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エターナル・ダンス

エターナル・ダンス


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆1
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著者プロフィール

 ヘザー・グレアム(Heather Graham)
 新作を出すたびニューヨークタイムズをはじめ数々のベストセラーリストに顔を出す人気作家。作品は15カ国語に訳され、発行部数は世界中で2000万部を超える。フロリダで生まれ育ち、大学では舞台芸術を専攻した。卒業してからは女優やモデルなどの職業を経験し、第三子出産後に執筆を始める。受賞歴も豊富で、テレビのトークショーに出演したり、雑誌で取り上げられたりするなど実力と人気を兼ね備えている。

解説

 フロリダ州サウスビーチで催された社交ダンス競技会の終盤、会場は混乱に陥った。華麗な演技で喝采を浴びながら、花形ダンサーのラーラが謎の死を遂げたのだ。事件は数々の疑惑を呼び、私立探偵クインはラーラが所属していたダンススタジオに潜入し極秘捜査を開始する。だが、そのときの彼には知る由もなかった第一容疑者のダンス講師をひと目見た瞬間、激しくも危険な愛が始まることを。
 ★大人気作家ヘザー・グレアムのあなたを惑わす華麗なる推理ステップ。★

抄録

 横になって数秒もたたないうちに、船室のドアをたたく音が聞こえた。
 クインは飛び起きた。遊覧船の船長がいる場所として、その部屋は比較的広くできている。それでもベッドからおりれば、ドアまでは歩くほどのこともない。
 ドアの外にシャノンが立っていた。クインのTシャツは彼女には大きすぎるようで、裾《すそ》が腿のなかばまである。化粧は落とされており、金髪がふんわりと頬にかかっていた。
「起こしてしまったかしら?」
 シャノンの声を聞いただけで、なぜこうも欲望をそそられるのかクインは不思議だった。彼女の声は、まるで触手のようにのびてきて肌をくすぐる。“起こしてしまったかしら?”その言葉はクインのなかのあらゆるものを目覚めさせた。彼は着古した厚手の生地のハーフパンツをはいて寝ていた。綿の薄いボクサーパンツにしなくてよかった、と彼は思った。
 クインはシャノンの問いに答えたかったが、声がちゃんと出るかどうか自信がなかった。
 やっとのことで「いいや」と口にしたが、どちらかというとうなり声に聞こえた。
 シャノンがそこに立っているだけで、彼女の香りがクインを包みこみ、声と同じように、むきだしの肌にふれるような感じがした。
「わたしって、なにかいけないところがあるのかしら?」とうとうシャノンがきいた。
「なんだって?」彼女は精神分析医を――夜中の物音を怖がるのは自然なことだと安心させてくれる誰かを求めて来たのだろうか?
 シャノンが顎をあげると、髪がさらさらと後ろへ流れ、クインの指はそれにふれたがってうずいた。「気になってたの、わたしにはなにかいけないところがあるに違いないって」
 クインはドアの側柱にもたれて気を引きしめ、彼女のほうへ手をのばしたい衝動を懸命にこらえた。「なんのことを言ってるのか、ぼくにはさっぱりわからないよ」
 シャノンがほほえんだ。「あなたはなぜわたしを口説こうとしないの?」
 その言葉にクインは愕然《がくぜん》とした。彼は筋肉をこわばらせ、胸のなかに炎を燃やして、長いあいだシャノンを見つめつづけた。「きみにはいけないところなんてひとつもないよ。きみは信じられないほどすばらしい。それは自分でも知っているはずだ」
「だったら……?」
「きみは酔っているね」
「酔ってなんかいないわ」
「今のきみは、いつものつつましやかなきみとは違う」
「わたしはパーティー大好き人間ではないかもしれないけど、それにしたって……ビールをたった三本よ。そりゃあ、運転はしたらいけないことになっているわ。でもビールの瓶に“警告!絶対にセックスは禁止!”なんて書いてあるのは見たことないわよ」
 クインは、笑ってシャノンを向こうの船室へ追いかえすべきか、それともすばやくこの部屋に引っぱりこむべきか、判断できなかった。どちらか一方を選ぶ代わりに、彼は腕組みをして彼女にほほえみかけた。
 やれやれ。自分の船にいながら、ぼくとセックスしたがるのはやめなさいと美しい女性に説教するはめになろうとは、いったい誰が想像しただろう。
「きみはぼくをそれほど知っているわけではない」そう言ったあとでクインは誘惑に屈した。彼はベルベットのような感触の巻き毛に沿って指をすべらせ、優美な線を描くシャノンの頬をそっと撫《な》でた。やわらかな肌を親指で愛撫《あいぶ》しつつ、彼女の目をのぞきこむ。
“きみはぼくをそれほど知っているわけではない”
 前にそれが理由でぼくが思いとどまったのはいつのことだろう。互いにどれほど知っているかを重要視して関係を持つのをやめたことが、この一年で何度あったというんだ?
 今夜はそれが重要に思える。なぜだろう?
 シャノンは二十八歳。もう子供でもなければ、世間知らずでもない。
 だが、そのことがクインを思いとどまらせているのではなかった。世間知らずは、必ずしも知識の有無と結びついてはいない。シャノンの目はもっと深いなにかを宿している。その目は大きく、表情豊かで、いつも用心深く、つつしみ深くて、そしてなにかを探っている。彼女の目は、善悪の闘いの場を、見果てぬ夢を、人間性への信頼を、芸術性と美を、真理と率直さとを映しだしている。シャノンには、クインがふれたいなにか、ふれずにはいられないなにか、ふれるのが怖いなにかがあった。彼女はまるで壊れやすいもののようだ。きっとシャノンは生まれてこのかた、こういうふるまいに及んだ経験がないのだろう、とクインは思った。かつて彼女は空を舞うように華麗にダンスをした。骨折したあとは、二度と同じように空を舞うことはなかった。何年も前にベン・トルドーに捨てられてからというもの、彼女は誰ひとり信用しなかった。そうしたことすべてを、なぜこれほど詳しく、確信を持って知っているのかわからなかったが、とにかくクインは知っていた。
 その気になれば、クインは立ち去ることができただろう。そうするべきだった。たとえどれほど苦痛であろうと、立ち去らなければならない。なぜなら、それが正しいことだからだ。だが、そのときシャノンが口を開いた。 「わたしはあなたをよく知っているわ」シャノンはささやくように言うと、今にも涙がこぼれそうな、奇妙な輝きを放つエメラルドの目で、クインの目をまっすぐ見つめた。
 シャノンはいまだに少なくとも数センチは離れて立っていた。もしかしたら数センチ足らずだったかもしれないが、ふたりは実際にふれあってはいなかった。それでいてクインは、これまでに経験がないほど官能的な愛撫を感じた。彼女の視線が彼を撫でる。空中に渦巻く濃厚な女のにおいと香水の微妙な香り、そして彼女の体が発するぬくもりがしっとりとクインを包み、下へとのびて、大胆にも彼の下腹部にしっかりとまつわりついた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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