マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

シチリア、愛のめざめ

シチリア、愛のめざめ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
購入する


著者プロフィール

 レベッカ・ウインターズ(Rebecca Winters)
 アメリカの作家。十七歳のときフランス語を学ぶためスイスの寄宿学校に入り、さまざまな国籍の少女たちと出会った。これが世界を知るきっかけとなる。帰国後大学で、多数の外国語や歴史を学び、フランス語と歴史の教師になった。ユタ州ソルトレイクシティに住み、四人の子供を育てながら執筆活動を開始。これまでに数々の賞を受けたベテラン作家である。

解説

愛に恵まれない花嫁は逃げ出した。まだ見ぬ運命の人が待つほうへ――

トゥッチアには16歳のときに両親が決めた許婚がいた。相手は裕福だが、冷酷で計算高く、女好きの中年伯爵。9年後の結婚式の前日、彼女はかねてより計画していた逃亡を決行した。トゥッチアの失踪は世間を騒がせ、警察の捜索も始まったが、彼女に同情した伯母の助けによりシチリアの知人宅にかくまわれる。夜分、暗闇で何者かにぶつかり、たくましい腕に抱きとめられた。その正体は、家主の息子で大富豪のチェーザレ・ドナーティ。恥ずかしさに部屋へ駆け戻ったトゥッチアは、なぜか胸騒ぎを覚えた。一方、チェーザレは彼女が新聞を賑わしている女性だと気づいて、勝手知ったるミラノの古城へ彼女を連れ去ろうと一計を案じ……。

■ハーレクイン・イマージュを牽引する大御所作家R・ウインターズが贈る、イタリア大富豪と逃げ出した花嫁のみずみずしい純愛物語。シチリア、ミラノなどロマンティックな舞台にたっぷり浸れます。『銀の瞳の公爵』と『ギリシアのすみれ色の花嫁』の関連作です!

抄録

 玄関ホールに入ってポーチの明かりを消し、真っ暗な中、スーツケースを手にストーンタイルの上をキッチンへと向かった。荷物を置くと、さっそくイタリアの伝統的な食後酒、グラッパの小瓶をいつもの棚から取り出した。あとはその酒を持って二階の自室に上がり、寝る前に少し飲んで、故郷に戻った感慨にひたるだけだ。
 ところがスーツケースを持とうとして振り返った瞬間、誰かとぶつかり、あっという女性の声がした。
「母さん?」チェーザレは反射的に抱きとめた。「|ごめんよ《ミ・デイスピアーチエ・タント》。こんな遅くまで起きているとは思わなかった。けがはない?」
 そのとき、酒瓶が手から滑り落ち、床で割れた。だがアルコール度数六十度の強い芳香が気にならないくらい、腕に抱いた女性の感触に衝撃を受けた。
 堅い褐色の髪の母ではなく、週に何度か来ている家政婦でもなかった。今抱きとめている女性はその二人より背が高い。もっと驚いたのは、うっとりするような花の香りが髪や肌から立ち上ったことだ。
 一拍おいて落ち着きを取り戻し、口を開く。「動かないで。ガラスが割れている。今明かりをつけるから」ドアのところまで行ってスイッチを入れると、さらなる衝撃が待っていた。
 魔法を解いて美しい姫を瓶から解放したのかと一瞬思った。魅力的な体をレモン色のシルクのローブが包んでいる。スリッパをはいているのを見てほっとした。肩にかかるカールした黒い髪や、海にかかる朝靄のような灰色の瞳に目を惹きつけられながらも、なんとか全身を見まわし、見覚えのある女性だと気づいたが、どこで見たのか思い出せない。
 女性は驚いた顔でチェーザレを見つめ返し、酒でぬれた場所から数歩あとずさって喉に手を当てた。「チェーザレね」呆然としてつぶやく。
「あいにく僕には君が誰かわからない」これは風変わりな夢なのか? だとしても、まだ目覚める気配はない。急いで掃除用具入れから雑巾とほうきを取り出し、ガラスの破片を拾って床をきれいにした。
「トゥッチアです。驚かせてごめんなさい」
 トゥッチア。珍しい名前だ。
 そうか、トゥッチアというのは愛称で……シチリアの侯爵令嬢のプリンセス・トゥッチアンナか?
 ここ何年か、彼女の顔写真はたびたび新聞で見かけていた。書かれているのはたいてい友人とトラブルになって屋敷を飛び出した顛末で、そのあと地元のクラブで騒いでいるのが目撃され、侯爵夫妻が頭を抱えたという内容だった。だが、こんな間近で本人を見るのは初めてだ。
 パレルモの新聞にのった最新のニュースによれば、フランスでも指折りの大富豪で、パリに住む伯爵と結婚するというが……。
 まさか。だが、どう見ても彼女だ。
「申し訳ないが、その名前には聞き覚えがないな」とりあえずごまかし、シチリア王家の流れをくむ侯爵夫妻の娘がなぜ母の家にいるのか、その理由を探ることにした。
「そうでしょうね。普通の名前じゃないから」
 どうやらはぐらかす気らしいが、チェーザレは真相が知りたかった。「母が雇ったメイドかな?」
 彼女は目をそらした。「いいえ。シニョーラ・ドナーティにひと晩泊めてもらったんです」チェーザレは眉根を寄せた。そんな話は聞いていない。母はなぜ彼女がいることを言わなかったんだ? 「私、あの……物音がしたので来てみたら、明かりをつける前にぶつかってしまって」
「ああ。お互いに驚いたね」転びそうになってしがみついてきた彼女の体の感触がよみがえり、いまだに頭がくらくらする。
 何人もの魅力的な女性とさまざまな形でつき合ってきたチェーザレだったが、本気になった経験は一度もない。なのに、美しいプリンセスの肌に触れ、ボッティチェリの絵画で見るような顔立ちを目の前にして、今はすっかり落ち着きを失っている。
「お母様は世界一すばらしい方ね」唐突に発せられた思いもよらない言葉に、彼はもの思いから覚めた。心からそう思っているのが声の調子から伝わってくる。
 ますます興味をかき立てられたチェーザレは、掃除用具入れの扉を閉めて彼女のほうを向いた。「僕もそう思っている。母とはどういう知り合い?」
 その質問は彼女をとまどわせた。「それはお母様にきいてください。お邪魔してごめんなさい。おやすみなさい」逃げるように彼女が立ち去ると、あとには花のような香りと疑問ばかりが残った。すっかり眠気は吹き飛び、チェーザレはその場に立ち尽くした。
 プリンセスは甘やかされて育った手に負えないわがまま娘だと言われているが、今見た彼女は上品で礼儀もわきまえていた。しかも、飾らない魅力に早くも心を奪われてしまっている。
 チェーザレは深く息を吸った。母を起こしたくはないが、事情がわかるまでは眠れそうにない。母の寝室に行く前にもう一本グラッパをもらおうと棚を開けたが、使いかけの料理酒があるだけだった。
 明かりをつけなかったせいで飲みそこねた。おまけに、あの一瞬の記憶が頭から離れそうにない。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。