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発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫、 ハーレクイン文庫コンテンポラリー
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和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン文庫

心の鍵は誰のもの?【ハーレクイン文庫版】
著: リンゼイ・アームストロング 翻訳: 西江璃子発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫、 ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレットみんなの評価 (未評価)
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著者プロフィール
リンゼイ・アームストロング(Lindsay Armstrong)
南アフリカ生まれ。現在はニュージーランド生まれの夫と五人の子供たちとともに、オーストラリアで暮らす。オーストラリアのほとんどの州に住んだことがあり、農場経営や馬の調教など、普通では経験できない職業を経てきた。彼女の作品にはその体験が大いに生かされている。
南アフリカ生まれ。現在はニュージーランド生まれの夫と五人の子供たちとともに、オーストラリアで暮らす。オーストラリアのほとんどの州に住んだことがあり、農場経営や馬の調教など、普通では経験できない職業を経てきた。彼女の作品にはその体験が大いに生かされている。
解説
父の急死で、身寄りのなくなった19歳のニコラは、憧れの弁護士ブレットと結婚した。しかし、新婚生活は惨めなものだった。父の親友で、ニコラの後見人でもあるブレットにとって、この結婚はニコラが男友達に襲われかけた事件がきっかけで生じた、便宜的なものにすぎず、ニコラを子供扱いして、指一本触れようとしないのだ。だから、2年たってもニコラは純潔のまま――しかも彼は、別れた美しい妻にいまも想いを寄せていた。
*本書は、ハーレクイン・イマージュから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。
*本書は、ハーレクイン・イマージュから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。
抄録
「あの子は母親に似てなんでも大げさなんだ」ブレットが少し渋い顔で言った。
「本当に、最近ますます母親に似てきたわね」
「クリスは?」
「ああ、あの子はきっと父親そっくりになるわ」
「ぼくに?」
「そう、あなたによ」
「どこが?」
ニコラは考え込んだ。「頭がよくて、実務肌。サーシャが床に身を投げ出して涙にくれていたとき、あの子はこう言ったのよ。“ばかだな、サーシャ。ビデオにしたらCMを早送りできるじゃないか”」
ブレットが低い声で笑った。「たしかにぼくの血を引いてるな。サーシャはなんて答えた?」
「サーシャだって負けてないわよ」ニコラが思い出し笑いしながら言った。「こう言ったわ。“CMがあったほうがいいじゃないの、その間に飲み物なんかを取りに行けるもの。男はリモコンであっちこっちチャンネルを変えたり早送りしたりして、スポーツカーにでも乗ってるような気になってるけど、わたしはそんなの大嫌いよ”」
「そんなこと言うわけないだろう、まだ六歳だぞ」
「言葉遣いはもっと子供っぽかったけど、たしかにそう言ったのよ! 六歳にもなれば、もう男の欠点を見抜けるようになるのね。あなたもクリスもリモコンをいじりどおしだから、一緒にテレビを見ているといらいらするもの」
「おいおい、勘弁してくれよ!」
「まあ、そういうことよ」ニコラは腰を下ろし、請求書の束を引き寄せた。
「ところで、この日曜日、昼食に招待されているんだ」しばらくしてからブレットが言った。
「面白いところ? 子供たちも連れていける?」
「もちろん。メイスン夫妻だよ――何週間か前、グッド夫妻のディナー・パーティで会ったはずだ」
