で彼女の感触を味わうだけでなく、もっと別のものを味わいたかった。彼女が自分を拒んだのは慎み深さのせいだと自分に言い聞かせながら、エティエンヌはガブリエラに近づいた。だが彼女は自分がしたことを悔やみ、やましさの浮かぶ顔で後ずさりした。エティエンヌは自分が悪魔の生まれ変わりにでもなったような気がした。
「これはいつまでも世間知らずではいられないという教訓のひとつなのですか?」ガブリエラはそうたずねた。決然とした目にたたえられた非難がエティエンヌの孤独な心を突き刺した。
「きみが望まなければ、なにもしない」エティエンヌは軽い口調で言った。
「わたしは望んでいません。ちょっとのあいだ……忘れてしまったのです」
「なにを忘れたのだ?」
「あなたがどなたかを」
 ガブリエラの声にこもる軽蔑に、エティエンヌは深く傷ついたが、自分が持っているとは知らなかった弱さを顔には出さないように努め、その代わり、しかめっ面をした。「ガブリエラ、わたしがきみの家族を苦しめたわけではない」エティエンヌは言った。欲望を抑えられないいらだちから、声はいっそう冷ややかになった。
 ガブリエラはあの挑戦的なすばらしい瞳をきらきらさせ、胸のふくらみを上下させながら、エティエンヌの前に立っていた。エティエンヌは、彼女に欲望を感じるのは彼女の体が魅力的だからで、彼女の熱い情熱を共に味わいたいからでも、正面から堂々と自分に逆らう彼女を見たいからでもない、と自分に言い聞かせた。
「そして、わたしから家を奪うことになったのはあなたの責任ではないんでしょう。でも、物事ってそんなものですわ、ドゲール男爵。あなたは男爵で、わたしは召使い。お願いですからわたしに仕事を続けさせてください。そして、わたしを誘惑するのはもうやめてください」
「わたしがきみを誘惑したと、きみは考えていたのか?」エティエンヌは欲求不満を隠すため、冷笑しながらたずねた。「一度の口づけでは誘惑になどならない。男とふたりきりになるときは用心しろという教訓だと考えたまえ」
「学ぶべき教訓はたくさんあるようですね、旦那様。召使いのわたしにこんなふうに関心を示してくださることにお礼を申し上げなければなりませんわ。貴族の男が本当はどんなもので、世間が冷たくて思いやりがないということを、わたしが学べるように心を砕いてくださって、ありがとうございます」ガブリエラは男爵が奇怪なものであるかのようにしげしげと見た。「教えてください、男爵。あなたはどなたからそういったことを教わったのですか?」
「母だ」エティエンヌは短く言った。正直な答えが口をついて出た。
 ガブリエラの顔から軽蔑したような表情が消え、同情が浮かんだ。
 だが、エティエンヌは同情などされたくなかった。彼女からも、だれからも。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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