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隠れ公爵と清らな花

隠れ公爵と清らな花


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジャニス・プレストン(Janice Preston)
 ロンドン北西部の町ウェンブリー出身。読書、物語の創作、動物をこよなく愛する子供で、当時から大人になったら作家になりたいと公言していた。その夢は多感な時期にいったん熱を失うが、読書と歴史への愛は冷めず、とりわけジェイン・オースティンやジョージェット・ヘイヤーの小説が英国摂政期に興味を持つ原動力となった。情感豊かなリージェンシーを得意とし、本国ヒストリカル・ファンの間でも高い評判を得る人気作家。

解説

公爵とは知らずに捧げた、ただ一度の愛だったのに……。

平民の父を持つロザリンドは、母方の親戚の貴族たちに疎んじられ、そのつらい経験のせいで上流階級を避けて生きてきた。足の不自由な弟と幼い義理の弟妹のため、結婚もとうにあきらめていた。ある日、優しかった継父の死を機に、あくどいおじに家を奪われ、逃げた先で美しい銀の瞳の旅人レオと出会って心を通わせる。だがいずれロンドンへ帰る彼を思い、ロザリンドは胸を締めつけられた。そして生涯でただ一度だけ、愛しい人に身を捧げることを自分に許すが、ロザリンドが無垢だとわかるやいなや、レオの態度が豹変した。じつは公爵の彼は、自分に群がる女たちに辟易し、こう思っていた――彼女も僕の身分を知って、公爵夫人になるために誘惑の罠を張ったのか!

■親戚やその周囲の非難がましい貴族たちと顔を合わせ、蔑まれ冷遇されることを考えると、今も怖くてたまらないロザリンド。そんな彼女は、愛を捧げたとたんに冷たくなったレオとロンドンで運命の再会を果たし……。大好評を博した『伯爵と壁の花』の関連作です。

抄録

「お手伝いしてくださるかしら?」その言葉は、食いしばった歯の間から発せられたように聞こえた。
 レオは彼女には見えないと思ってにんまりした。「もちろん。でもその前に、言い訳させてほしい」
 ミセス・プライスは振り返り、飛びかかろうとする雌ライオンのように目を細めた。「困っている私を、そんなに面白がってもらえるなんて嬉しいわ」
 レオは真顔になった。さっきの短い言葉のどこから、それがわかったんだ?
 ミセス・プライスは腕組みした。「さあ、どうぞ」
「僕が自分のためにならない友達の選び方をしていると言われるのは仕方ないが、本人には選べない家族のことでも、君は簡単に人を非難するのか?」
「家族? あなたはあのご近所さんと親戚なの?」
「そう、いとこだ。親しくはないが」
 ミセス・プライスの唇に皮肉な笑みが浮かんだ。「よりによって私が、親戚のことで人を非難できないわ。それでも、いとこさんのもてなしを受けることを選んだのはあなたでしょう」
「確かに。いとこは長年アメリカに住んでいた。数カ月前にイギリスに戻って、弟と僕を数日間の狩猟に誘ってくれたんだ。断るのは失礼な気がしてね」
「もう一人のお友達のミスター・スタントンは?」
「彼は新妻の馬車用に安全なポニーを探していて、この近所で二頭が売りに出ていたんだ」
「なるほどね」
「君の家族は?」レオはたずねた。「君にも好きになれない親族がいるような言い方だったけど」
「私の直接の家族は気持ちのいい人たちよ」
「つまり、感じの悪い親戚がいるのは認めると?」
「一人、二人ね」
 ミセス・プライスはレオから半分体を背けて、カマルのほうを向き、肩越しに振り返って片眉を上げた。レオはその無言の指示には構わず、彼女が手にしている手紙を指さした。
「それは親戚からの手紙か?」
 ミセス・プライスの指が曲がり、紙が音をたてた。
「感じの悪い親戚からではないわ。それなら喜んで川に流したでしょうし、今頃……」再びレオのほうを向く。「こんな会話もしていなかったでしょうね」彼女はレオの体をゆっくり眺め下ろし、その視線の通り道に欲望の熱い跡が残った。視線がブーツに留まる。「ブーツを脱いで水を出したらどう?」
 冷たさのせいで足首から下の感覚がなくなっていたため、レオはぜひともそうしたかったが……。
「手伝ってもらわないと、脱ぐのに苦労しそうでね。もちろん、君が手伝ってくれるなら話は別だが?」
 ミセス・プライスは眉を、そして視線も上げ、レオの目をじっと見た。「それは礼儀にかなっているとは言えないわ。あなたとは親しくないのだから」
「それはそのうち解消できる」
 レオは足を踏み出し、自分と馬の間にミセス・プライスを挟んだ。かすかな女らしいあえぎ声に耳をくすぐられて心臓がどきんと音をたて、長い間感じていなかった切望が呼び覚まされた。ミセス・プライスを観察する。きめ細かな乳白色の肌、桃色に上気した頬、筋が通った細い鼻、官能的なピンクの唇、美しい金茶色の眉。目は長いまつげに縁取られ、輝きながらレオの目を見つめていた。その奥に見えるのは好奇心だ。恐怖や不安はうかがえない。
 レオは手袋を外し、指先で彼女のあごに触れた。肌は絹のようになめらかで、柔らかく温かい。ジャスミンと熱い女性の香りがレオの感覚に染み入り、下腹部に血が押し寄せた。ミセス・プライスはすばやく息を吸い込み、うつむいて視線をそらした。
 レオが一歩下がると、彼女はぱちりと目を開けた。その視線は問いかけるように、再びレオの視線を探り、レオは励ますようにほほ笑んだ。急ぐ必要はない。未亡人なのだろうが、急かすつもりはなかった。長年の間に、前段階となる入り組んだダンスや期待感が、行為そのものと同じくらい楽しいことを学んでいた。先延ばしにするほど快感は高まるのだ。
 出会いの瞬間は一度しかない。
 初めてのキスは一度しかない。
 初めての夜は一度しかない。
 それらは堪能すべき時間なのだ。
 レオはミセス・プライスの脇腹に両手を差し入れ、ウエストのくびれへと手のひらをすべり下ろした。手に力を込めて体を持ち上げ、ウエストの細さと女性らしい曲線を描く腰を記憶に刻みながら、鞍に乗せる。ミセス・プライスは鞍頭に足を引っかけ、スカートを直して、濡れそぼった帽子をアラブ馬の背骨の盛り上がりに置いてから、最後にあの手紙を身頃の中に押し込んだ。感情のうかがえない目でレオを見たあと、カマルを橋に向かわせる。だが、十歩ほど歩いたところで馬を止め、向きを変えた。
「ミスター・ボイトン、私の家はそう遠くないの。一緒に来てブーツを乾かしていかない? このままじゃ凍えてしまうし、勇敢にも私の帽子を引き上げてくれたせいで風邪をひかれるなんていやだもの」
 ぱっと輝くような笑顔に、レオの欲望は高まったが、戯れの楽しみを断ちきったミセス・プライスに、さざ波のような失望も感じていた。それでも……レオは心の中で肩をすくめた。断ろうとは思わない。すてきな女性だし、その気もありそうだ。
「ありがとう。そうさせてもらえると助かるよ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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