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甘い蜜の罠【ハーレクイン・セレクト版】

甘い蜜の罠【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

ケータリング業を営むアンナは、両親との生活を支えるため、妊娠7カ月になった今も休むことなく働いている。ある日、顧客の屋敷で晩餐会のコースを用意した彼女は、ダイニングルームに入ったとたん凍りついた。彼がいる……!おなかの子の父親、フランチェスコが!彼とはイタリア旅行中に出会い、ひと目で恋に落ちた。この晩餐の招待客である“イタリアからの大富豪”が、突然冷たく心変わりして私を捨て去った、最愛の男性だったとは。ふたりきりになると、フランチェスコは険しい目をして囁いた。「たまには本当のことを言ってくれ。ぼくの子なのか?」

■2009年に亡くなったHQロマンスの人気作家ダイアナ・ハミルトン。突然の訃報に、当時日本の編集部も大きな衝撃に包まれました。でも、優れたロマンス作品は永遠に生き続けることを思い出させてくれる名作が、ここにあります。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 翌朝、コテージの前を通った彼女は輝かしいブロンドの髪を無造作に結いあげていた。腰に結んだシルクの布が形のいい腿のまわりではためき、その下はきのうと同じ黒の水着で、豊満な胸に愛人の手のように吸いついている。
 自分がどれだけ美しいか、彼女は気づいているのだろうか? きのうの短い出会いからして、そうは思えない。賭けてもいい。おそらくは二十代初めのこの女性こそ、無垢ですれたところのない、まれに見る生き物だ。
 プライベートビーチに来てもいいと、もう一度彼女に念を押すためだ。そう自分に言い聞かせながら、フランチェスコは彼女のあとを追っていた。ここの持ち主であることはもちろん言わずにおいたが、魔法のような島の大半と、彼女が泊まっているホテルも、フランチェスコのものだった。
 彼女は泳いでいた。静かな平泳ぎだ。それが賢明なことかどうか疑問にも思わず、フランチェスコも泳いだ。競泳用のクロールは力強い。彼女が緑色の目を見開き、彼が誰だかわかってまぶしくほほ笑んだときはうれしかった。
 そして、自分でも気づかないうちに彼女のとりこになっていた。彼女のぬくもり、美しさ、純真さに心がとろける。初めてのことで、何が起こっているかさえわからない。ただ、このひとときを終わりにしたくなかった。物憂い語らい。世間話。名乗りあう以外、個人的なことは何も話さなかった。自分の名前を言ったあと、フランチェスコは目を細めて相手を見守った。彼女がはっとした顔になるかどうか。フランチェスコの名は軽薄なゴシップ誌の常連だし、ロンドンで発行されるもっとまじめな雑誌では、国際経済面にも登場する。
 なんの反応もない。僕が何者か、まったく知らないのだ。フランチェスコはクリスマスの朝の子供に戻った気がした。実にすばらしい気分だ。
「きのう、果物をくれたね。今日は僕がパスタをごちそうするよ。僕の手作りだ」その招待にわれながら驚き、彼女がどう反応するか見守った。あの隠れ家は誰も侵すことのできない世界だが、彼女がいてくれたらうれしい。この機会を逃すわけにはいかない。そこまでフランチェスコは本気だった。
 ほほ笑んでいた緑色の瞳が、驚くほど長いまつげに覆われた。輝かしい髪がたれてきて、日差しを浴びた肩で分かれた。胸の谷間に横たわるらせん状の巻き毛が彼の気持ちをそそる。
「なんの下心もないよ」フランチェスコは静かに言った。そういう安心感が彼女には必要なのだ。イギリス人の女性観光客は簡単にだまされるという。彼女はそんな感じではない。「ただ、きみといるのが楽しいだけだ」嘘ではない。
 自分の気持ちがよくわからないまま、彼女の顎に手をかけて上を向かせ、目をとらえて他意はないことを印象づけようとする。指の下の小さな顎、柔らかな肌の奥の華奢な骨、彼に触れられたのは初めてだという赤裸々な驚き、信用しきったまなざし。そして唇を開いて、いいわ、と言ったとき、彼の運命は決まったようなものだった。
 あとは避けられない結果になった。まず、小さな石造りのコテージにアンナは興奮した。「すてき! ずっとひとりで住んでいるの?」
「ずっとというわけじゃないけどね」彼は言葉を濁した。彼女が真剣にうなずくのを見て、卑劣漢になった気がする。
「オフシーズンは仕事が見つかりにくいでしょうね。観光客がいなければ、ツアーガイドもお呼びがかからないもの。そのときは本土に行くのね。でも春に戻ってくる場所があるなんて、すてきだわ」
 まぶしい笑みに、フランチェスコは正体を明かしそうになった。僕といるだけで喜ぶ女性が見つかるとは、奇跡のようだ。銀行預金の残高ではなく、あるがままの僕を気に入ってくれたのだ。
 あるいは、好意以上のものを感じているのだろうか? 二人の目が合うたびに彼女の頬が柔らかく色づく様子に、期待感がこみあげる。目が合うと、彼女の鼓動は速くなり、ぴんと張った黒い生地に覆われた豊満な胸が上下する……。
 サラダとパスタだけのありあわせの食事を彼がぶっきらぼうに謝ると、彼女は言った。「とってもおいしいわ! このハーブソースが最高。私は料理で生計を立てているの。といっても、個人の家のディナーパーティとか、そういうたぐいだけど。もちろん、夏季休暇のシーズンはコース料理の予約もさっぱりだから、こうして休みがとれたの」
 彼女のことを詳しく聞きだす絶好の機会だったが、フランチェスコはさらりと受け流した。大事なのは、なぜか知らないうちに彼女が地上でもっとも心惹かれる女性になったことだけだ。
 そして、避けられない事態が起こった。
 なぜそんな展開になったのか、知るすべもない。彼女は帰ろうとしていた。お礼を言い、ほほ笑んで、どこへでも持っていくらしいあれやこれやをかき集めた。次の瞬間、フランチェスコの手は彼女に触れていた。温かくなめらかな肩に。彼女の手もフランチェスコに触れた。狂おしく鼓動する胸に小さな手が広げられた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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