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スルタンと生け贄の花嫁

スルタンと生け贄の花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader” スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ミシェル・コンダー(Michelle Conder)
 メルボルン大学を卒業後はさまざまな仕事に就き、やがて海外を旅したり、そこで働いたりするようになったという。オーストラリアに帰国後、生涯の夢である作家になることを決めた。現在、3人の子供と夫とともにメルボルンに暮らす。

解説

金の瞳に惑わされ、囚われた先は、華麗な宮殿のハーレムだった。

王座を狙う父が王子ザキムを誘拐したと聞き、ファラーはあわてて父のもとへ駆けつけた。だが父は耳を貸さず、ザキムは食事を拒んでいるという。このままでは父は死罪になってしまうわ!ファラーは一人、テントへ行き、彼に食べ物を与えた。するとザキムは隙をついて縄を解くが早いかファラーを馬に乗せ、王宮へと連れ去った。ザキムが彼女を閉じ込めたのは、大理石の浴槽のある豪華な部屋。ファラーは息をのんだ。「まさか……ここはハーレムなの?」

■父の誤算で、傲岸不遜な王子にさらわれた無垢なヒロイン。ハーレムに囚われた彼女の純潔は、彼に奪われてしまうのでしょうか?R−3150『秘密の小さな姫君』の関連作です。

抄録

 王子が離れ、ムーンビームの端綱をつかむと、ファラーははっと我に返った。
 彼に触れられた瞬間から襲われたけだるさを振り払おうとする。彼女の唇に向けられた目は、歯を立てるのが待ち切れない熟れた桃でも見るようだった。一瞬、キスされるかと思った。恥ずかしいことに、そうしてほしかった。近寄りたくもない、自分のことしか考えない男だというのに。なぜこんなことになったと思っているの? 「馬に水をやらなければ」彼女の唇も砂漠さながらに乾いていた。
「水と餌だ」彼はそっけなく言った。「だが、占い棒でも使わない限り、ここでは見つからない。ぼくたちの分も」種牡馬を優しくたたいて言う。「大した馬だ。名前は?」
「ムーンビームよ」
 力強く温かな笑い声があがった。「そんな名をつけるなら、去勢してやるべきだ」
「いやな人」
「よけいなお世話だ」彼が真顔になり、両手を組んで踏み台をつくった。「足をかけて」
「いやよ。一緒に行くなんて!」
「だったら結構」彼が上体を起こし、軽々とムーンビームに飛び乗った。
「どうするの?」
「出ていく」
「これはわたしの馬よ」ファラーは端綱を急いでつかんだ。ここに置いていかれたら、家にも帰れない。「どうしてこんな人と関わらないといけないのかしら」
 彼が馬から見下ろした。「ぼくも同じことを考えていた。さあ、一緒に乗るか、ここに残ってハゲタカの餌食になるかだ」
 とっとと消えてと言いたくても言えない。今はまだ。「今度はわたしが後ろに乗るわ」彼の腕のなかで、あんなに自分が小さくて弱い気持ちにさせられるのは二度とごめんだ。
「前でも後ろでもいい。さっさと乗れ」
 これは間違っているかもしれないのに、ほかに選択肢はなかった。ファラーは足を踏み鳴らして彼の脇に来た。同じだけ薄汚い格好なのに、再び黒い布切れで顔を覆い、鼻息の荒い種牡馬に乗った王子は颯爽として威厳がある。二人の目が合い、ファラーは気圧されまいとしてできるだけ恨みがましく見返した。
 冷たい目で、彼が大きな手を伸ばしてくる。ファラーの手をつかむなり、枕か何かのように軽く引っ張りあげて馬の後ろに乗せた。
 残念ながら、彼の後ろでも似たような思いをさせられた。ムーンビームを駆って安全な場所に行くまでは、たくましい腰にしがみついていなければならない。
 数時間後、力が尽きかけたころ集落が見えてきた。夜のうちにかなり遠くまで走ったらしく、ファラーの知らない村だった。それにしても、“従者の一人を連れて出かけたところ、砂嵐に遭って迷ってしまった”という王子の話を村の長が信じたのは驚きだった。
 従者ですって!
 ファラーは違うと言いたかったが、黙っていたほうが身のためだった。
 連れに戻るまでムーンビームを世話すると約束をさせてから、王子は山盛りの食事にありつき、古いジープまで借りだした。午後と夜はずっとそれを走らせ、たまに仮眠を取るだけだった。どうして体がもつのか不思議だった。ファラーはほとんど眠ってばかりいた。
 夜明け前に目が覚めると、変わりゆく景色とバカーンの首都の大きさに目が釘づけになった。子供のころに一度か二度、訪れたことはあるが、これほど大きかったとは。それになんてにぎやかなのだろう。まだ早いのに、通りには車や自転車、牛やラクダが行き交い、さまざまな格好の人々が歩道にあふれている。丘の斜面に立つショマール宮殿が燦然と街を見下ろしている。ファラーがその華麗な美しさにひそかに見とれるうちに、ザックが衛兵に身元を明かし、ジープは鉄の門を通った。
「わたしをどうする気?」ファラーは尋ねた。声が震えずにすんだのが誇らしい。
 王子はそれには答えず、立派な石の階段の前で古いジープを止めた。薄色の砂岩でできた王宮の壁に日が当たり、白く輝いて見える。中庭に入っていくと、蜂の巣をつついたように、大勢の使用人たちが駆けまわっていた。ファラーは王子に視線を戻した。彼はハンドルに両手をもたせ、ライオンを思わせる目で穴の開くほどじっとファラーを見ている。
 ファラーは顎を上げ、痛くもかゆくもないふりをした。無事に戻ってきたからには、きみを解放すると言ってくれないだろうか。すべてを水に流すと。「どうなの?」彼をにらみ返す。「答える気があるの?」
「ああ、答えよう」彼がほほ笑んだが、それでも美しい顔にはいかめしさがある。「きみをおとりに使う」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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