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十八歳の憧憬

十八歳の憧憬


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジョージー・メトカーフ(Josie Metcalfe)
 大家族のなかで育ち、子供のころから本が友だちだった。書くほうに回った現在も同様で、物語の終わりにさよならを言いたくなくなるという。コーンウォールで“我慢強い”夫とともに暮らしている。四人の子供がいる。

解説

一度でいい、私を女として見て。年の離れた小さな妹じゃなく……。

誕生時に母を失ったダニーは、亡き母の親友に引き取られ、その家の息子ジョシュとは兄妹も同然に育った。だが十代になると、優しくてハンサムな彼を異性として意識し始め、18歳の誕生日に、思い余って彼にキスをしてしまう。ああ、私はなんてことをしてしまったの? ダニーは悔やんだ。なぜなら、その日を境にジョシュが彼女を遠ざけるようになったからだ。9年後、ふたりは指導医と研修医という立場で再会した。いまだ“小さな妹”扱いされつつも、ダニーは彼に恋心を募らせる。ある日、家が水難に見舞われてジョシュ宅で暮らすことを余儀なくされ、ダニーはどきどきするあまり、まんじりともせず夜を過ごすが……。

■9歳という年の差もあり、ジョシュに恋愛対象と思ってもらえないダニー。再会した今、もう18歳の少女ではないとわかってほしい――そんな彼女の願いは彼の心に届くのでしょうか?『秘密は罪、沈黙は愛』が大好評を博したジョージー・メトカーフの珠玉作!

抄録

 ダニーのからかいにジョシュは眉根を寄せた。「悪い子だ」疲れたように椅子に腰を下ろし、ダニーに椅子を勧める。「きみはぼくを小突く方法をよく心得ている。さて、廊下でのあれはなんだったのか説明してもらおう」
「ミス・露出があなたにのしかかろうとしていたときのこと?」ダニーは無邪気を装って尋ねた。久しぶりの気軽な会話がうれしくて、謝らなくてはいけないのはわかっていたが、少しでもこのひとときを引き延ばしたかった。
 ジョシュは顔をしかめただけで、何も言わなかった。ダニーが話を本題に戻すのを待っている。
「謝りたかっただけなの」ダニーは手短に言った。「廊下に突っ立って泣いてるなんて、医師としてあるまじき行為だとわかっている。もうああいうことのないように――」
「ああいうことが二度となくなったら、ぼくはひどく心配になる」ジョシュはすばやく遮った。「家族が直面している不幸に同情できない者は、ぼくの下で働いてほしくない」
「でも……」ジョシュの態度が急に変わったことにダニーはとまどった。
「仕事に感情を持ちこむのを奨励しているわけじゃない」ジョシュは続けた。「なるべくそういうことはないようにしてくれ。とはいえ、この仕事を続けるかぎり、涙を流すのは避けられないことでもあるんだ」
 ますますダニーは混乱した。「泣くのが避けられないなら、なぜさっきは厳しい言葉をかけたの?」
 ジョシュは重いため息をつき、髪をかきまわした。医師らしく整えていた髪が乱れ、散髪に一週間ほど行きそびれているらしい伸び具合が見て取れた。これ以上長くなったら、ダークブロンドの豊かな髪と自然にあせた髪筋が相まって、ライオンのたてがみに見えそうだ。
「あのときは悪かった。だが……」ジョシュは口ごもり、首を左右に振った。「きみに厳しく当たったとしたら、それはこの仕事がきみに向いているか確信が持てなくなったからだ。きみは情に厚いから、患者ひとりひとりに感情移入していたら、そのうちに身が持たなくなる」
「あなたは情にほだされないから傷つかないとでもいうの? 冗談でしょう」ダニーは信じられないというように笑った。「ジョシュ、わたしはごまかされない。あなたをよく知っているもの。春になるたび、巣から落ちた小鳥を助けていたし、車にひかれた猫を見つけたときは、あなたは折れた脚をなんとかできないかと獣医に診せに行き、わたしもついていった」結局、獣医にも手の施しようがなく、猫は安楽死させるしかなかった。あのときのジョシュの表情はいまもよく覚えている。彼は猫の死を自身の責任のように感じていた。
「昔の話だ」
 ジョシュは取り合わなかったが、引きしまった頬が赤くなるのをダニーは見逃さなかった。
「でも、あなたはわたしの知るかぎり、ほとんど変わっていない」ダニーは言い返した。「いまでもあなたは自分より小さくて弱いものを守らずにはいられない――相手が守られることを望んでいるかどうかに関係なく」そして、けっして譲らないとばかりにダニーは顎を上げて言葉を継いだ。「これからの六カ月で重要なのはその点よ。そうでしょう? 守ってもらう必要はないの。わたしはあなたがここでやっていることをありのままにすべて学んで、この分野を専門にするかどうか検討するわ」
「ああ。でも――」
「“でも”はなし」ダニーは強い口調で遮り、腹が立っているのにジョシュに惹かれてしまうのが不思議でならなかった。「あなたがどう思おうと、わたしはこれから六カ月はあなたのチームのメンバーとして全力を尽くすつもりよ。もし赤ちゃんが命を落として、わたしが鼻をかんだり目を冷やしたりしに行かなくてはならなくなったら、その時間に見合う給料を差し引いてもらってかまわない。でも、わたしを震えあがらせて追い払おうとするのはやめてちょうだい」
 ジョシュはいらいらとため息をついた。「ダニー、きみを追い払うつもりはない。ぼくたちには優秀な医師が必要だ。だが、この分野は精神的にきついから――」
「わたしには勤まらないっていうの?」ダニーはかっとなった。
「いや、そうじゃない。ただ――」
「もう充分よ、ジョシュ。まだわたしのことを糸一本で生にしがみついてる小さな赤ん坊だと思っているの?」ダニーは思わず怒鳴りそうになったが、ドアの向こうでみなが忙しく働いていることを思い出した。「わたしはもう大人よ。医師の資格を取得し、今後の専門分野を決めようとしている。ちゃんと脳みそを持っていて、その使い方も知っているわ。わたしのあとをついてまわって、転んで膝をすりむかないよう見張ってもらう必要はないの」
 ダニーはくるりと体の向きを変え、すばやくドアから外に出た。これ以上同じ部屋にいたら、人生で初めて腕力に訴えてしまいそうで怖かった。
「やっぱりいい考えじゃなかった」ダニーはプラスチックのコップに冷たい水をつぎながらそうつぶやき、冷静になろうといっきに飲み干した。
 とはいえ、ジョシュの下で働くのはキャリアの面で理想的なだけでなく、以前のような関係を取り戻す最後のチャンスだ。
 これまでのところ、近くにいることでさらに溝が深まったようにしか思えないけれど。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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