ニコラは眉根を寄せた。「ああ、思い出したわ。ご主人は熊みたいに大柄なひげ面で、奥さまは小柄でかわいくて、こちらが恥ずかしくなるほど開けっぴろげな人ね」そう言うと楽しげな顔になった。「たしか、あの人が新任の裁判官よね?」
「そうだ。バカンズ・ポイントの屋敷に招待されたんだ。屋敷にはビーチもプールもあるから、子供たちも喜ぶだろう」
「楽しそうね」ニコラはペンをほうり出すと大きなあくびをした。「続きはまた明日やるわ」
「疲れたのか?」
「どうしてだかわからないけど」
「カウンセリングが苦痛だった?」
「苦痛だったとすればカウンセラーのほうね」ニコラが顔をしかめた。「とても困っていたもの」
「他人にいろいろと話さなければいいが」
「それはちゃんと約束してくれたわ」
ブレットは立ち上がって伸びをした。「ニコラ、きみもゴシップ欄をにぎわすのはごめんだろう。忘れないでくれ、きみの名誉が泥にまみれないよう守る――それがこの結婚のもう一つの目的なんだぞ」
「大変ありがたきお言葉をちょうだいし――」ニコラは立ち上がると膝を曲げてお辞儀をした。「わたくしはもう休ませていただきます、閣下!」
ブレットは何も言わなかったが、その目は不意に冷たく皮肉っぽい光を帯びた。
なるべく感情をむき出しにしないように努力はしたが、やはり余計なことを言ってしまう。「時々あなたが憎らしくなるわ、ブレット」
「わかるよ」ブレットはグラスを干した。「気にならないの?」
ブレットが目を上げた。愉快そうな光の宿るその目にニコラははっと息をのみ、同時に背筋に小さな震えが走った。こんなときでさえ、体が自然に反応して震えてしまう。そんな自分が腹立たしかった。
「気にならないね。きみを見ているとサーシャを思い出すよ。あの子も、自分の思いどおりにならないと、パパ、大嫌いと言うんだ。さあ、もう休んだらどうだ? 声も顔つきも、疲れて不機嫌そうだ」
唇を噛み、脇をすり抜けようとしたニコラの手首をブレットがつかんだ。
「わかったわかった、悪かったよ! サーシャみたいだと言ったのは取り消す。売り言葉に買い言葉というやつだ。そんなに怒らないでくれ」
ブレットの体をすぐ近くに感じる。手首の上でその形のいい力強い指が動くたびに、さっきまでの小さな震えがさらに大きくなっていく。
「わかったわ、ブレット」ニコラは青ざめた顔でつぶやき、ブレットのたくましい肩から目をそらした。
ブレットが突然手を離した。「じゃ、おやすみ」
けれどもニコラはすぐには動かず、少しの間ブレットの目をのぞき込んだ。そこからはあらゆる感情がはぎ取られ、真っ白な壁を見ているようだった。
「おやすみなさい、ブレット」ニコラはやっと言うと、静かな足取りで出ていった。
ブレットはしばらくその場に立ったまま考え込んだ。この二年間折にふれて浮かんできた疑問だった。ニコラは本当に世間知らずで、自分が男たちにとってどれほど魅力的かまったく知らないのだろうか。彼女の魅力が男たちを引き寄せることはたしかだが、だからといってニコラがほかの男に関心を持つのを非難することなどできないのも事実だ。
まだ今後もニコラの成長を待たねばならないのだろうか? それとも、尊敬していた人物の娘の身を守るためというこの結婚が思った以上にうまくいったということか? 象牙の塔に閉じ込めて?
ブレットはしばらく宙を見つめていたが、やがて肩をすくめた。
*この続きは製品版でお楽しみください。
「本当に、最近ますます母親に似てきたわね」
「クリスは?」
「ああ、あの子はきっと父親そっくりになるわ」
「ぼくに?」
「そう、あなたによ」
「どこが?」
ニコラは考え込んだ。「頭がよくて、実務肌。サーシャが床に身を投げ出して涙にくれていたとき、あの子はこう言ったのよ。“ばかだな、サーシャ。ビデオにしたらCMを早送りできるじゃないか”」
ブレットが低い声で笑った。「たしかにぼくの血を引いてるな。サーシャはなんて答えた?」
「サーシャだって負けてないわよ」ニコラが思い出し笑いしながら言った。「こう言ったわ。“CMがあったほうがいいじゃないの、その間に飲み物なんかを取りに行けるもの。男はリモコンであっちこっちチャンネルを変えたり早送りしたりして、スポーツカーにでも乗ってるような気になってるけど、わたしはそんなの大嫌いよ”」
