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いつか恋を【ハーレクイン文庫版】

いつか恋を【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 リンゼイ・アームストロング(Lindsay Armstrong)
 南アフリカ生まれ。現在はニュージーランド生まれの夫と五人の子供たちとともに、オーストラリアで暮らす。オーストラリアのほとんどの州に住んだことがあり、農場経営や馬の調教など、普通では経験できない職業を経てきた。彼女の作品にはその体験が大いに生かされている。

解説

父と継母が飛行機の墜落事故で、世を去ったとき、19歳のメルに遺されたのは、3人の弟と莫大な借金だけ。弟たちを人手に渡さないためにも、海運造船業を営む大資産家で、継母の弟エティエンヌの求婚を、メルは受けるしかなかった。メルは15歳のときに、彼に仄かな思慕を秘めていたことがある。しかし、一回りも年上の、成熟した大人のエティエンヌは、男の子みたいな、痩せっぽちのメルに見向きもしなかったのだ。それなのに結婚式の夜、怯えるメルをベッドの端に座らせ――その微笑が語っていた。彼はメルを我が物にしたいだけなのだと。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「いつも着替えてばかりいるみたい」三十分後、エティエンヌの前に現れたメルが言った。
 二人はベランダにいた。手と顔を洗って靴の泥を落としたものの、エティエンヌはまだ汚れた服を着ている。
「ああ」エティエンヌは同意し、メルにデカンターからブランデーをついでやった。
 メルはジーンズと花柄のブラウスを着ていた。髪は濡れている。
 メルがブランデーを数口飲むのを待ってから、エティエンヌは話を始めた。「メル、ほかにも支払わなければならない請求書があるのかい?」
「いくつかね」メルは肩をすくめた。
「なぜ、会計士にまかせておかないんだ?」
 メルはグラスの縁越しにエティエンヌを見た。「彼の請求書も未払い分の中に入っているからよ」
 エティエンヌは少し待った。「見せてほしい」
 メルの視線とエティエンヌの視線がぶつかり合う。
「だめよ。なぜそんなことを?」
「あなたに関係ないことよ、と言ったらどうだ」
「まさにそのとおりだわ」メルはかたくなに言い張った。
 エティエンヌはあたりを見まわした。両開きのガラス扉の向こうの優美な居間には美しいペルシア絨毯が敷かれ、アンティークの上品な椅子が置かれている。「ぼくの姉はきみの義理の母親だった」彼の顔が急に険しくなった。
「そうだとしても、施しは受けたくないの」メルはもうひと口ブランデーを飲んで防御を固め、顎を上げた。
「怒っているのか……」エティエンヌは息を吸いこみ、無理にくつろごうとした。「ぼくは施しを申し出るつもりはない。請求書をすべて清算するには農場を売る以外ないというきわめて論理的な話をしているんだ。きみは、債権者と連絡を保ち、窮状を打ち明け、支払いを待ってくれるよう頼み、その間に返済プランを練らなければならない。忠告できるのはそれくらいだな」エティエンヌは皮肉のこもった目で彼女を見た。
 メルはうつむき、肩を落とした。「わかったわ。せっかくの忠告だから……」エティエンヌの目に宿る警告の色におじけづき、メルは最後まで言えなかった。「ありがとう」声がかすかに震える。
 エティエンヌは椅子にもたれ、ブランデーを飲み干した。「今夜の予定は?」
 メルはびっくりして目を見開いた。「べつに。いつもどおりよ。弟たちはすぐに学校から戻るし、でも……どうして?」
「レストランでディナーを楽しむのもいいかと思っただけだよ」エティエンヌはぶっきらぼうに答えた。
「あなたとわたしだけで?」
「きみとぼくだけでだ、メル。何か不都合でも?」
「あら、べつに。ただ、わたし眠ってしまうかもしれないわ。だって、きょうは能力以上に働いたから」
「ああ、確かにそうだね。別の機会にしよう」エティエンヌは立ち上がった。「ただし、請求書はぼくがもらっていくよ」
「そうね。また今度……」
「すぐに欲しいんだ、メル」
 体がこわばり、疲労困憊していたにもかかわらず、メルは反駁した。「自分がひどく独裁的だってことに気づいているの、エティエンヌ?」
「ああ」彼は物憂げに言った。「物事を片づけるにはいい方法だ。請求書をもらわずに帰る気はない。さあ、持っておいで、いい子だから」
「いや! 子供扱いされるのはまっぴらよ」メルは歯を食いしばり、その場を動かなかった。
「よし」エティエンヌの目が光った。「頑固な女性を扱うときの方法を使ったほうが、きみの気に入りそうだな」彼は片手でメルを抱き寄せ、身をかがめて、入念にキスをした。
 エティエンヌがキスを終えると、メルは言葉を失ったまま、息も絶え絶えに顔を上げた。爪先を突き抜ける興奮の波を、彼女は信じられない思いで意識していた。
 唇が切れたような気がして、メルは思わず唇に手をやった。エティエンヌのキスは冒涜的だったが、魅惑的でもあった。彼と唇を合わせながらメルは喉元に彼の指先を感じた。肌はシルクのようにつやを増し、両胸はふくらんだ。そして突然、彼女は自分が挑発するようにヒップをくねらせているのに気づいた。
 さらに悪いことに、森のニンフの幻想が再び脳裏によみがえった……。
「そう」エティエンヌは思わせぶりな笑みを浮かべた。「きみのほうが正しかったな。確かに、子供のような感触ではなかった」
 エティエンヌは吸いつくような視線をメルの体に走らせたあと、彼女の頬が真っ赤に染まるのを待った。言葉を失うメルを見て、エティエンヌは奇妙な笑みをうっすら浮かべた。
「さあ、請求書をもらえるかい?」
 メルは唇を開き、深く息を吸いこんだ。しかし、それが間違いだった。たちまちすばらしいエティエンヌの香りが彼女の鼻を刺激したからだ。
 メルは喉をごくりとさせ、身を翻すようにして部屋の中に消えた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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