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思い出のなかの結婚【ハーレクイン・セレクト版】

思い出のなかの結婚【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・スペンサー(Catherine Spencer)
 三十数年前にイギリスからカナダのバンクーバーに移り住む。英語の教師からロマンス作家に転身。カナダ人の男性と結婚し子供にも恵まれ、現在は孫もいる。あいた時間があれば、ピアノを弾いたり、アンティークショップをのぞいたり、庭の手入れをしたりしている。

解説

事故で1カ月も昏睡状態にあったメイブは、記憶を失っていた。退院した彼女を迎えたのは、夫のダリオ・コスタンツォ。世界的大企業の創業者一族の御曹司で、とびきりのハンサムだ。自家用ジェットで飛んだ静養先は楽園のように豪奢なヴィラで、メイブはともに過ごすうち、ダリオに強く惹かれていった。こんなにもお金持ちで素敵な男性が、わたしの夫だなんて……。ダリオは彼女を気遣い、情熱的に見つめても、触れようとはしない。もし記憶が戻ったら、本当の夫婦に戻れる? 子どもを作れるかしら。だがまもなくして、メイブにとって衝撃的な事実が明らかになる。二人には既に赤ん坊がいた。夫はそれを、ひた隠しにしていたのだ!

■HQロマンスで長きにわたって活躍したベテラン作家キャサリン・スペンサー。なかでもひときわ印象深い、記憶喪失と夫婦元さやをテーマにした作品をお届けします。はたしてメイブの事故の真相は。なぜ夫は二人の愛の証を隠していたのでしょうか。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「あなたの家族について教えて。結婚したんだから、いまは私の家族でもあるわ。彼らもここで暮らすことがあるの?」
「そうだよ」
「いま、いるの?」
「ああ」
「ちっともそんな気配がないわ」
「実際はこのダムソーには住んでいない」
「ダム……何?」
「ダムソーさ」彼がにやりと笑うと、闇に白い歯が光った。「ダムーシの複数形だ。アラビア語ではおおざっぱに“家”と訳されるが、正確には“丸天井づくり”という意味だ。パンテレリアの家の建築スタイルや方法はほぼ同じだからね」
 一様ではないわ、とメイブは思った。どの家もアーチ状の出入口と丸屋根があり、角砂糖のような形をしているが、この島の外れの岬に立つ、彼の一族の家の持つ豪華さや上品さとはほど遠い。「では、ご家族は、いまどこに住んでるの?」
「この島だよ。妹の家はうちの隣で、両親は妹の隣に住んでいる」
「この島にいないときは?」
「正式な住まいがあるのは本社のあるミラノだ。でも向こうではここでのようにはつき合っていない。都会では僕らも両親も|最上階の部屋《ペントハウス》に住んでいるが、建物が違う。妹夫婦は郊外に山荘を持っている」
「あなたに兄弟はいないの? 妹さんだけ?」
「ああ」ダリオはうなずいた。
「妹さんには子供がいるの?」
「いるよ。でも、名前や数についてこれ以上きけば、きみは混乱するだけだからやめたほうがいい」
「わかったわ。じゃあ、ミラノにある本社について教えて。かなり巨大なものらしいけれど、正確にはどんな会社なの?」
「九十年も続く同族会社さ。コスタンツォ・インダストリ・デル・リコルソ・インターナショナリ――聞いたことがある名前かもしれない」
 メイブは顔をしかめた。「聞き覚えはないわ」
「曾祖父が一九二〇年代の初めにおこした会社さ。彼は第一次世界大戦中の悲惨さや破壊、戦争孤児について知るうちに、貧困の中で生まれた子供たちによりよい世界をつくってやることに身をささげようと誓った。彼はイタリアで誰にも顧みられない土地を買い、以前はねずみが走りまわる路地裏が唯一の遊び場だった都会にたくさんの公園をつくった」
「では、あなたは誓いを守る人間をひとりは知ってるわね」
「|ああ《シ》」ダリオは彼女のやんわりとした当てこすりに再び笑顔を見せた。「曾祖父は恵まれない子供たちのために田舎に休暇用のキャンプ場をつくるところまで構想を広げた。海も湖も見たことがないという子供たちもいるからね。それらの運営を援助し、貧しい家庭の親が毎年夏の数週間、息子や娘をキャンプへ送り出せるようにするため、彼は事業主としての才覚を富を得る方向に向けた。最初は地元に、それから近場の田舎にスキー場やゴルフ場やビーチリゾートなどを開発した。利益の一部は慈善事業のための基金の設立に使われた」
「会ってみたかったわ。とても立派な方ですもの」
「誰にきいても、そう言っていた。一九六〇年代の半ばに彼が死んだとき、うちの会社は国内でも有名な企業になっていた。いまでは世界的に認められ、恵まれない子供たちのためのさまざまな非営利団体を援助している」
「あなたは会社でどんな地位にいるの?」
「会長兼|最高経営責任者《CEO》の父の下で、上級副社長の地位にある。主にヨーロッパと北アメリカの事業を担当している」
「では、私の結婚相手は超大物なのね」
「らしいね」
 二人は石段を上がり、建物の海側に戻っていた。
「気をつけて。道がでこぼこしている」ダリオはそう言ってメイブの手を取った。
 そのとき初めてダリオは手を放すことなく、彼女の手を強く握りしめた。室内の明かりや、プールを照らすライトを除けば、その場は薄暗いブルーの月光に閉じこめられている。メイブはあまりの孤立感に、からませた指に力をこめた。「世界に二人だけが残されたみたい」彼女はつぶやいた。
 ダリオは彼女のもう一方の手をつかんで引き寄せた。「もし二人きりで残されたら困るかい?」
「いいえ」メイブは顔を上げて彼を見た。「一緒に残されるとしたら、あなたがいいわ」
 するとダリオは、メイブがこの午後に彼を見た瞬間から望んでいたことをした。頭を下げてキスをしたのだ。さっきのように頬ではなくて唇へのキス。挨拶のキスのようにそっけないものではなく、欲望を懸命に抑えた男のキスだ。
 その衝撃にメイブはよろめいた。次の瞬間、ダリオにきつく抱きしめられ、続いて彼の舌が彼女の唇の隙間から滑りこんだ。シャンパンよりも酔わせ、二人の欲望の味がした。このヴィラに着いたときから取りつかれていた喪失感が少し薄らいだ。
 ほどなくダリオは顔を上げ、メイブの体を腕の分だけ離した。彼女同様、息づかいが荒い。「今日はもう充分に知っただろう」
「まだよ」メイブはささやいた。取り残された寂しさが彼女の胸を突き刺した。「どうしても答えてほしい質問があとひとつあるわ」
「なんだい?」
「いまみたいなキスができるのに、どうして私たちの結婚はうまくいっていなかったの、ダリオ?」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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