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シンデレラへ最後の贈り物

シンデレラへ最後の贈り物


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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解説

あなたがそばにいなくなるなら、シンデレラになっても虚しいだけ……。

キャリーは不慮の事故で両親を亡くして抜け殻のようになっていたが、兄に助けられてようやくホテルの仕事に就けるようになった。それなのに、経営が傾いた会社を立て直すべく、グループのCEOであるブレイクがやってきて、人員整理をすると言う。解雇されれば兄やその他の従業員ともども路頭に迷ってしまうわ……。圧倒されるほど美しいボスに、キャリーが必死の思いで反発すると、彼は意外にも代替案を出し、彼女を自分のそばで働かせると言いだした。その日から、ふたりきりでオフィスにこもる仕事が始まり、キャリーはなすすべなくブレイクの虜になっていく――想いが募るほど、彼が距離をおくようになる理由もわからぬままに。

■思わず胸がキュンとするエピソードがちりばめられた、いちおしの珠玉のシンデレラ・ストーリーをお贈りします!ふたりで取り組んだ仕事が終わりを迎えるころ、ブレイクの計らいでキャリーはまるでプリンセスのように変身するのですが、彼の真意は……。

抄録

 キャリーはしばらくしてから相手に見とれていたことに気づき、ようやくかすれた小さな声で言った。「どうもありがとう」
「どういたしまして。何階かな?」
 その低い声に、キャリーは思わず手で額を打ちそうになった。この人は何から何までセクシーなのね。
 咳払いして言った。「一階をお願いします」
「それならもう押してある」彼は言って、ドアを閉めるボタンを押した。「それじゃ、きみもあのイベントに行くところなんだね?」
 キャリーは眉根を寄せた。「そうだけど、どうしてわかったの?」
「このホテルでは夕食にそんなフォーマルな服装は求められないと思ったからさ」
 彼に手ぶりで自分の服を示され、キャリーはまた手で額を打ちたくなるのを抑えてうなずいた。これは母の形見のうちで数少ない、これならなんとかおかしくはないだろうと思えるフォーマルドレスだ。
「そうよね。ごめんなさい、今日は忙しい一日で疲れていて」間の抜けた返答をしてしまったのはそのせいだと思いたかったが、そうでないのはわかっている。この男性といると、なぜか落ち着かないのだ。
「わかるよ。できれば夜はのんびりしたいだろう」
 キャリーがうなずきかけたとき、エレベーターが突然がくんととまった。すぐに明かりも消え、彼女はバランスを崩して、後ろの壁で頭を打ってしまった。くらくらして倒れかけたとき、力強い腕に抱きとめられ、床に座らせられた。
「大丈夫かい?」彼が尋ねてくれたが、返事をするには、まず呼吸を整えなければならなかった。
 めまいがするのは、彼の腕の中にいるからか、頭を打ったせいかしら? 違うわ。ようやく状況がつかめてくると、閉鎖された空間に閉じ込められた恐怖で息が苦しくなっているせいだと思い当たった。
「大丈夫」あえぎながら、ゆっくり言った。「頭をぶつけただけ」息を吸って、吐くのよ、と自分に言い聞かせる。
「本当に? 息が苦しそうだけど」
 暗さに目が慣れてくると、心配そうにしている彼の顔が見えた。「少し……閉所恐怖症なの」
「そうか」彼はうなずいて立ち上がった。「停電だと思うが、ぼくたちがここにいることはすぐに誰かが気づくだろう」
 彼はポケットから携帯電話を取り出し、画面をタップした。光に彼の顔だけがぼうっと照らし出されて見える。その顔がしかめられるのがわかった。
「電波が届いていないから助けを呼べない」
「あのボタンを押せばいいんじゃないかしら」キャリーは操作盤にある赤い非常ボタンを指さした。
 息は少し楽になってきている。閉じ込められたと考えないようにすればいいのだ。立ち上がりたかったが、ちゃんと立てるかどうかわからない。またすぐに彼の腕の中に倒れ込むことだけは避けたかった。
「確かにそうだ」
 彼は非常ボタンを押し、インターホンから聞こえる雑音まじりの声と手短に話した。彼が言ったとおり、ホテル全館が停電で、どういうわけか非常用の発電機も作動しないらしい。事態の収拾を図っているが、救出には三十分ほどかかる見込みだという。
 ため息をついて彼が隣に座り込んだので、キャリーは目をぎゅっと閉じた。こうして彼がそばにいてくれると、恐怖が和らぐ気がする。代わりに、彼の香りがキャリーの感覚を満たした。男らしい麝香の香りに、思わずうっとりとため息をつきそうになる。心臓がどきどき打っているのはエレベーターに閉じ込められているせいよ、と自分に言い聞かせて目を開け、彼の容姿にくらくらさせられないうちに口を開いた。
「一階はどうなっているかしら。きっと大騒ぎね」声にあざけりがにじむのを抑えられなかった。
「今夜の歓迎会には乗り気ではないようだね」彼が皮肉っぽい口調で言った。
「そうではないけど、ただ……」キャリーは言葉を探した。「どうかと思うだけ」
「会の内容が? それとも開催の理由が?」
 キャリーの兄のコナーはこのエレガンスホテル・ケープタウンの支配人で、前任者が引き起こした業績悪化から経営を立て直すべく、奮闘を続けている状態だ。そのてこ入れのために今日|最高経営責任者《CEO》がやってきたらどうなるのか……そのことは考えたくない。
 だからキャリーは彼の質問に答える代わりに尋ねた。「あなたはCEOを出迎えに来たの?」
「そういうわけではない」
「謎めいた答え方ね」
 彼がほほ笑むのが感じ取れた。
「ちょっと謎めいているほうがいいだろう?」
 キャリーは笑った。「あなたが誰かも知らないのよ。あなたのすべてがわたしには謎めいているわ」
 そう言いながら彼のほうを向くと、顔が向き合うはめになった。胸がどきどきし、息苦しくなって、一瞬、身を乗り出してキスをしたい衝動に駆られた。
 そんなことを考えた自分にぞっとして、キャリーは顔をそむけ、言い訳した。このよく知りもしない男性に体がこんな反応をしてしまうのは、きっと閉所恐怖症のせいよ。
 頭を振って現実に戻ったとたん、そう思い込むまでもなく、また恐怖のせいで息が苦しくなってきた。そっと手を握られるのを感じて彼のほうを見ると、心配そうな目で見つめているのがわかった。安心させようとしてそうしてくれているのだと気づき、キャリーは感謝の気持ちでいっぱいになった。
「きみの連れが心配しているだろうね」ぼくの言葉に神経を集中させろというように彼はうなずいた。
「でしょうね。連れがいれば、だけど」
 彼が笑った。その声もやはり男らしい。
「あなたのほうは?」キャリーはそんなことを尋ねた自分に驚いた。柄にもなく、男性に思わせぶりなことを言うなんて。しかも、答えなんて知らなくていいはずなのに、知りたくてたまらないなんて。
 彼と目が合い、二人の間に何か熱い磁力のようなものが働いた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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