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春を待ちながら【ハーレクイン・セレクト版】

春を待ちながら【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・スペンサー(Catherine Spencer)
 三十数年前にイギリスからカナダのバンクーバーに移り住む。英語の教師からロマンス作家に転身。カナダ人の男性と結婚し子供にも恵まれ、現在は孫もいる。あいた時間があれば、ピアノを弾いたり、アンティークショップをのぞいたり、庭の手入れをしたりしている。

解説

イタリア人実業家ベネディクト・コンスタンティーノに、カサンドラは出会ったその瞬間から魅了された。あるパーティの夜、二人は結ばれ、彼女は妊娠。約束のない情事だったが、ベネディクトは結婚を申し込み、彼女はためらいながらもイエスと言った。彼を愛していたから。だが、ベネディクトのイタリアの大邸宅には彼の母親がおり、カサンドラははじめから、あからさまに激しい敵意を向けられる。そしてある日ついに、身重の若妻は階段から突き落とされたのだ!家を重んじる夫に、義母から危害を加えられたとはとても言えない。結婚は間違いだったの……? カサンドラは涙ながらに家を出た。

■互いをよく知る前に妊娠、結婚したヒロインの苦悩が描かれます。カサンドラと子どもの運命は?そして、夫ベネディクトのとった行動は?感動必至のエンディングまでいっきに読ませます!
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 嘘が通るなら“いいえ”と言うところだ。だが彼はもうパトリシアへの打ち明け話を聞いている。聞かなくても、昨今では、父親である臨床上の動かぬ証拠をつかむのは簡単だ。「あなたの子供よ」
「では僕らが次に打つ手は決まりだ。結婚する」
「結婚?」キャシーはヒステリックな笑いで喉をつまらせた。「冗談言わないで!」
「妻を迎えることで? まさか!」
「じゃあ、気が変になっているのね。私たちが結婚だなんて……絶対に不可能よ」
「ご主人がいるのか? それを今まで隠していたのかい?」
「そんなこと、するわけないでしょう!」
「僕も独身だし、それなら結婚するのは可能だよ」
「いいかげんにして。私たちが一緒に過ごしたのはたった一度……それも三カ月近く前よ。あれ以来、一度の連絡もよこさなかったくせに」
「外国にいたんだ」
「でも私は毎日ここにいたのよ! 電話は全世界に通じるわ。Eメールも。なのにあなたはどちらも使わなかった。つまりあなたにとって、私が視野にいないということは、心にいないことだと考えるほかないわ。そんな状態で、あなたに結婚を求められても、ばかげていると思うのは理解できるはずよ」
 ベネディクトは自身の短くてしみ一つない爪を眺め、満足した様子でキャシーに目を戻した。「求めるという問題じゃない。僕の義務だ」
 再び彼女を泣きたい気持ちにさせたのはその言葉ではなく、静かであきらめのこもった口調だった。彼に鋭い針で心臓を刺されたようなものだ。顧客との契約の交渉でも、もっと人情がこもっている!
「義務で結婚する夫などいらないわ」
「夫に何を求めるんだ、カサンドラ?」
「愛とか友情とか、献身とか情熱よ。どれもあなたにあるとは思えないけれど」
「どれも? 去年のニューイヤーズイヴに僕たちがどれほど情熱的だったかおぼえていないのか?」
 おぼえていない? 押し寄せてくる|既視感《デジヤビユ》の中で顔が赤くなるほどあがいていなければ、そんな愚問に笑ってしまうところだ。ほかのどういう要因が欠けていようとも、情熱は確かにあった。「ええ。それも私がさっき言ったように、一度だけだったわ」
「それでも、この話題は今も君を燃え立たせる。あれ以上の情熱を約束する。君がパトリシアにあれほど明快に言ったように、僕は赤い血を持つ普通の男だ。そして君は、厳密にはもうヴァージンではないが、多くの意味でセックスの力も知らないうぶな面を残している。セックスはもっとも反抗的な人間を服従させるし、いちばんそりの合わない夫婦を結びつける」ベネディクトは横のテーブルからアールデコ調の女性の彫像を取り上げ、まぶたから喉まで指でたどった。「それを君に教えることは、僕にとって非常な名誉になるだろうね」
 愛撫されているような気がして、キャシーは顔がさらに赤くなり、ほてりが全身に広がるのを感じた。
“ときには”産科医は今後六カ月半、すべてが順調に進めば期待できることを列挙しながら告げた。“妊娠中セックスにすっかり興味をなくす女性がいます。その一方で、貪欲になる人もいます”
 私は後者かしら。キャシーは陰気な気持ちで考えた。この屈辱に終わりはないのだろうか。私はすでにあるもので満足できないの?
 腰のあたりが帯電したように脈打つのをいまわしく思いながら、彼女は椅子の中でもじもじした。ベネディクトがにやりとした。悟ったのだ!
「あなたとこういう話をしたくないの。まして、今ここでは」
「わかった」小さな像を戻して、ベネディクトは立ち上がった。「では、続きは今夜話そう。よければ僕が泊まっているホテルのスイートで二人だけのディナーを手配する。それとも君の家に行こうか?」
 どちらも選びたくない。だけど決意の漂うあごの線は、会うのを断ったら、次回オフィスに足を踏み入れるのを待ち伏せするまでだと語っている。次はこんなに控えめではなさそうだ。
 キャシーはペンをつかんでメモ用紙に走り書きをした。ページをはぎ取って突き出し、歯ぎしりしながら言う。「これがうちの住所よ」
 自宅なら少なくとも主導権は握れる。彼にうんざりしたらドアを指させばいい。
「何時に?」
「七時よ。でも凝ったお料理は期待しないで。今の私にとって食事時間はちょっとした試練だから」
「わかった」ベネディクトはうなずいた。キャシーは彼がドアに直行して出ていくだろうと思った。だが、彼は机を回って近づいてきた。
 むかむかする胃が許すかぎり素早く、キャシーは椅子から飛び出した。二十センチ以上背の高い彼にのしかかられなくても、不利なのは充分感じている。
「さようなら」キャシーは右手を突き出した。彼の子供を宿し、彼がプロポーズをしたばかりなのを思えば、こっけいなしぐさかもしれない。だが形式ばった態度を保つほうが安全だ。
 あいにく、彼は違うことを考えていた。といっても最初キャシーは気づかなかった。ベネディクトは握手するのではなく彼女の手を裏返して頭を下げ、手首のちょうど脈打つ箇所にキスをした。
 キャシーの血は激しく騒いだ。ベネディクトが彼女の握り締めた指をたやすく開いて、手のひらにもっとゆっくりキスをしたとき、キャシーは抑えた叫び声をもらした。彼がわずかに頭を上げ、まばたきをすると、まつげが彼女の腕をこすった。「|さよなら《アリヴエデルチ》、カサンドラ」そうささやくと、一瞬後、彼の後ろでドアがかちっと閉まった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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