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愛を覚えていて【ハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊版】

愛を覚えていて【ハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ別冊
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 レベッカ・ウインターズ(Rebecca Winters)
 アメリカの作家。十七歳のときフランス語を学ぶためスイスの寄宿学校に入り、さまざまな国籍の少女たちと出会った。これが世界を知るきっかけとなる。帰国後大学で、多数の外国語や歴史を学び、フランス語と歴史の教師になった。ユタ州ソルトレイクシティに住み、四人の子供を育てながら執筆活動を開始。これまでに数々の賞を受けたベテラン作家である。

解説

カルは髭を剃りながら、妻と愛し合った甘い余韻に浸っていた。ダイアナとの暮らしは幸せに満ちている。子供に恵まれないことを除けば。突然鳴り出した電話が、彼を現実に引き戻した。病院の緊急治療室からだ。ダイアナが通りで転倒して頭を打ち、運び込まれたという。おまけに、赤ん坊も一緒だと。いったい何があったんだ?ダイアナはほんの30分前に家を出たばかりだ。それに、なぜ赤ん坊が一緒なのだろう。病院に駆けつけたカルを、妻はおびえた目で迎えた。愛する妻は、夫のぼくが誰だかわからないのか……。そればかりか、自分の助けた赤ん坊を我が子と思い込んでいたのだ。

■ベスト・ブック・オブ2000と題して、この年に最も話題を呼んだ傑作をお贈りします。今も絶大なる人気を誇り活躍中の大御所作家、レベッカ・ウインターズ。悲しみを忘れた記憶喪失の妻と彼女を守る夫、捨てられた赤ちゃんの3人の絆を描く感動作です。
*本書は、ハーレクイン・イマージュから既に配信されている作品のハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 カルはファール医師に一礼して、小さな病室に向かった。心臓がどきどきしていた。カーテンの中に入ると、思わず妻を抱き締めたくなった。かわいそうに。ほんの少し前まで、彼女はぼくの腕の中にいたのに。
 ダイアナは体の右側を下にして、顔をこちらに向けて眠っていた。カルの目からは後頭部のけがは見えなかった。
 彼女は家を出るときに着ていた体の線を強調するようなグリーンのワンピースの代わりに、病院のガウンを着ている。肩まである髪が扇のように枕の上に広がっていた。
 青白い顔をして、目の下にアイラインのしみをつけて眠っているダイアナはとても弱々しく、傷つきやすそうに見えた。しかし、そのほかは普段とまったく変わらない。
 よかった。
 二、三時間もすれば、家に連れて帰れるだろう。
 ダイアナは毛布の上に片腕を出していた。カルはそっと指先で彼女の肘に触れた。包帯のまわりに痛痛しいすり傷が見える。軽く触れただけなのに、彼女は不快そうに唇をゆがめて目を開けた。
「ダイアナ、気がついたかい?」カルはほっとして声をかけた。ごく自然な気持で彼女の唇にキスした。今朝、出かける前に愛し合ったときのような情熱的なキスが返ってくると思っていた。
 しかしダイアナは、なんの反応も示さない。カルはさらに唇を押しつけたまま、そっと舌で彼女の唇を開かせようとした。
「いや」ダイアナはびっくりして叫んだ。「やめてください」声を震わせ、必死で彼を押しのけた。
 これまで、ダイアナがカルを拒んだことは一度もなかった。カルはうろたえて頭を上げた。グリーンの瞳が彼を不審そうに見つめていた。その目には恐怖の色が浮かんでいる。
 本当にぼくが誰だかわからないんだ。
 まさか、そんな!
「ダイアナ。ぼくだよ、カルだ。きみの夫だよ。ダーリン、愛している……何か言ってくれ!」
 カルは彼女が歓喜の声をあげるのを待っていた。
 彼女はしばらくしてつぶやいた。「ごめんなさい。あなたが誰なのかわからないわ。悪いけれど、お医者さまを呼んでくれませんか?」彼女はベッドの横に立つ、背が高く体格のいい男性をそっと観察した。
 この人はいったい誰だろう。本人は夫のカルだと言った。そして、わたしのことをダイアナと呼び、なれなれしくキスした。
 治療室に運び込まれたあと、ファール医師はわたしをミセス・ローリングズと呼んでいる。どうやら、わたしのためにすぐに病院にかけつけてくれる家族は、夫しかいないらしい。
 その夫と名乗る男性はとても悲しそうな目をしている。髪も瞳も茶色。彫りの深い男性的な顔立ちは、雑誌の広告でよく目にするカウボーイを思わせる。でも、この人は明るい茶色のビジネススーツを着てネクタイを締め、品のいいコートをはおっている。
 いかにも自信に満ちたビジネスマンのようだ。自分自身で運命を切り開くタイプらしい。わたしは、こんな男性と結婚しているのだろうか。
 彼女は全身の毛穴から汗が吹き出すのを感じた。赤ん坊と一緒に救急治療室に運ばれたのは覚えているが、それ以前のことは何も思い出せない。
 目の前の男性が苦悩の表情を浮かべているのを見ると、つらくてやりきれなかった。かといって、彼の気持を軽くしてあげられそうもない。
 彼女はため息をつきながら、ゆっくりと視線を彼からそらした。その目が、自分の指にはまっている大きなダイヤモンドのついたエンゲージリングに釘づけになった。左手の薬指には、幅の広い金の結婚指輪。まぎれもなく、わたしは結婚しているのだ。そして、子供を作った。
 わたしの赤ちゃん!
 彼女は無性にタイラーに会いたくなった。
 どうして、誰もあの子をここへ連れてきてくれないの? 赤ちゃんは大丈夫ですよ、と先生は言っていたのに。何を手間取っているの?
 彼女は夫と名乗っている男性と一緒にいるのがいやで言った。「あの、お願いがあるんだけど」
「きみのためならなんでもするよ、ダイアナ」彼はかすれた声で言った。「なんだい?」
 彼にまわりをうろついてほしくなかった。甘ったるい口調に、息がつまりそうになる。「タイラーを探して、ここへ連れてきてくれませんか?」
「タイラー?」
 彼女は、なぜ彼が妙な顔をしたのか理解できなかった。「わたしの赤ちゃんよ!」
 大声を出したとたん、頭のうしろがわれるように痛み出し、猛烈な吐き気に襲われた。
「タイラーに会いたいの」頬に涙が流れた。「あの子にはころんだことによるけがはないと言われたけど、小児科の先生の診察で、どこか悪いところが見つかったのかもしれない」
 カルは涙に濡れたダイアナの頬に軽く唇を触れた。「すぐに戻ってくるよ」
 彼が部屋から出ていくと、彼女はほっと息をついた。もう一度でも彼が触れたり、なれなれしい態度をとったりしたら、看護師に頼んで追い出してもらうつもりだった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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