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いつわりの微笑

いつわりの微笑


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・スペンサー(Catherine Spencer)
 三十数年前にイギリスからカナダのバンクーバーに移り住む。英語の教師からロマンス作家に転身。カナダ人の男性と結婚し子供にも恵まれ、現在は孫もいる。あいた時間があれば、ピアノを弾いたり、アンティークショップをのぞいたり、庭の手入れをしたりしている。

解説

 絢爛豪華なパーティに、ジーナはすっかり気後れしていた。ここは、ある大企業の会長の八十歳を祝う誕生パーティ会場。今夜の主役である世界有数の大富豪に近づく絶好のチャンスだった。ジーナが遠くカナダからこのギリシアに来たのもそのため。記者を装い、雑誌の取材と偽って、ようやく潜り込んだのだ。だが、彼女が意を決して行動を起こそうとしたそのとき、ゴージャスな男性に声をかけられる。だめ、彼も敵側の人間よ。自分に警告を発したはずなのに、気がつくとジーナは、ミコスと名乗ったその男性と二人、会場を離れて唇を重ねていた! 彼が隠された意図を持ってジーナを誘惑したとも知らずに……。

抄録

 思わず口から飛び出しそうになった言葉をどうやって抑えたのか、ジーナはわからなかった。だが侮蔑《ぶべつ》の色がいくらか顔に出たらしく、ミコスが首をかしげてしげしげと彼女を見つめた。ほかの点ではいかにもギリシア人らしいミコスだが、目は黒褐色ではなく明るく澄んだ緑色だ。黒く濃いまつげに縁取られた瞳は、それでなくても男性美にあふれた顔にさらに印象的な表情を与えていた。しかしそれ以上に感じるのは、鋭い観察力とみなぎる知性だ。この男性をあざむくのは容易ではないだろう。
 そのことをよく覚えておいたほうがいいと思いながら、ジーナは目をそらした。あの魅惑的なまなざしに溺《おぼ》れてはいけない。うまく立ちまわれば、この男性の紹介でアンゲロ・テュロスに近づけるだろう。けれど動機に疑いを持たれたら、すべてはおしまいだ。彼の助力なくしては、ジーナのような無名のジャーナリストがあの人でなしのそばに近づくチャンスなどありはしない。
 ジーナが黙りこんだのは不愉快になったせいだと考えたのか、ミコスはさらに言葉を継いだ。「彼は冷たくて思いやりがないとか、人よりも権力を持つことに執着しているとかという印象を与えたなら、少し補足させてくれ。彼は気前のよさや親切心もたっぷり持ち合わせている。本気で言ってるんだよ」
「記事を書くときには、そのことを忘れないようにするわ」
 ミコスは声をひそめた。「僕は今夜のこのひとときを決して忘れないよ」
「どうして?」ジーナはおずおずとささやいた。
 ミコスはジーナの肩に置いた手を首から顎まですべらせ、やがて顔を包みこんだ。「理由は君にもわかっているはずだよ」
 ジーナにはわからなかった。ただ、彼がキスするつもりなのはわかった。人けのない屋上庭園に出た瞬間から、ずっとわかっていた。そして、自分がそれを許すことも。ミコスはギリシア神話に出てくる神のようにハンサムでとても魅力的で、彼がほほえんだだけで全身がぞくぞくする。こんなふうに感じるのは本当に久しぶりだった。しかし、どうしてなのかという疑問の答えはさっぱり思い浮かばない。
 階下の舞踏室には、流行のドレスに身を包んだ美女があふれていた。それにひきかえ、ジーナのドレスは五年も前のもので、当時でさえ高級ファッションの最先端とは呼べなかった。
 ほかの女性たちは髪にも首にも手首にも耳にもダイヤモンドをつけていたが、ジーナの身を飾っているのは模造宝石のアクセサリー一つだけだった。それは古い紫色の大きなペンダントで、周囲にはクリスタルがちりばめられている。幼いころ、彼女はそのペンダントをおしゃれごっこによく使ったものだった。鎖はずっと昔に切れたかなくなったかしたけれど、ジーナはその模造宝石をアンモニアで磨いてきれいに光るようにしてから幅の広い黒のビロードをつけ、今夜首に巻いてきた。安物とはいえ舞踏室の控えめな照明の中ではそれなりに見えたが、やはり本物の宝石と比べられる代物ではない。
 そんなことを考えていると、疑問がまた頭をもたげてくる。ミコス・クリストプロスはなぜ私を選んだのだろう? 家柄も地位も資産もない一介のカナダ人のどこが、そんなにめだったというのか?
 消えゆくわずかな理性に必死にしがみつきながら、ジーナはもごもごと言った。「それじゃ、答えになってないわ、ミコス」
「そうかな? じゃあ、これならいいだろう」ミコスはささやき、唇をジーナの唇に重ねた。
 ジーナはミコスにすがりついた。そうしなければ、地面に崩れ落ちてしまいそうだったからだ。こんなことが現実に起こるものだろうか? 炎が感覚に火をつけているのに、火傷《やけど》の跡が残らないなんて。もっとも初歩的な誘惑の手段に、これほど激しく刺激されるなんて。
 こんなの、どうかしている! けれどいくら自分にそう言い聞かせても、喉の奥からうめき声がもれるのを抑えられなかったし、両手でミコスを押しのけることもできなかった。それどころかジーナはミコスにぐったりと体をあずけ、両腕を彼の首にまわしてなめらかな髪に指をくぐらせていた。唇を開いて巧みに迫る舌を受け入れ、彼の思いのままにさせる。まるで別人のようなふるまいだった。
 なぜここにいるのかを思い出して! 理性の声がかすかに聞こえる。ただ男性とベッドに行きたいだけなら、はるばるギリシアまで来る必要はなかったでしょう!

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

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