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白の情熱

白の情熱


発行: ハーレクイン
レーベル: MIRA文庫mirabooks シリーズ: アイス・シリーズ
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

 弁護士のジュヌヴィエーヴは、クライアントである大富豪ハリーのサインをもらいに、停泊中の彼のクルーザーに立ち寄った。やがて現れたピーター・ジェンセンという個人秘書は不自然なほど地味な男だったが、ジュヌヴィエーヴは妙に彼のことが気にかかる。実はピーターはハリーの命を狙う組織の殺し屋であり、今回クルーザーが向かうのはまさにハリーの“処刑地”なのだ。まずい時にまずい場所に居合わせたという理由で、暗殺リストに名を連ねたジュヌヴィエーヴ。はたして彼女は本当にピーターの標的になるのか、それとも……?

抄録

 ジュヌヴィエーヴ・スペンサーについてはロンドンに照会ずみだったが、“委員会”側はとくに急いで情報を集める様子もなく、暗中模索の状態が続いていた。彼女についてもう少し情報があれば判断もしやすいのに。
 いずれにせよ、彼女がどんなセックスを好むのか――それとも好まないのか――あれこれ想像している時間はない。いまは任務に支障を来すことなくなんとかして彼女を船から降ろす方法を考えなくてはならない。一般人の犠牲は極力避けなければ。ピーターはそう思いながら、乗組員用のせまい通路をふたたび曲がった。
「その靴は脱いだほうがいいかもしれません、ミズ・スペンサー」ピーターは例によって淡々とした声で助言した。「少し波が立ってきたようです。船酔いの薬はご入り用ですか?」
「だいじょうぶ、船に酔ったことはありませんから」彼女はそう答えつつも助言に従い、通路の壁にもたれながら、ばかばかしいほど高価な靴を脱いだ。もともと長身だが、ハイヒールのおかげで身長はさらに八センチほど高くなっている。鎧《よろい》の一部を脱いだ彼女は、より人間らしく傷つきやすそうに見えた。人間らしい弱さを目にするのはあまり好きではない。
「一度も?」ピーターは訊きかえした。「てっきり船が苦手なタイプかと。そういう方は、やはり船酔いしやすい傾向にあるものですし」
 相手のまなざしが急に険しくなるのを目にして、ピーターはいま口にしたことを後悔した。船が苦手なことに気づいていても、わざわざそれを指摘する必要はない。いまのは完全に失言だった。
「閉じこめられているように感じるのが嫌なの」ジュヌヴィエーヴはこわばった声で言った。
「じゃあ、この通路は最悪でしょう」とピーターは言った。またしても失言。長くせまい通路の照明は、雰囲気が出るというハリーの意向で薄暗く設定されている。閉所恐怖症に悩む者なら、いつ過呼吸の発作を起こしてもおかしくない。
「そうね。でも、なにかが嫌いだからといって、いつもそこから逃げるとは限らないわ」
 ピーターは思わず笑みがこぼれそうになるのをこらえた。その口調はクールなキャリアウーマンというより、負けず嫌いの子どものように聞こえる。「これからでもボートは用意できますが」
「ひょっとしてわたしを追い払おうとしてます、ミスター・ジェンセン?」
 必要以上にワインや安定剤をのんでいるわりには、鋭い指摘だった。それにしても、なんてやわらかそうな唇なんだろう。こちらを見つめる栗色《くりいろ》の瞳にはいまにも吸いこまれそうで、一瞬、自分がほかの誰かであったらと心から思った。スパイという立場にある自分以外の人間であるなら、誰でもかまわない。間違いを犯せばあとで代償を払うことになるが、いまはそんなことはどうでもよかった。
 ‘自分はきみの命を救おうとしてるんだよ’。あえてそんな言葉を口にすることもなく、ピーターは彼女の首に手を伸ばした。指先が肌に触れた瞬間、彼女ははっと身をこわばらせたものの、すぐに落ちつきを取り戻して、すっぽりと顔を包みこむような長い指を受け入れた。「このわたしにもロマンティックなところがあってね」ピーターはかすかに微笑《ほほえ》み、身を屈《かが》めてジュヌヴィエーヴにキスをした。
 なんてすてきな唇だろう。できることならこのままずっとこの唇に溺《おぼ》れていたい。意表を突かれて驚いているのか、見た目以上に酔っているのか、彼女はただ壁にもたれ、されるがまま身をまかせている。このチャンスを逃す手はなかった。ピーターはゆっくりと充分に時間をかけ、やわらかなその唇を味わいはじめた。こんなふうに悦《よろこ》びに身をゆだねるなんて、ずいぶん久しぶりのことのように思える。そして最後に耳元に唇を押しあてた瞬間、彼女は全身の力を失って腕のなかにどさりと崩れ落ち、そのまま気を失った。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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