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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル

夏の夜の悪夢

夏の夜の悪夢


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジュリエット・ランドン(Juliet Landon)
 イギリス北部の古代の面影を残す村に、引退した科学者の夫とともに住む。美術や歴史に対する興味が旺盛で、豊かな想像力が生きると思い、ヒストリカルの小説を書き始めた。作品を執筆するために調べ物をするのはとても楽しいと語り、特に中世初期がお気に入りの時代だという。刺繍について豊富な知識と技術を身につけ、その腕前はプロとして講師を務めるほど。

解説

 フェリースは義父が新たに造った別荘の様子を見るため、都会を離れて郊外にやってきた。別荘の工事を仕切る建築家サー・レオンは傲慢な人物だというが、私は、一人でここでの夏を存分に楽しみたいだけだ。その夜、不審な男を見つけて追いかけたフェリースは、逆に相手に組み敷かれ、もみ合ううちに思わずキスをかわしてしまう。見ず知らずの人だけれど、こんなすてきなキスは生まれて初めて……。うっとりしたものの、正気に返ってその場を逃げ出した彼女は、翌朝、部屋に現れたサー・レオンを見て思わず息をのんだ。もう二度と会うことはないと思っていた昨夜の男性だわ!

抄録

 胸の内で混乱と怒りと恐怖が叫びをあげ、フェリースはみぞおちのあたりが苦しくなるのを感じた。男は今や、フェリースのベルトの大きな銀のバックルに手をかけ、彼女の弱さをあざけるように革ひもをゆるめはじめている。
「やめて」フェリースは身をよじりながらささやいた。「やめて……お願い!」
 男は手を止めたが、その声は笑っていた。
「やめてくれだって? なにをだ? 自分がだれか話すつもりはないんだろう? 君は月の精か?」
「いいえ」フェリースはふたたびささやくような声で答えた。沈黙を破ってしまったからには、強く主張するべきだ。「放して。お願い」
 男はフェリースの耳に唇を寄せ、からかうようにささやいた。「それなら、君が人間だという証拠を見せてくれ。人間に危害を加えない、消えてなくなったりしないということを証明してくれ」
 この人はいったいなんの話をしているの? 人間に危害を加えない、消えてなくなったりしない証拠を見せろですって! 黙って聞いているうちに腹が立ってきて、手首がずきずき痛みだすのを感じた。フェリースは身をよじって、どこでもいいから男の体に噛みつこうとしたが、相手は彼女の手首をつかむ手に力を込め、空いているほうの手でリネンのシュミーズをブリーチズからそっと引きだした。
 フェリースは恐怖に襲われ、体がふたたび麻痺《まひ》したように動かなくなるのを感じた。
「だれの差し金で来た? だれの下で働いているんだ?」
 男はフェリースのむき出しになった肌の上で手を止めたままだったが、フェリースがふたたび沈黙を守っているとわずかに体の位置を変え、彼女の体を横向きにさせて、鋼のように力強い腕で彼女の頭を自分の肩に押さえつけた。
 あとでこのときのことを思いだしたら、なぜ声をかぎりに叫ばなかったのか不思議に思ったはずだ。だがフェリースは恐怖に震えるどころか、期待と興奮に胸がざわついていた。暗かったから、とあとで言い訳することもできただろう。男の唇がフェリースの唇をおおったとき、男の顔は見えなかった。未婚の、しかも貴族の娘なら死にものぐるいで抵抗すべきなのに、長く暗い秋と冬のあいだ眠っていた情熱にふたたび火がつき、いつの間にかフェリースから抵抗する意志を奪っていた。
 もちろん、そんなことが言い訳にはならないのはわかっている。だが、ほかに説得力のある答えが見つからなかった。それに、この見知らぬ男にふたたび会う可能性はほとんどないように思えた。そのとき、ほんの一瞬でもその可能性が頭をよぎったなら、フェリースは男の巧みなキスに応じたりせずに、ひと思いに男を殺していたにちがいない。
 フェリースはキスの経験がないわけではなかったが、男のキスは巧みだった。いつしか進んで応《こた》えていたフェリースは、男の手が上に動き、胸のふくらみに触れたのにもほとんど気づかなかった。男は慣れた手つきでフェリースの胸のふくらみを探りながら、キスで彼女を酔わせ、いっさいの抵抗を封じた。うめいて男に体を押しつけたフェリースは、男の温かい手に胸のふくらみを愛撫《あいぶ》されると、もはや男に危害を加えようという意志はなくなり、両腕をだらりと脇《わき》に垂らして、男のなすがままになった。
 フェリースは無意識のうちに男とだれかをくらべている自分に気づいていたが、頭のどこかで、この機会を生かすのよ、という声がしていた。彼女はこのチャンスを逃すまいと貪欲《どんよく》に男を求め、惜しみなく与えて男を驚かせた。これほどまでに激しい欲望を感じたのは生まれて初めてだった。この見知らぬ男がだれかの身代わりであるなどとは、彼にはわかるはずもない。
 男はすぐに反応して、フェリースの体をひんやりとした草むらの上に仰向けにさせた。そして、彼女の上におおいかぶさり、冷静な声でよく考えるようにとささやいた。信じられないことに、男はフェリースに自分がなにをしているか考えるようにと言ったのだ。
 フェリースはかつてある男性に同じことを言われたことがあった。だが、よりによってこんなときにふたたびその言葉を聞くことになろうとは思ってもみなかった。ほんの少し前まで感情の嵐《あらし》にのまれてなにも見えなくなっていたのに。フェリースは頭から冷たい水を浴びせられたかのように、突然自分がひんやりした地面に横たわって青い月を見あげているのに気づいた。目に涙があふれ、白い月が粉々に砕けて見えた。
「放して」フェリースはふたたびささやいた。「私を起こして」
「君はだれなんだ? 頼むから教えてくれ」
 フェリースは男が自分の上におおいかぶさっているのが急に恥ずかしくなって、顔をそむけた。男はゆっくり彼女の胸のふくらみから手を離した。
「名乗るような者ではないわ。放して」
 涙が彼女の頬を伝って顎に流れ落ちた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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