「そんなこと言うわけないだろう、まだ六歳だぞ」
「言葉遣いはもっと子供っぽかったけど、たしかにそう言ったのよ! 六歳にもなれば、もう男の欠点を見抜けるようになるのね。あなたもクリスもリモコンをいじりどおしだから、一緒にテレビを見ているといらいらするもの」
「おいおい、勘弁してくれよ!」
「まあ、そういうことよ」ニコラは腰を下ろし、請求書の束を引き寄せた。
「ところで、この日曜日、昼食に招待されているんだ」しばらくしてからブレットが言った。
「面白いところ? 子供たちも連れていける?」
「もちろん。メイスン夫妻だよ――何週間か前、グッド夫妻のディナー・パーティで会ったはずだ」
ニコラは眉根を寄せた。「ああ、思い出したわ。ご主人は熊みたいに大柄なひげ面で、奥さまは小柄でかわいくて、こちらが恥ずかしくなるほど開けっぴろげな人ね」そう言うと楽しげな顔になった。「たしか、あの人が新任の裁判官よね?」
「そうだ。バカンズ・ポイントの屋敷に招待されたんだ。屋敷にはビーチもプールもあるから、子供たちも喜ぶだろう」
「楽しそうね」ニコラはペンをほうり出すと大きなあくびをした。「続きはまた明日やるわ」
「疲れたのか?」
「どうしてだかわからないけど」
「カウンセリングが苦痛だった?」
「苦痛だったとすればカウンセラーのほうね」ニコラが顔をしかめた。「とても困っていたもの」
「他人にいろいろと話さなければいいが」
「それはちゃんと約束してくれたわ」
ブレットは立ち上がって伸びをした。「ニコラ、きみもゴシップ欄をにぎわすのはごめんだろう。忘れないでくれ、きみの名誉が泥にまみれないよう守る――それがこの結婚のもう一つの目的なんだぞ」
「大変ありがたきお言葉をちょうだいし――」ニコラは立ち上がると膝を曲げてお辞儀をした。「わたくしはもう休ませていただきます、閣下!」
ブレットは何も言わなかったが、その目は不意に冷たく皮肉っぽい光を帯びた。
なるべく感情をむき出しにしないように努力はしたが、やはり余計なことを言ってしまう。「時々あなたが憎らしくなるわ、ブレット」
「わかるよ」ブレットはグラスを干した。「気にならないの?」
ブレットが目を上げた。愉快そうな光の宿るその目にニコラははっと息をのみ、同時に背筋に小さな震えが走った。こんなときでさえ、体が自然に反応して震えてしまう。そんな自分が腹立たしかった。
「気にならないね。きみを見ているとサーシャを思い出すよ。あの子も、自分の思いどおりにならないと、パパ、大嫌いと言うんだ。さあ、もう休んだらどうだ? 声も顔つきも、疲れて不機嫌そうだ」
唇を噛み、脇をすり抜けようとしたニコラの手首をブレットがつかんだ。
「わかったわかった、悪かったよ! サーシャみたいだと言ったのは取り消す。売り言葉に買い言葉というやつだ。そんなに怒らないでくれ」
ブレットの体をすぐ近くに感じる。手首の上でその形のいい力強い指が動くたびに、さっきまでの小さな震えがさらに大きくなっていく。
「わかったわ、ブレット」ニコラは青ざめた顔でつぶやき、ブレットのたくましい肩から目をそらした。
ブレットが突然手を離した。「じゃ、おやすみ」
けれどもニコラはすぐには動かず、少しの間ブレットの目をのぞき込んだ。そこからはあらゆる感情がはぎ取られ、真っ白な壁を見ているようだった。
「おやすみなさい、ブレット」ニコラはやっと言うと、静かな足取りで出ていった。
ブレットはしばらくその場に立ったまま考え込んだ。この二年間折にふれて浮かんできた疑問だった。ニコラは本当に世間知らずで、自分が男たちにとってどれほど魅力的かまったく知らないのだろうか。彼女の魅力が男たちを引き寄せることはたしかだが、だからといってニコラがほかの男に関心を持つのを非難することなどできないのも事実だ。
まだ今後もニコラの成長を待たねばならないのだろうか? それとも、尊敬していた人物の娘の身を守るためというこの結婚が思った以上にうまくいったということか? 象牙の塔に閉じ込めて?
ブレットはしばらく宙を見つめていたが、やがて肩をすくめた。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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